長野県側から旧道に入ると、すぐにつづら折りの険しい登り坂が始まる。かつて観光バスや大型トラックが往来していた頃は、一発で曲がりきれずに切り返している光景があちこちで見られたという。身軽なロードスターでもご覧の通り。フルロックとは言わないまでも、ステアリング操作がかなり忙しいことに変わりはない。
安房トンネルの長野県側の入口。手前の「中の湯温泉旅館」の看板に沿って右折すれば旧道に入る。安房トンネル、湯の平トンネル、平湯トンネルすべてを通過するのに要する時間は12分ほど。旧道で安房峠と平湯峠を越えると約1時間かかる。
安房峠より穂高連峰を望む。
安房峠は長野県と岐阜県の県境となっている。写真手前の長野県側が松本市(旧南安曇郡安曇村)で、奥の岐阜県側が高山市(旧吉城郡上宝村)だ。
今回の旅に供されたのは、マツダ・ロードスターのラインアップのなかで最もベーシックな「S」というグレードで、トランスミッションは6速MTのみ。LSD、リヤスタビライザー、トンネルブレースバーを持たない。
平湯峠は岐阜県道485号線と乗鞍スカイラインの交差点でもある。乗鞍スカイラインは2003年よりマイカー規制が敷かれていて、観光バスやタクシー以外での通行が禁止されている。そして11月から5月中旬までは冬季閉鎖となる。
ドライブイン「赤かぶの里」にて、飛騨高山地方の名物のひとつ、高山ラーメンを食す。麺はやや縮れ気味で口に運びやすく、スープはあっさりしている。クセがなく、素朴で親しみやすい味だ。
《かつての難所にあえて挑む面白さ》1997年末に開通した安房トンネルと湯の平トンネルを通れば、安房トンネル入口から平湯温泉まではものの5分。旧道だと約30分も掛かってしまうが、木漏れ日の中を貫く道程には情緒が溢れ、峠には絶景が広がる。苦労して行くだけの価値はあるだろう。平湯トンネルを迂回する県道485号線も気持ちの良い峠道だ。長野自動車道の松本ICから安房峠トンネル東側入口まで約1時間。東海北陸自動車道の飛騨清見ICから平湯トンネル西側入口まで約50分。