火曜カーデザイン特集:トヨタのコンセプトカー? アイゴ・クロス・プロローグ これって売るんじゃないの? フランスのニースで生まれた“トヨタ・アイゴXプロローグ”が示す次のAセグ
- 2021/05/11
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CAR STYLING編集部 松永 大演
しばらく以前に発表されたコンセプトモデルなのだが、極めて注目するべきものとして、改めてここでそのデザインを紹介しておきたい。それが、トヨタのアイゴXプロローグだ。Xはエックスではなく、クロスと読ませている。
Aセグに衝撃! こんなアグレッシブなモデルが登場とは
このアイゴとはあまり聞きなれないモデルなのだが、トヨタが欧州で販売しているコンパクトハッチモデルだ。Aセグメントというから、ヤリスよりも一回り小さなモデル。さらにいえば、世界的戦略車でもあって当時のPSAグループと共同開発され、プジョーでは107や108、シトロエンではC1となっていたモデル。トヨタの説明によれば、アイゴは21世紀のほとんどの期間、Aセグメントをリードしてきたという。
これまでの量産モデルのアイゴはxを頭に置いて、x-play、x-trend、x-clusiveという具合にグレードを分けてきた。しかし今回、プロローグモデルに与えられているXは、Yaris Cross のようなクロスオーバーモデルへの関係性を匂わせている。ベーシックモデルが存在し、さらにこのXなるクロスモデルが登場するのか、あるいはクロスの一本勝負なのか現時点ではわからない。
しかし、このモデルが登場したことでBセグメントについで、Aセグメントがさらなる激戦化することは大いに想像できる。とにかくAセグメントというエントリーポイントの常識を大きく変える存在となることが予想されるからだ。
このではそのアイゴ・クロス・プロローグの過激なスタイルを見ていこう。
フランスのニースで開発された超コンセプチャルなシティカー
このモデルはトヨタデザインの中でも、欧州の拠点であるED2(EDスクウェア)で開発された。その拠点は、南フランスのニースに位置する。フロントのデザインも特徴的なのだが、何よりも、こう来たか! と驚くのがサイドビュー。今回は造形も魅力的だが、カラーリングに魅力がある。サイドシルからリヤピラーをブラックアウトしているのが大きな特徴だ。
これにはひとつ、今までの多くのモデルが悩んでいた問題の1つの解決策にもなっていたかもしれない。それは、最近のパーソナルカーに見られる特徴として、4ドアであっても2ドアに見えるようなデザインをとる車が多くあったことに起因する。その場合に問題になるのが、リヤドアのオープニングラインの処理だ。このラインが見えることによって、たとえドアハンドルを隠したとしてもどうしても4ドアに見えて興ざめになってしまう。それをいかに2ドアクーペらしく見せるかは、デザインとしても大きなテーマだった。その中でアイゴ・クロスが見せたのが、パーティングラインの後半を、まったく異なる別の色の部品として表現することだった。これによってアイゴ・クロスは4つのドアを持ちながらも、まるでクーペのような佇まいを見せることができた。
クーペらしくという点ではそれは一例で、サイドウインドウをできるだけ小さくすることや、リヤドアの形をできるだけ小さくしてブラックアウト部分を象徴的に表現している。サイドウインドウに関してはセンターピラーを隠して、1枚ウインドウに見えるようにしているし、リヤドアは足の運びの中で最小限度の下端長を吟味したようだ。また、頭の運びに配慮してウインドウとは別にプレスドアとすることで実際の開口部を後方まで大きく取った。この造形とブラックアウトとのコンビネーションが、サイドビューに大きなインパクトを与えることに成功したのだと思う。結果としてフロントドアを印象づけるというよりも、前後合わせてクーペ的なドアを持つ印象だ。
通常エクステリアに関しては、アイデアスケッチによりイメージを膨らませて行くが、このモデルに関しては単に造形だけが先行したのではなく、当初からツートーンのアイデアありきで進んだと思われる。それでなければできない造形と言わざるを得ない。また、カラーリングありきで生まれたデザインというのも、非常に稀有な存在でもある。
Aセグメントという非常に限られたサイズの中で、極めてダイナミックな造形を見せてくれている。
それにしてもこのブラックとのコンビは印象的で、例えば、トヨタであればかつてのセリカ・ダブルエックスのような、リヤゲートのすべてをブラックアウトする方法をとっていた。これはスズキの現行アルトにも採用され話題となったが、黒を象徴的に使うというのは非常に面白い表現だ。場合によってはそれを「黒子」の表現として、「日本らしさ」というふうに感じ取ってもらえることもできるのかもしれない。
さらにカラーリングに関しては、スパイシーの意識を持っているとされていて、
チリ、ジンジャー、ワサビ、そしてブラックペッパーの4色を用いているとされている。今回ここで発表されているカラーリングは、スパークリング・チリレッドと呼ばれる赤とブラックのコンビネーションで、実際にはジンジャー=金色、ワサビ=緑色、ブラックペッパー=黒のベースカラーについては、あまり公表されていない。(動画では一瞬見ることができる)
スパイシー、あるいはスパイスという表現はかなり衝撃的で、このカラーリングの示すところが、アイゴXプロローグの全体のコンセプトを牽引していると言っても、言い過ぎではないと感じる。
これは絶対、量産可能! その理由
基本的にこのモデルはコンセプトカーとしての存在なのだと思うが、もしかしてそのまま量産に来るのではないか? とも思ったりする。しかし、ここは難しいだろうと思う部分もないではない。ここでは各部の特徴と、量産の可能性について触れてみよう。
印象的なフロントビューでいえば、LEDを用いた左右につながるデイライトの造形は、極めて個性的だ。これまでヘッドライトで顔に当たる目を造形してきたのがおおかたの車のデザインなのだが、徐々にヘッドライトがLED化により小型化し、また自由な形を作れるようになったことで、これまでの大きなヘッドライトとは違う目、あるいは異なるフロントの表現ができるようになってきた。その中でもアイゴ・クロス・プロローグはデイライトの中にヘッドライトを内蔵し、新たな時代のヘッドライトを象徴する顔の表現ができている。
さらにLEDのデイライトが「コ」の字型でサイドを大きく回り込む形になることによって、ボンネットなどボディが独特の形状を持つものとなっている。ボンネットが複雑な構造の一体ものであることは、スチールではない樹脂のような新たな素材を使用する提案にも思われる。
そんなフロント周りに驚かされながらも、さらに驚く、というより量産型ではどうなるかと期待したいのが、フロントフェンダーの造形だ。フロントバンパーとフェンダーが継ぎ目のない一体の構造となっていること。また左右に伸びるデイライトもセンターで分割式になっているものの、前端に近くバンパーとのクリアランスが少ないことだ。
単なるコンセプトカーとしては、もちろん気にせずに形だけを作ればいいので、ありがちなことだ。しかし、量産となると実用面できになる部分だ。
と言いながらも、真上からのいわゆるプランビューで見たときに、もしかして、行けるかも! と思ってしまうのだ。それは、上から見たときに「いかにも量産っぽい」というスタイルになっていたということだ。
ルーフが後方に向かって絞られてはいるが、それは量産レベル。それよりも、前後フェンダーがほとんど外に突出してないことがはっきりとわかる。これは、しっかりと全幅などのサイズが意識されていることを意味する。それでいて、目線レベルでこれだけの迫力ある造形ができているのが恐れ入るが、上からわかるのは室内空間を量産レベルにしっかり確保できていることで、さらにウインドウ曲率には無理がない。つまり安く生産できるということ。そしてドアミラーが、ドライバーからも非常に合理的な位置にあることだ。これらを総合すると、このパッケージには、量産の可能性が極めて高いと思える、ということだ。
ただ問題は、前述したようにフロント周りがどうなるのか、ということ。
そしてもう一つ大きな懸念が、前後のルーフサイドまで囲うプレスドアの造形だ。リヤドアは現行アイゴのように、前部分を軸とした換気だけの外開きになるとすれば、成立の可能性は高い。ただフロントウインドウは、後部の支持部がどうなっているのか? ドア内部にサッシがなければ成り立ちにくい構造だが、その場合ウインドウのスライドレールである必要がある。かつての80年代の空力ベストを狙ったアウディ100や200などが試みたように、内側で支持する構造なのかもしれない。
こんなことを考えていると、単にコンセプトにとどまるモデルとも思えないのがアイゴ・クロス・プロローグなのだ。
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