トヨタの「省ネオジム耐熱磁石」は何が素晴らしいのか

右が本稿で紹介する省ネオジム耐熱磁石。中がディスプロシウムを含めた従来組成ネオジム磁石、左はフェライト磁石。硬球を常温で吸着させても、開発品と従来組成品の著しい性能差は認められない。

ネオジム磁石は粒（主相結晶）と仕切り（粒界層）という構造になっていて、粒が小さく仕切りが広いほど保磁力を高められる。一般的な製造方法である焼結法に対して、トヨタは液体急冷法を用いること主相結晶を微細化、これらを実現している。

外殻にネオジムリッチ、内部にセリウムとランタンを含める二層の殻構造によって、160℃以下の温度における保磁力が向上する。これは、芯部のCe2Fe14Bにより温度特性が向上し、外郭部のNd2Fe14Bにより磁化が反転しにくくなるためという。

レアアースの中でも安価で量が豊富なランタンとセリウムは、単純に混ぜて合金を作っても耐熱性や磁力が低下してしまう。トヨタは研究開発を経て、これらをLa1：Ce3の比率で混ぜると特性悪化を抑制することを発見、今回の開発品につながった。

液体急冷法で作られた合金の急冷リボン。結晶構造を微細化させられる。

グラフで示すようにディスプロシウム含有従来組成ネオジム磁石に対して、ネオジム20％減組成の開発品ではむしろ高温下で保磁力が逆転、良好な結果が得られた。ネオジム削減量で耐熱性能をコントロールできる見通し。140℃近傍で従来品と性質がクロスしたことについて、開発陣も「理由はまだ不明」と言及している。

記事に戻る