ホンダ新型CBR600RRと身長168cmのフィット感、人馬一体感が素晴らしかった。|試乗レポート
- 2020/11/08
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MotorFan編集部 近田 茂
ホンダのWEBサイトにて2020年8月6日に先行公開されたCBR600RRは同月21日に正式発表。9月25日に新発売された。プロダクションレース参戦を踏まえて改めて新開発された、ピュアでエキサイティングなミドルクラス・スーパースポーツである。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 ホンダモーターサイクルジャパン
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ホンダ・CBR600RR.......1,606,000円
躍動感のある走り!それを操ると元気になれる。
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
◼️主要諸元◼️
⚫️試乗後の一言!
ホンダ・CBR600RR.......1,606,000円
CBR600RRは2003年の初代デビューからいわゆるレーサーレプリカ系モデルとして良く知られた存在である。この新型では、ST600チャンピオンライダーの小山知良選手をテストライダーに起用し、先ずはレーシングマシンの開発を先行させて誕生に至ったと言う。
今回は、終始一貫したCBRコンセプトである “Total Control ” の価値を継承しつつも改めて一から開発する指令を受け、開発スタッフ一同の熱き情熱が注がれて完成された。簡単に言うとエンジンパワー等の1点が優れていてもダメ。総合的に全てのパフォーマンスが高く、かつバランスが巧みに整えられていることを重要視する考え方である。
ライディングポジションの見直しや、細々と随所で徹底された軽量化設計。パワーアップされたエンジンやエアロダイナミクスの追求。CD値(空気抵抗係数)はクラス最小の0.555 を達成。動的なフロント荷重を増すウイングレットも装備。そして最先端電子制御技術が折り込まれた最強マシンへと生まれ変わった。
エンジンはボア・ストロークこそ共通だが動弁系を含めた吸排気系が大きく一新されている。電子スロットルを採用したスロットルボディは従来のφ40mm~44mmへ拡大。吸気流入量の増加に伴いポート形状もよりスムーズな流れを追求して新設計されている。
バルブタイミングも吸排のオーバーラップは共通ながら排気側の開け時期を5°早め、吸気側の閉じる時期を5°遅らせる事で、吸排気効率を向上。大型化した排気系の装備も相まり最高出力は121ps/14,000rpmに向上。最大トルクも64Nm/11,500rpmを発揮する。
高回転高出力化に伴い、カムシャフト、バルブスプリング、クランクシャフト等、各部品の材質を変更し、耐久性を向上。さらにシリンダーヘッドのウォータージャケットを形状変更。燃焼室センターに位置するスパークプラグにロングリーチタイプを採用し、燃焼室間近にも冷却水通路を設けることで、冷却性能向上策も徹底されている。
燃料噴射や点火時期等のエンジンマネージメントには、BOSCH製5軸IMU(Inertial Measurement Unit/慣性計測装置)が採用され、車体挙動の様々な動的姿勢を把握推定し、ABS等も含め、巧みな制御が介入することでライダーの操縦をアシストしてくれるのである。
さらにはライダーのスロットル操作に対するレスポンス(出力特性)が5段階に任意設定できる他、9段階+OFFのトルクコントロール、3段階+OFFのウィリー挙動緩和制御、3段階のエンジンブレーキ制御が、ライダーの好みや走るステージに応じて選択可能。
またフロントフォークは突き出しを変えてコースに合わせたセッティング変更に対応しているのを始め、前後サスペンションはフルアジャスタブルタイプが奢られている。まさにスポーツ道具として多彩で自由なセッティングを可能としている点も見逃せないチャームポイントである。
ブレーキは以前に話題となった前後連動制御は踏襲されず、コーナリング対応のABSへ進化。急制動時はリヤリフト(ジャックナイフ現象)を抑制する制御も新採用。電子制御式のステアリングダンパーも標準装備されているのである。
躍動感のある走り!それを操ると元気になれる。
試乗車を目前にすると、切れ上がった細い目つきのフロントマスクがなかなか精悍。低く身構え、メカニズムがギュウッと凝縮された塊感と、高い位置に後方まで伸ばされたマフラーエンドのフィニッシュには、若干間延びした印象も覚えたが、フォルム全体からは“鋭い”雰囲気が醸しだされている。
早速跨がると、少しボリュームアップしたかの様な重厚感を覚えた。サイズ的にはほとんど変わっていないはずだが、タンクを膝で抱え、ハンドルを握った感触からそう感じられたもよう。どこか上質な仕上がりである。
資料によるとタンク上面を10mm下げ、サーキット等での前屈姿勢をしやすくし、同時に空力特性の向上が図られたという。ライディングポジションは、ステップが踏ん張りやすく、ハンドルは遠過ぎず低過ぎない。
市街地走行しても視線が低くなり過ぎることが無く、下半身で上体を支えやすい事も相まって、意外と疲れない。ライダーが自然と筋力を活かした乗り方になる感じで、いかにもスポーティである。
身長168cmの筆者にとっては、まるでオーダーメイドしたかのように、タンク形状と内腿とのフィット感が絶妙。軽くニーグリップするだけで、人車一体になれる感じがとても心地よかった。
しかも膝位置にはタンクとアッパーカウルの間にあるフレーム部が隙間無くカバーされているが、その部位が末広がり(八の字状)のデザインになっていて、実に都合よく膝を支えてくれる。
お蔭で急ブレーキ時でも背筋を活かして上体を支える動作がとても楽に行えた。また旋回時に両股を開いて腰を落とす姿勢でも、外足内腿とタンク後部のエッジ部分にグリップし易く、S字コーナーの連続で派手に左右体重移動を繰り返す乗り方も楽に決めやすかった。
簡単に言うとライディングポジション的に相性がとても良くなっていたのが好印象。これだけでもワクワク、ニコニコと気分が元気になってくるのである。
エンジンを始動すると、ずっしりと響く低い排気音に驚かされるが、暖気後のアイドリングが1,400rpm程に落ちつくと、それほど煩くはない。
ギヤを1速のローに入れてクラッチをミートしようとするとアイドリングは自動的に1,600rpmに高まり、スロットルを開けなくてもスムーズに発進してくれる。
メーターの回転計はブロックが積み重なり伸びていく一般的な表示の他に、かなり敏感に反応するデジタル表示がある。注目して見ると、クランクマスが小さいだけに、100rpm程度の範囲で細かく上下動を繰り返しているのがわかる。
ラフなクラッチミートではエンストの心配があるので、スタート時には200rpm程回転を高める仕組みが採用されているわけだが、感覚的には低速域でもトルクは十分に太く、発進操作はとてもイージーだ。
試乗車にはクイックシフターが装備されていたので、発進後はクラッチ操作無しでシフトチェンジが可能。2速へのシフトはタッチが硬い事があったので、クラッチを使う事が多かったが、それ意外は小気味よいシフトワークが楽しめた。
3,000rpmを超える領域なら、どんな場面でもスロットルレスポンスは十分に強力。ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時のスピードは43km/hだった。
8,000rpmを超えると衝撃的なパンチ力を発揮。回転は衰えることなく一気に15,000rpmからのレッドゾーンへと向かう。最高出力発生回転数の14,000rpmで120km/hに到達してしまうポテンシャルの凄さは侮れない。
絶対的なポテンシャルでは1Lマシンに譲る事は間違いないが、テクニカルサーキットを攻めあぐねる1Lマシンを尻目にスイスイと快走する姿が目に浮かんでくるのである。
その意味で、ワインディング路でも気持ち良く程良いスポーツライディングが楽しめるCBR600RRのポテンシャルと扱いやすさは好印象。市街地でもその柔軟な出力特性故にストレスは感じられなかった。
6速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は5,350rpm。120km/h時は6400rpm 程度である。
前後サスペンションはシッカリと硬めだが作動初期とボトム近辺の動きにソフトな感触が備わっていて、荒れた路面でも乗り味り心地が良かった。
また電子制御のお蔭でスロットル操作やブレーキ操作で失敗しにくい安心感も大きく、今回走行したタイトで狭い郊外のワインディング路も軽妙かつ楽しく走れたのである。
あえて言うと、旋回中のブレーキングでは若干マシンが立つ(起きる)傾向が感じられたが、ビックリする程の物ではない。むしろコーナー手前のブレーキングで車体を前傾させて、走行ラインをクィックかつ積極的にイン側へアプローチする乗り方を許容してくれている感じでもあった。
フルアジャスタブルな前後サスペンションはオーナーになった後で色々弄り倒す楽しみが大きい。また最先端電子制御技術の投入はライダーの失敗を防いでくれる備えとして心強く感じられた。
サスペンションや各種モード変更等、色々と選択する組み合わせは膨大なので、自分にとってのベストチョイスを導き出す楽しみも大きい。独自に導き出したデータを基に、各サーキットに相応しいセッティングでスポーツ走行にトライ。自力でラップタイムも計測する。そんなハードな楽しみ方も、何不足無く出来てしまう。
コンセプト通り、バランスの取れた総合性能の高さが魅力的なのである。
足つき性チェック(身長168cm)
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