なのに、なぜプロボックスが人気なの? 【火曜カーデザイン特集】 トヨタ・プロボックス 対 日産ADバン 荷室容量ではトヨタ・プロボックスの負け!
- 2021/04/20
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CAR STYLING編集部 松永 大演
またも何をいまさらなのだが、気になったのでまとめてみた。プロボックスの魅力についてだ。
バン専用モデルとして好敵手的存在であるのが、トヨタ・プロボックスと日産NV150AD(通称:ADバン)。実際のところ、プロボックス/サクシードが誕生したのが2002年であるのに対して、現行のADバンが誕生したのは、2006年。実はプロボックスは、先代ADバンを競合として誕生したモデルだった。当然ながら現行のADバン(NV150AD)は、プロボックスがすでに市場に登場している中で誕生したモデルなのだ。しかし、ADバンの誕生の事情は、プロボックスとはちょっと違っていた。
NV150AD=ADバンの方が大きく荷室も広い
現在のADバン(NV150AD)は、3代目ウイングロードの商用車仕様という立ち位置。ウイングロード自体は、その先代がサニーカリフォルニアであり、商用車というよりもレジャービークルとしての色合いが強いモデル。さらに、当時のワゴン専用のアベニールやプリメーラ・ワゴンまでも統合して取って代われるモデルとして全長を先代よりも200mmも伸ばす4400mm程度と大きくした。このことによって、当時、カリフォルニアからの直接のライバルとして先行していたカローラ・フィールダーよりもやや長く、アドバンテージにもなった。
さらにティーダをベースとした当時の歩行者保護ボディによる高いボンネットは、そのパッケージをプラスに転じて着座位置を高くし、よりキャビンフォワード(前方へ居住空間を広げるレイアウト)とすることで、さらに荷室の拡大ができた。
その後、乗用車のウイングロードは生産中止となって、商用車のADバンだけが残ることとなったのだが、全長4200mm程度のプロボックスに対する荷室容量の差も生まれていた。(プロボックスはフェイスリフトで、フロントオーバーハングが伸びるなど、現在では全長4.2mを超えた)
プロボックス対ADバンではA4コピー用紙箱(310×220×245mm) 89 対91個、みかん箱(380×320×280mm)38対42個、コンパネ(1800×900×12mm)平積み可能(数表記なし)対33枚、さらにADバンは京間畳(1910×955×50mm)3枚も可能とされている。プロボックスの荷室長はリヤシートを畳んで、座面を外した状態で1810mmとなるため、京間畳は積めない。
さらに、レジャーユースにも特化していたウイングロードは、助手席のシートバックを前倒しでき、ロングボードクラスのサーフボードなど長尺物を室内に積載することができた。これは商用車としてもそのまま活かされ、プロボックスでは室内に入れて運べない長いものも運ぶことができるのがADバンだ。
最小回転半径も、プロボックスの4.9mに対してウイングロードは4.7mと、全長もホイールベースも長いADバンの方が回転軌跡は小さい。最大積載量にしても同エンジンでの比較でもプロボックスは50kg少ない。
つまり、プロボックスは現行のADバンに対して荷室容量的にアドバンテージはない、ともいえる。それでもプロボックスがこれほどまでに愛用されているのは、どんな所にポイントがあるのだろうか。
プロボックスが主張するのは「効率」か
実はここにデザインの差があるのではないか? と思ったりする。
現在、プロボックスもADバンも商用車として「ものを運ぶ」というところに特化している。ところがADバンは、その生まれをサニーカリフォルニアからの“遊びのための車”とすることでデザインにおおきな違いが生まれている。そのフォルムはドルフィン=イルカをイメージさせるものとしていて、サイドビューは海の哺乳類からヒントを得た流線形。前述のようにノーズを厚めに仕立てる歩行者保護スタイルに悩んだ当時では、ずんぐりとしながらもスタイリッシュな造形としてイルカにヒントを得たのは、非常にわかりやすくナイスなアイデアだ。
さらにレジャー志向のスタイリッシュさを実現するために、室内長と高さを十分確保できていることから、ピラーを内側にやや傾けてセダンやクーペ的な安定感を演出した。
ところが、「ものを運ぶ」という点に特化した場合、実質的な容量の大きさは絶対的なものではあるのだが、効率という点を考えると小さくても大きく使える、と考えられるプロボックスにも一定の賛同が集まってくる。さらに、リヤゲートを開けた時の開口部がほぼ四角いプロボックスに対して、ADバンは上辺の短い台形。こうした所にも、「道具」としての愚直さを感じたりするユーザーも少なくない。
つまりはやや小さくても、商用車として特化して考え抜かれた専用車、としてもプロボックスは他に例を見ない存在として高い信頼性を得ているのだと思う。
しかし、プロボックスの魅力はそれだけではない。
決定的な違いは、例えばバンパーなどを見ても、塗装が省略されているとはいえ省略されていい形になっている。また、塗装すべき部分は塗装している。妥協ではなく、「こういうものとして作られていますよ」ということがメッセージとして伝わりやすいようだ。
なので、商用で使っていても愛着が湧きやすく、マイカーとしても使えるのではないか、使ってみよう。という気持ちになりやすいのかもしれない。
またさらなる魅力は、造形的には全体のフォルムが直線基調で、いかにも当たり前な形であることが実は大きな魅力になってきている一因。他との違いをつけるために、アルミホイールを履かせてみたり、フォグランプをつけたりステッカーをつけてみたりと、何となく手を入れたくなる衝動に狩られる形でもある。ヴィッツをベースとしていることから、レース用などチューニングパーツもある程度揃っているということもあるらしい。
また普通に考えても、プロボックスの標準のホイールは14インチ。1インチアップしても、15インチとアルミホイールもタイヤもかなり安いというのも洒落心を刺激する。
こうして考えると、仕事の世界から趣味の世界へとどんどん引き込まれてしまう。そんな側面もプロボックスにはあるようだ。
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