火曜カーデザイン特集:新型シトロエンC5 Xがワールドプレミア シトロエンC5 Xが見せた シトロエン・デザインのこれから
- 2021/04/13
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CAR STYLING編集部 松永 大演
2020年6月に新型C4が発表されたシトロエン。新型C4の日本での発売は少し先のようだが、その後わずか10ヶ月でその上のモデルC5 Xが発表された。現在のシトロエンのフラッグシップとなるDセグメントモデルで、これからのシトロエン・デザインを示唆するモデルでもあるといえる。
2016年のコンセプトカー CXperience Conceptからインスパイアされた形
今回のC5 Xのデザインは、2016年のパリサロンで発表された、CXperience Conceptにインスパイアされたという。
そのコンセプトモデルは頭につけられた文字 ”CX” が示すように、1970年代に登場したかつてのハイエンドモデルCXのオマージュのような側面があることも感じられるモデルだ。しかし、CXperience Conceptの登場は、4年前のシトロエン・デザインの中にあっては、「忽然」と現れたという感じもあったもので、直接量産車に繋がるというよりは市場調査の一環なのではないかと思うほど独特なものだった。あまりにも、2016年時点からのシトロエンに関連性がないように思えたのだ。
しかしその優美な面構成には、DS、CX、XM、C6と続くハイエンド・シトロエンの次の一手としては大きく期待したいと感じたのも事実。
それがこのように個性的な量産車として登場することになったとは、その開発にちょっと驚きを隠せないというのが本音だ。
C5 XとC4の違いが示すものとは
シトロエンの新たなデザインを主張するのは、先に発表されたC4から。そして今回発表されたC5 Xと併せて見ると、共通する印象はフロントやリヤの造形ばかりでなく、プロポーショやボディ全体の面の構成にも及んでいる。とはいえディテールの造形はかなり異なっており、それがどんな意味を持っているのかが両車を見比べただけでは理解しづらかった。しかしCXperience Conceptを中心に考えてみると、その違いが割と明確になってきた。
C4、C5 Xとも起点はCXperience Conceptであり、そこから、与えられたサイズ、機能、コンセプトによって、いかに表現するべきかを考え開発されているように見える。つまり、コンセプトモデルは御神体、あるいはイメージ上のマザーモデルとしての意味があり、2016年の時点でこれからのシトロエン全体の方向性を明確に見せてくれていたのではないだろうか。
例えばマザーモデルに対して、C4はコンパクトなことから、俊敏さやアドベンチャー的性格が表現され、C5 Xにはツーリングや旅といったイメージが浮かんでくる。
優雅さに内包される「旅」へのロマン
C5 Xでもっとも印象的なのはそのフォルムで、シューティング・ブレーク的な、軽快さを持ちながらも荷室も十分なサイズを想像させる。ポイントとなるのは、サイドウインドウの後方に向かって絞られていくウインドウ・グラフィックと、リヤフェンダーのふくよかな盛り上がった造形だ。
このリヤサイドのセクションは、不思議と歴代のハイエンドモデルを想像させるものとなっていて、CXやXMの雰囲気も感じさせる。また、一般的にはリヤフェンダーのふくよかさは、パワフルさを強調するものとなりやすいが、C5 Xではパワフルさよりも、むしろリヤセクションをコンパクトに見せる造形としているようだ。
特徴的なフロントマスクは、シトロエンのダブルシェブロンによる横長のグリルのラインが上下に別れて伸び、双方にポジショニングランプが沿う。一般的にはヘッドライトを目に見立てた「顔」づくりがなされることが少なくないが、ヘッドライトがKED化され小型化されることによって、フェイススタイルが変わり始めている。これまでは光源が小さくLED化されても、リフレクターのようにめき部分を大きく造形することで、「目」らしき造形を作るということをしている車も多い。しかしその中で、極めて挑戦的で個性に満ちた顔作りができている。
リヤ周りも同様の造形でまとめ上げている。リヤではランプを上下に分けた間をボディ色とすることで、リヤフェンダーの豊かさを表現し、さらにリヤセクションに軽快でコンパクトな印象を付けている。
インテリアは、コンセプトカーからのアイデアが継承されている。ステアリングは往年の1本スポーク(下支持式)と、左右にスイッチエリアが伸びた形がコンセプトでの提案。量産車では、それならばスイッチ部分をスポークにすればいい、という逆の発想で構成されている。
また、ダッシュボード上面には部分的に幾何学模様のシボを採用、さらに木目部分にも幾何学的シボを入れるという、コンセプトモデルの手法を実用化させたようだ。またヘッドアップディスプレイは表示部が大きく、ナビゲーションの図表示などもわかりやすく表示できるようになっている。
全体的に極めて優雅なのだが、旅へのロマンを掻き立てる、走らせたくなるような衝動を抱く形と言えそうだ。
3サイズはL4805×W1865×H1485mmとなり、大きなタイヤとハイフロアによってSUV的に見えるが、全高は1.5mを切るなど新しいプロポーションを提案している点も、非常に興味深い。もはやSUVクロスオーバーではなく、このプロポーションがスタンダードとなる時代がきたのかもしれない。
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