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鉄フレームと空冷Vツインは健在!待望の兄貴分は70'sチョッパーで登場! 最新型なのに筋金入りのレトロ路線!? ハーレーダビッドソン「アイアン1200」試乗

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エンジンも車体も現代においてはトラディショナルすぎるといっていいハーレーのスポーツスター。最新モデルを東欧クロアチアにて試乗してきた。
TEST RIDER&REPORT●青木タカオ(AOKI TAKAO)
PHOTO●HARLEY-DAVIDSON JAPAN

ハーレーダビッドソン IRON1200……1,366,200円

最新のスポーツスター「アイアン1200」。高く迫り上がったハンドルでチョッパームードを演出した。
スポーツスターにビキニカウルをセットするのは、70年代後半に発売されたXLCRカフェレーサー以来。

70年代にタイムスリップしたかのようなスタイル

「ネオクラシック」といったレトロムードを匂わずモデルがいま人気を集めているが、クラシックテイストで勝負となるならハーレーダビッドソンの右に出るモノはいないだろう。ハーレー自身はそんなこと狙っていなかったのに、気がつけば時代が1周、いや2周も3周もしていたっていう感じかもしれない。決してハーレーをディスっているわけじゃない。ずっとずっと、改良を加えながらも同じモノを大事につくり続けてきたことを称賛しているのだ。

 なかでもスポーツスターは、筋金入りのレトロ路線。まずエンジンは空冷Vツインであることはもちろん、プライマリーチェーンを介して駆動力をトランスミッションに伝えるという古めかしさで、日本車で言うなら1973年発売のカワサキ650RS W3で見られたのが最後。OHV2バルブのロングストローク設計で、現行型の排気量は1200ccと883ccのいずれか。「エボリューション」と呼ばれ、初代が登場したのはなんと1986年のことである。

 ちなみにもっと排気量の大きいツーリングファミリーやソフテイルファミリーのエンジンは「エボリューション」から99年に「ツインカム」へと変わり、現行モデルは4バルブ化された「ミルウォーキーエイト」になっているから、スポーツスターは二世代前のエンジンを積んでいることになる。

 今回、クロアチアで開催されたジャーナリスト向け新型モデル試乗会で乗ったのは、アイアン1200。ミニエイプバーと呼ばれる大胆に持ち上げられたハンドル、そしてビキニカウルやラバー製のフォークカバーで不良っぽいフロントマスクを演出し、70年代に流行ったチョッパースタイルを再現。これを違和感なくやってのけるのは、もはやハーレーしかないのかもしれない

タンクグラフィックスもまたレジェンダリー

 目を惹くのはカラフルなタンクグラフィックス。これもまた70年代のハーレーに用いられたデザインで、当時は7つの色遣いだったことからレインボーカラーとも呼ばれ、いまなおファン垂涎モノのグラフィックだ。これが似合うのは当然で、燃料タンクも容量など細かい変更はあるもののシルエット自体は70年代からそれほど大きくは変わらないのである。

 鉄のフレームといい、Vツインエンジンのシリンダーの外にある4本のプッシュロッドといい、シンプルなキャストホイール、細いフロントフォーク、ツインショック、なにもかもがレトロすぎて2018年に新登場したニューモデルとは到底思えない。これが新車で買えるのだから、嬉しい限りだ。

チョッパーでもスポーツスターの走りはアグレシッブ!

 さてその走りだが、フロント19インチに細身のタイヤを履くハンドリングがまた期待通り。ヒラヒラと軽快で、現代のスポーツバイクのようなしっとりとしたグリップ感ではなく、スパンと切り返しのきく昔ながらのステアリングフィーリング。フロント荷重で前輪からグイグイ曲がるなんていう今どきの乗り方はまったく通用せず、リヤ荷重で腰から曲がれば、車体は素直に言うことを聞いてくれる。

 ベテランさんにはわかってもらえると思う、70年代のオートバイそのものの動き。コーナーに進入するときは言うまでもなく直線区間のうちにブレーキを済ませて、そこからアクセルを開けながらコーナーの出口を目指す。

 ハンドリングにクセはなく、車体は自然とステップ裏のバンクセンサーが路面を擦るところまで一気に寝かし込まれるが、それでも落ち着いていてまだまだ倒し込める。フロントからスリップダウンっていう不安がなく、東欧の荒れた路面でもどんどんアクセルを開けていけ、気がつけば走りに夢中になっている。

 これをスポーティと言わず、なんと言おうか。現代のスーパースポーツ流ではないだけで、これもまたれっきとしたモーターサイクルのスポーツライディングである。クロアチアでのテストコースは大半がワインディングで、丸1日じつにエキサイティングな走りが楽しめた。さすがは「スポーツスター」、これがハーレー流のスポーツなのだ。

アイアン883と比べてみると……

 スポーツスターファミリーは昔から883ccと1200ccが2本立てでラインナップされてきたが、必ずしも同一モデルで両排気量を揃えるわけではなく、2009年モデル(08年夏発売)でデビューしたアイアン883も1200版はずっとなかった。
 全身をブラックアウトしたアイアン883は、シンプルなスタイルでスポーツスターのスタンダードモデルとしての役割も担い、デビュー以来、好調なセールスを継続。カスタムベースとしても最適であるし、ストリートにもよく映える。
 その1200版は待望であったわけで、今回ついに登場してくれた。しかし、883と同じようなスタンダード路線ではなく、1200では70年代のムード満載なチョッパーに仕上げてくるあたりが、じつにハーレーらしい。見事に裏をかいてくれたのだ。

 走りは当然ながら883より力強い。そう感じるのは低速域はもちろん、たとえば高速道路での追い越し時の加速も。883ならシフトダウンしなければ、右手のスロットル操作に鋭く反応してくれないところを、1200はトップ5速のまましっかり車速を上げてくれる。
 ただし、883にもエンジンを回して楽しめるという持ち味があるので、どちらに軍配が上がるかという議論はスポーツスターファンの間では昔から熱く繰り返され、結論は決して出せない。つまり甲乙つけがたい、選ぶのは自分次第ということだ。

ブラックアウトした空冷Vツインは、プッシュロッドカバーだけをクロームで仕上げ、伝統的なOHVエンジンであることを強調するかのよう。
ヘッドライトにはビキニカウルをセット。車体色にかかわらず黒とし、精悍なフロントマスクを演出している。
表皮をダイヤ目状で仕上げたソロシートも70年代風。バックパッドに厚みのある形状から「カフェシート」とハーレーは呼ぶ。
単眼メーターもオーソドックスな指針式。小型液晶画面では、オド/トリップのほか、ギヤ段数、エンジン回転数、時計などを切り換え表示できる。
トライディショナルなツインショック式のリヤサスペンションだが、シャシーとのバランスに優れ不満は感じない。しなやかに動き、奥ではしっかり踏ん張る。

■主要諸元

●エンジン
ボア:88.9mm
ストローク:96.8 mm
排気量:1,202cc
圧縮比:10:1
フューエルシステム:電子シーケンシャルポートフューエル噴射(ESPFI)

●ディメンション
全長:2,200mm
シート高:735mm
最低地上高:140 mm
レイク(度):30
トレール:117mm
ホイールベース:1,515mm
フロントタイヤ:100/90B19 57H
リヤタイヤ:150/80B16 77H
燃料容量:12.5ℓ
オイルタンク容量:2.6ℓ
車両重量:256 kg

●パフォーマンス
エンジントルクテスト方法:EC134/2014
エンジントルク:96Nm/3,500rpm
リーンアングル右(度):27
リーンアングル左(度):28

●ドライブトレイン
プライマリードライブ チェーン ギヤ比:38/57
ギヤレシオ(全体)1st:9.004
ギヤレシオ(全体)2nd:6.432
ギヤレシオ(全体)3rd:4.783
ギヤレシオ(全体)4th:3.965
ギヤレシオ(全体)5th:3.4

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