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パニガーレシリーズの入門機!とはいえお値段は200万円超のスーパーマシン|ドゥカティ・パニガーレV2試乗

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軽量設計を極めたカーボンモデルのスーパーレッジェーラは別格として、10種ものラインナップを誇るドゥカティのフラッグシップに君臨するのがパニガーレ・スーパーバイク・ファミリーである。その主力モデルはデスモセディチ・ストラダーレV型4気筒エンジンを搭載するV4の3機種だが、同ファミリーのエントリーモデルとして、スーパークアドロV型2気筒エンジンを搭載するV2が位置づけられている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ドゥカティジャパン株式会社

ドゥカティ・レッド

ドゥカティ・パニガーレ V2.......2,250,000円

ホワイト・ロッソ.......2,290,000円

 ドゥカティと言えば独自技術として定評のあるデスモドローミック(バルブの強制開閉システム)のLツインエンジン搭載が古くから良く知られている。横置きの90°Vツインエンジンだが、当初は前シリンダーがほぼ水平で後シリンダーが垂直にレイアウトされ、右側からの眺めがL字になる事からLツインと呼び親しまれ、一時期その呼称が定着した。
 2気筒エンジンながら単気筒に迫るスマートな車体デザインが構築され、1970年代当時から既にSS(スーパースポーツ)として割りきったコンセプトを採用。スポーティーなキャラクターとポテンシャルを備えていた。
 当初はLツインエンジン搭載故のロングホイールベース設計も特長的で、高速コーナリング性能に秀でた安定感のある操縦性と、メリハリの効いたパンチ力&伸びの良さも魅力的だったと記憶している。その後も終始一貫して極めてレーシーなモデルを作り続けてきており、近年ではスーパーバイクやモトGPシーンと直結する高性能モデルをリリース。エンジンも後傾搭載されるようになっている。
 ストリートバイクとしては、常に一級の高いポテンシャルを誇り、価値あるブランド力を築き上げているのである。

 今回のパニガーレV2はパニガーレ959の後継となる最新モデルである。絶対的なパフォーマンスではV4系に一歩譲るものの、長年培われてきたV型2気筒のパフォーマンスも決して侮れず、V2のドゥカティ人気を牽引するトップモデルとして君臨する。
 ダイキャスト・アルミニウム製モノコック構造のフレームにはスチール製トレリス構造のサブ(リヤ)フレームをボルトオン。スイングアームはダイキャスト・アルミニウム製片持ち式が奢られている。
 リジッドマウトされた90°V型2気筒の水冷4バルブ(スーパークアドロ)エンジンのカムシャフトは、ギヤを挟んでチェーンで駆動されるタイプ。カムチェーンは、前シリンダーが左側、後シリンダーが右側を通る設計である。
 ボア・ストロークは100×60.8mmというショートストロークタイプ。スクエア比は1,644で、パニガーレV4Sの1,514よりもオーバースクエアの度合いが大きい。
 吸気側φ41.8mm、排気側φ34mmのビッグバルブを採用。メカニカル部分はもちろん、潤滑系や電子制御系に至るまで、レースで培われたテクノロジーが惜しみなく投入され、ポンピングロスや各可動部分のフリクションロスも徹底低減。
 10,750rpmで155psの最高出力と、最大トルクは104Nm/9,000rpmを発揮。φ62mm相当の楕円スロットル・ボディはフル・ライド・バイ・ワイヤーで制御。もちろん6軸慣性ユニット(IMU)を装備し、コーナリングABSやトラクション・コントロール、エンジン・ブレーキ・コントロール、ウィリー・コントロール等、最新の電子制御技術も投入されている。
 ちなみに任意設定できるライディング・モードは、レース、スポーツ、ストリートの3つから選択でき、メーターディスプレイに設定モードが表示される。
 なおカラーリングは2タイプ。標準的なドゥカティ・レッドに加えて、ホワイト・ロッソも新登場。前者は黒いホイール。後者はホイール等に赤いアクセントカラーを採用しているのが印象深い。

エンジン性能曲線図の赤線はパワーカーブ、灰線がトルクカーブ。6,000〜11,000rpm弱までが有効な特性を発揮している事がわかる。

伝統を受け継ぐドゥカティらしさを遺憾無く表現したピュアなスーパースポーツ。

 試乗車を受け取るとドゥカティー・レッドのカラーが、眩いばかりに鮮やか。フレームやエンジン等、主要パーツの多くの部分はカバーリングされており、その正体を見ることはできないが、レイヤードされたカウルを始め、エキゾーストパイプの取りまわしとマフラー。そしてテールのフィニッシュに至る外観デザインは秀一である。
 ワイドスパーンでレイアウトされたフロントフォークを支持するステアリングブラケットの造形、ヘッドパイプや前後輪を支持する中空アクスルの太さ。ステップブラケットやペダル、そししてサイドスタンドに至るまで、何処をみてもギチギチの限られた条件の中で実に巧みにスペースを分け合い、しかも美しく綺麗に仕上げられたパッケージングの巧みさに見とれてしまう。
 シートに跨がり、ふと上体を伏せてみると少し大きめに見えるスクリーンのエッジにヘルメットがピタリと納まり、その状態で前方視界が確保されるあたりも流石である。
 やや腰高な印象だが、パニガーレV4Sと比較すると明らかに車体がスマート。ドライで176Kgという車重にも親しみやすさを覚え、168cmある自分の体格にも自然と馴染む感じ。
 ハンドル位置は低く過ぎず、明確なバックステップに足を乗せると、まさにスポーツバイクそのもの。全身の筋力を活かして積極的にコントロールしようという気分になってくる。
 シートは適度な厚みがあるが前方はスリムにデザインされており、足つき性もそれほど悪くはないし、ニーグリップした時や腰を左右に落とした時等、体重移動が自由自在になり、なおかつマシンとの一体感も得やすかった。まさにスポーツ道具その物を実感できる。

 ちなみにステアリング切れ角は24°と小さい。Uターン等の小回りは、V4Sよりもしにくい。市街地で扱いにくい事は間違いないがレーシングマシンに近い設計が施されているパニガーレV2の潔さはむしろ好感触である。
 ローギヤに入れていざ発進。クラッチミート時のエンジン回転数は約3,500rpmは必要。しかも1Lマシンとしては考えられない程かなり長い半クラッチ操作が要求される。例えて言うなら3速ギヤで発進する様な感覚。
 6速ミッションにハイギヤードなクロスレシオが投入されているからに他ならないわけだ。つまり発進停止を繰り返す様な渋滞路を走らせるのは忍びない(ちょっと可哀相な)気分になるのも正直なところである。
 しかし、それだからこそ適切な加減速を必要とする峠やサーキットのコーナリングシーンで、シフトアップ/ ダウン操作の小気味良さはどれにも負けない価値があり、それを扱う楽しさと喜びは非常に大きい。
 軽快に身を翻すコーナリングでは、前後輪の接地感が伝わってきて、どこまで攻められるか、攻めて良いかをバイクが教えてくれる感じ。操縦性は素直。V4Sよりもむしろクイックに旋回挙動を与える事ができる。
 至ってナチュラルに思い通りのラインをトレースできるし、タイヤのグリップ力も高く遠心力により自分の体重がリヤタイヤの荷重を増す感覚もリニアに伝わってくるので、旋回途上からスロットルを開けてコーナーを脱出する醍醐味もたまらないのである。
 しかも、コーナリング限界はかなり高い所にある。旋回中にさらにイン側へ向けられる余裕も残されているので、無茶することなくハイレベルなスポーツライディングが楽しめ安心感も高い。

 さらに褒めたいポイントは、コーナリング立ち上がりで右手のスロットルを開けて行く時のレスポンスが、とても歯切れ良い。
 ビッグボアのピストンが弾ける感じとでも言おうか、グイグイと力強い爆発パルスを感じながらトルクを増す感覚はとても気持ちが良く、伸びの良さも爽快。回しても10,000rpmチョイ(レッドゾーンは11,500rpm)だから、そこからさらに3,000rpmも余計に回るV4Sとのパワー差は明確ではあるが、その領域を楽しめるステージなんてそう多くは無いだけに、スムーズさの増したV4より、むしろダイナミックなパンチ力が感じられるV2の方が魅力的に思えたのが正直な感想である。
 ローギヤで5,000rpm回した時のスピードは50Km/h。トップ100Km/h クルージング時のエンジン回転数は約4,400rpmだった。
 試乗時に気付いた欠点はV4S程では無いがシート下からの熱気が暑かった事ぐらい。
 サーキットでスポーツ走行に興じるには打って付けのマシン。普段はガレージで愛でつつ、季節と天気と場所を見極め、その絶好のチャンスにスポーツバイクの、それもとびきり上等なモデルの気持ちの良い走りを満喫するに相応しいモデルなのである。

サーキットを疾走するプロライダーの写真。競技レベルの走りが楽しめる極めて高いポテンシャルが追求されているのである。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高は840mm。同V4Sより5mm高いが足つき性はほぼ同レベル。ご覧の通り両足の踵が地面から浮いた状態になる。跨った瞬間、V4Sよりも少し腰高な印象も覚えたが、シートと車体がいくらか細身なので、感覚的にはV4Sより支えやすい。

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