火曜カーデザイン特集:三菱ふそうデザインに迫る “ブラックベルト”三菱ふそうのデザインメッセージがここに!
- 2021/05/04
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CAR STYLING編集部 松永 大演
乗用車のデザインは直接販売に結びつくが、こと商用車に関してはデザインがセールスへ及ぼす影響力は、それほど大きくない。しかし、車に限らず製品にはデザインが不可欠だ。そして、ふそうにも。それはなぜなのだろうか? 2021年4 月中旬に三菱ふそうトラック・バスが開催したデザイン・エッセンシャルズはふそうデザインの今をメディアに公開したもので、そのなかにふそうの目指すこれからのデザインが示されていた。
トラックのデザインに求められるのは効率?
新型車が出て最も注目されるのは、その形の良さだ。かっこよかったり、斬新な形だったりすると、かなりの注目となる。乗用車にとってよいデザインは、ある意味不可欠といっていい。それだけにクルマのデザインとは、かっこよく作ることであると理解されやすい。そんな側面があることは間違いないのだが、決してデザインの役割はそれだけではない。
形を作るということは、見栄えを作るということであると同時に、空力のよい形にしたり、効率よく作りやすい形や工夫を考えたり、室内では扱いやすい配置や形を考えたりするということが必要だ。つまりは経済性、安全性、快適性、そして製造コスト、それらを重視する開発のための大きなサポートとなるものでもある。
さらにコンセプトカーなどが示すものは、新しい技術や考え方をより具体的に提案してくれる、という価値も持っている。これが技術系の論文や試作だけであったならば、堅苦しくわかりにくいものになりかねない。未来をわかりやすくプレゼンテーションする、という意味においても非常に重要な役割を担っているのだ。
三菱ふそうトラック・バスにとっても、それはまったく同一だ。同社はメルセデス・ベンツ(ドイツ)、ウエスタンスター(アメリカ合衆国)、フレイトライナー(アメリカ合衆国)、バーラト・ベンツ(インド)から成る、ダイムラー・トラックス・グループの一員。ふそうブランドの開発に携わるとともに、他社との連携を行ない、バーラト・ベンツの開発にも関わっているという。これら5つのブランドが同族となっているが、世界には数多くのトラックブランドが存在する。日本だけでも、日野、いすゞ、UDトラックスとひしめく。差別化というだけでも、デザインの必要性はある。
トラック&バスにはメッセージが必要だ!
先ほどのデザインの役割に加えてもう一つあるのが、そのデザインの中にあるメッセージだ。乗用車であれば、かっこいいことなどが重要な狙いの一つになってくるが、トラック&バスに関しては、少し違ってくる。確かに製品としての良さや美しさは、ユーザーにとって愛着を持って迎えられる。しかしそれだけではなく、周囲からどう見えるのかということも重要だ。
ものを運ぶ運輸という事業は、本来、個々の乗用車よりももっと生活に直結している。道路上を走る車の中で、乗用車以上に本来は身近な存在だ。食品、生活雑貨、家具、家電などあらゆる品物を生産拠点から販売拠点や消費者に送り届けるのが主な役割となる。
ものを買うという行為はきわめて身近なことなのだが、実はそれらがトラックによって運び込まれているということは、多くの人が意識したこともない。人々が生活をする系の中の大きなラインであるにもかかわらず、運輸は一般の人々の生活からは極めて遠い、あるいは疎遠に見えてしまう存在だ。
視点を変えて路上ではどうだろうか? 乗用車の視点からすれば、トラックやバスは、非常に大きなものであって視界を遮るもの。また、音が大きく怖いもの……と捉えられがちだ。
しかし運んでいるものは、肉や野菜、菓子パン、アイスクリーム、洗剤、などなど。スーパーマーケットに並んでいるものは、すべてがトラックによって運ばれる。トラックの存在があってこそ、今の豊かな生活が保たれ、笑顔が生まれる。なのに、果たしてトラック&バスのデザインはどんなものであったのか? おそらくは印象にあるものがほとんどで、大きく、時には怖いものであるというのが大方の感想になってしまっている。
しかし、これは今のトラックやバスの持つメッセージだったのだ。そういった慣例を変えていけるのかどうか、世界のトラック&バスメーカーはその新たな前進の途中にあると言えるだろう。
では三菱ふそうはどのような展開を行なっているのか。
まずは3つの原則を持っているという。それは「明確なアイデンティティ」、「シンプルさの追求」そして「確かな品質」だ。
今後の三菱ふそうのトレンドとなるのが、ブラックベルト。伝統的なデザインとされるこの造形は、一時期まで採用されていた横一文字に広げられたブラックのグリルや、その中にヘッドライトを配する造形。これをかつてのエンブレムの逆さ富士のような造形と合わせて表現。
この造形をすべてのモデルに採用するとのことだが、面白いのはトラックとバスの双方に用いるとのこと。ただし、トラックに求められる表情とバスに求められる表情は異なり、トラックでは力強さをバスにはエレガントさを同時に表現する。その際のアイデアとしては、形状はやや異なるものの大型トラックではブラックベルトの幅を徐々に広げることとしている。基本的にこれだけのことで、パワーとエレガンスの表現を使い分けることに行き着いたとは、恐れ入ってしまうほどシンプルで効果的なアイデアだ。
またこのブラックベルトによって、ヘッドライトの共用化を実現。さらにリファインなどのモデルチェンジによるパネルの変更などを容易にできるようになったという。
トラック・アジア兼三菱ふそうのデザイン部長のベノワ・タレック氏は、様々な複雑なものを、いかにシンプルにすることができるかを考えたといい、フロントの造形で周囲の人を驚かせてはいけないとも語った。いずれにしても、このフェイスデザインへの到達こそが、ふそうデザインの全てを語っているといっていいだろう。
おそらくこの先、ブラックベルトはレーダーやセンサー、ヘッドライトの収納場所へと進化するのではないだろうか。よりシンプルでフレンドリーなトラックやバスが誕生してくることが期待できる。
そしてまたそれは、生活を支えるヒーローとそしての存在感をも備えてくれていれば、なんて思ったりもする。
デザイン開発の実際
アドバンストモデルの開発
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