Honda S660のホワイトボディを徹底解説ホンダS660 動質をとことん追求した新造ミッドシップシャシーの技術を解き明かす

2019/06/21
Motor Fan illustrated編集部

ミッドシップスポーツカーという、クルマとしては特別なフォーマットであるS660だが、いっぽうで軽自動車というフォーマットも有している。特別ながら廉価で提供、ふたつの背反する性格をいかに成立させるかが開発の大きな柱のひとつだった。求める性能を特別な手段をとらずいかに成立させるか。高価な素材を用いずとも、形状と工法でさまざまな工夫を凝らし、オープンカーを成立させたのがS660のボディの特色である。

スポーツカーを標榜するなら、乗員はなるべく低く座らせたい。そうすれば絶対的な速度ならずとも、視覚的な効果もあり刺激的な運転感覚を得られる。そう考えた開発陣は、可能な限りのヒップポイントの低下に努めた。あわせて、正しいドライビングポジションを実現すべく、ペダル配置をはじめとしたメカニカルレイアウトの適正化にも腐心している。結果、右の透視図に見られるようなパッケージを成立させた。

ミッドだけに前軸重は比較的軽いが、ストラットマウント部の不要な動きは抑えたい。左右だけでなくバルクヘッドにもブレースを接続した。ステアリングギヤボックスはサブフレームに直付けし、前引き構造としている。

あわせて、ストラットマウントとフロントメンバーにもブレースを追加している。こちらはスポット溶接で接続されている構造。大きく開いた穴は製造時に機械を入れるために必要なもの。

ストラットタワーバーを前方から眺める。ダッシュアッパーの下部にボルトで締結する。バルクヘッドのサービスホールも最小限である。ワイパーモーターとリンクを避けるようにレイアウトは定められた。

Nシリーズに用いられるS07型ターボエンジン＋トランスミッションをミド搭載すると、前方排気レイアウトになる。すると、排気系の冷却が厳しい。そこで、フロアトンネル後端に導風板を追加。タービンに直接走行風を当てる。

曲げ／ねじり剛性を確保するための大容量トンネルを設けると、今度は開口部側で口開きのような動きが生じてしまう。そこで、フロア側の3ヵ所にボルト締結によるブレースを追加した。後端は左に示す導風板のステーも兼ねる。

ストラット、とはいうものの少々トリッキーなリヤサス。これは左側を後方から眺めたところ。前方からラジアスアーム、ロワーアーム、トーコントロールリンクがそれぞれナックルに接続される構造だ。

こちらは右側を下から眺めたところ。ラジアスアームは板金プレス品を上下最中合わせにした頑強な作り。ブッシュ類は必要最小限の印象を受ける。横置きミドながら充分にアーム長をとっているのが見て取れる。

左はナックルとトーコントロールリンクの接続部。ボールジョイントを用いる。右上はサブフレームのアーム取り付け部。少々わかりにくいが水平から少々傾けてある。右下はラジアスアームのボディ側マウント部。

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