RENESISでは最高出力の発生回転数が8500rpmにまで至った。この高回転化に対応するため、ローターの動的剛性をシミュレーションで精密に解析した結果が左の図だ。これは9000rpm状態での応力分布を示している。この解析により、全体の強度・剛性分布を見直すことで、ローター単体重量を従来比で約5%軽量化した。また、フライホイールは従来比で約15%軽量化している。これらの軽量化はレスポンス面だけではなく、回転フィーリングの向上やシール性の向上にも貢献する。
ペリフェラル排気の13Bに比べてサイド排気仕様(グラフ上の太線)は吸気ポートを早めに開け、しかも新気導入量は40%増えている。13Bでは排気の終端と吸気の始まりとがグラフ上でも交差(オーバーラップ)している。
サイド排気化により、燃焼済みの排ガスをふたたび燃焼に使うEGR(排ガス再循環)量が30%減り、燃焼が安定した。ポートタイミングも適正化され、膨張比を大きく取れるようになった。これらはすべて燃費向上に結び付いた。
左端のグラフを分解して比較すると、このようになる。レシプロエンジンであれば、オーバーラップをバルブ位相制御して性能をつくり出すことができるが、ポートが「空いている」だけのREは機械設計がすべてだ。
サイドポート部分のカットアウェイモデル。かつてのペリフェラルポート部分は埋めてあるが、この部分は金型の変更で手当てしている。センターハウジング面には、前後ふたつのローターからの排気(REはローターの両側に排気する)が集合するが、ハウジング幅は50mmしかなく通路の確保が難しい。RX-8に搭載されたRENESISでは、すべての排気ポートにインサート(別挿入)部品としてステンレス製ポートを鋳込んでいる。赤い断面の部品がそれである。
フロントローター側から見る。正確に位置決めされたインサートを鋳込むため、ハウジング鋳型の中子は流体解析で形状が決定された。また、このインサートは排気熱を維持する点にも寄与している。エンジンを出た排気は、そのままほぼ真横に曲げられたエキゾーストマニフォールドに導かれるが、この部分は二重の薄板で構成され間に空気層がある。冷間始動時にも排ガス温度をなるべく維持して三元触媒に導き、触媒を早期に活性化させるための工夫だ。
RENESISの概略。点火タイミングはクランク角センサーで計るが、排ガス成分やプラグまわりの温度(エンジン内でもっとも高く230℃程度)、エンジン回転数などから2本のプラグの点火位相を制御している。プラグはマイクロ電極。排気はなるべく温度を下げずに三元触媒へ導き、排気中のO2濃度は2カ所で検出。排気系デザインはリヤエンドのメインマフラーまでほぼストレートだが、これはREのエンジン外径が小さいことによるメリットでもある。
グラフ内の細い線はモード燃費の車速パターン。時間/車速ともにゼロで始動し、そのまま20数秒のアイドリングを行なう冷間始動モードである。従来の13B型は触媒入口での排気温度が600℃以上には上がらず、触媒活性化には温度×時間で対応していたが、RENESISは排気系の工夫で17〜18秒後には900℃に達し、触媒の早期活性化が可能になった。ただし、この間はアイドリング回転数が高く、筆者が乗っていた初期型RX-8は、始動直後は10秒で2200rpmまで上がり、20数秒間は1800rpmを維持する。
4ポート仕様の吸気系構成:RENESISは4ポート版と6ポート版をラインアップしている。プライマリー、セカンダリーの構成が4ポートで、プラスしてオグジュアリーポートを備えるのが6ポート版。各ポートは、エンジン回転数に応じてバルブで開閉され、吸気の最適化を図っている。低回転域では、プライマリーポートのみから吸気することで高い流速を確保。エンジン回転数約3750rpmでセカンダリーポートのシャッターバルブが開き、吸気流速を低減して低中速トルクを高める。
6ポート仕様の吸気系構成:6ポート版では、4ポート版の動作に加えて、約6250rpmでオグジュアリーポートを開放して吸気ポート面積を最大化、高速域でのトルクと出力を最大限に発揮させる。また、6ポートエンジンでは約7250rpm付近で4ポートエンジンでは約5750rpm付近で可変インテークバルブを開いて吸気管長を長くし、中速トルクを高めるという制御も行なっている。可変バルブタイミング機構が使えない分、可変管長機構や吸気量制御でフォローしているわけだ。
図はS-DAISならびに可変エアダクトの作動とエンジン回転数の関係を表している。3750rpm以下はすべてのバルブが閉じ、プライマリー吸気ポートのみを使用。3750rpmでセカンダリー、6250rpmでオグジュアリーポートのシャッターバルブが開き、その間の5500rpmではフレッシュエアダクトが作動する。レシプロエンジンでは、いまどきこれほどまでに凝った作動の吸気管制御システムは存在しないから、もはやREならではの機構といえる。
S-DAISがエンジン出力特性に与える影響を表す図。横軸がエンジン回転数で、縦軸は体積効率だ。S-DAISによる、確実な向上幅が見てて取れる。旧13B(NA)との比較では、中回転域以降、明確な差がついている。これはS-DAISのみならず、ポート面積アップなどの総合的な効果と見るべき。
RENESISでは最高出力の発生回転数が8500rpmにまで至った。この高回転化に対応するため、ローターの動的剛性をシミュレーションで精密に解析した結果が左の図だ。これは9000rpm状態での応力分布を示している。この解析により、全体の強度・剛性分布を見直すことで、ローター単体重量を従来比で約5%軽量化した。また、フライホイールは従来比で約15%軽量化している。これらの軽量化はレスポンス面だけではなく、回転フィーリングの向上やシール性の向上にも貢献する。