日本初のターボ:日産[L20ET](1979年)はダウンサイジングコンセプトだった
- 2021/07/04
- Motor Fan illustrated編集部

日本で初めてターボチャージャーを備えた市販車用エンジンとして1979年12月に登場したのは、日産のL型、L20ターボである。当時のセドリック/グロリアに搭載されたL20ET型とは、どんなエンジンだったか?
日本で初めてターボチャージャーを備えた市販車用エンジンとして1979年12月に登場したL20ET型。当時のセドリック/グロリアに搭載された。
用いられたターボチャージャーはウェイストゲート式のシングルスクロールで、ギャレットエアリサーチ社(現在はギャレットモーション社)のT03型だった。最大過給圧は350mmHg(0.48kg/cm2/0.48bar)と控えめな数字、圧縮比は7.3とされた(自然吸気版のL20型は圧縮比9.5)。
目指したのは高過給高出力ではなく、中低速トルクを増大した省燃費と排気対策に重きを置いたエンジン——というのは建前で、パワー志向とすると当時の省庁に対して心象悪く認可が下りず、時節柄このような言い方を余儀なくされたというのが真相であった。
「ひとクラス上のエンジンを搭載するかわりとして、ターボをつけて総合的な燃費と性能のバランスを求めるということがポイントです。(中略)5ナンバーで、街中の実用走行時の使いやすさを狙ったクルマにしようというのがターボを手掛けた最大の理由です」と、当時の『モーターファン』インタビューにおいて開発の中心を務めた藤井隆氏は答えている。まさに、今で言うところのダウンサイジングエンジンだったのだ。


高過給とするとブロックの構造補強を求められるが、先述のように350mmHg/0.48barに過給圧を抑えたことで、もともとブロック剛性に優れていたこともあり大きな変更は施されなかった。なお、最大筒内燃焼圧は46kg/cm2@4000rpmWOTで、これは自然吸気版に対して3kgのアップという数字。メタル/クランクシャフトも特別な手当はなされていない。ただしピストンにはリブ厚を増すなどして高強度化、もちろん圧縮比の変更に伴う冠面形状にも変更があった。ヘッドボルトも1mm増した13mmとしている。
潤滑系統にも強化が図られた。オイルポンプ幅は自然吸気版の35mmから40mmに増やし吐出量を14.5ccから16.4cc(ディストリビュータ1回転当たり)に増強、硬めのオイルを指定し交換サイクルも当時の半分である5000kmとしている。

苦労を伴ったのはカムプロファイル。自然吸気の高出力エンジンならば高回転時にオーバラップを大きくとる設計にするが、L20ET型は燃費志向のため「遅く開けて早く閉じる」傾向としたい。しかしやりすぎると今度は高回転時に難が出てしまう。日本初のターボエンジンだけに多くのプロファイルが検討されたという。
また、ターボチャージャーを経てから流入する排ガスは温度が低下してしまうため(100℃も低下してしまう)、三元触媒がうまく働かない。そのため、当時の主流だったペレットタイプではなくハニカム構造のモノリスタイプを備え、活性化を図った。
■ L20ET
気筒配列 直列6気筒
排気量 1998cc
内径×行程 78.0×69.7mm
圧縮比 7.3
最高出力 145ps/5600rpm
最大トルク 21.0kgm/3200rpm
給気方式 ターボチャージャー
カム配置 SOHC
吸気弁/排気弁数 1/1
バルブ駆動方式 直打
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL ×/×
(セドリック/グロリア)
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