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【海外技術情報】パンタグラフ搭載のハイブリッドトラックがアウトバーン4,000kmを走る日は来るのか?

  • 2020/09/21
  • 川島礼二郎
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昨春、ドイツのアウトバーンでパンタグラフを搭載したハイブリッドトラックが走り始めたと話題になった。それはフランクフルト近郊で『eHighway』の実証実験が開始された際のニュースであった。その実証実験が先月、遂に本格稼働を始めた。そこで今回は、そこで使われる技術の概要をご紹介しよう。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 今回紹介するのは、ドイツのシーメンスとスウェーデンのスカニアが協力して推進している『eHighway』システムと、そこを走行するハイブリッドトラックである。電力供給とパンタグラフはシーメンスが、ハイブリッドトラックはスカニアが開発を担当している。

(提供:シーメンス)

 まずはシステムの概要。エネルギー供給システムは、鉄道の世界で既に実証された技術に基づいている。2極架線システムでトラックに電気エネルギー供給を行う。

(提供:シーメンス)

 アクティブパンタグラフが接触線からトラックの電気モーターにエネルギーを伝達する。技術的詳細は発表されていないが、このアクティブパンタグラフがキーテクノロジーである、とされている。パンタグラフは時速0〜90km/hにおいて、接触線に接続したり、切断したりできる。この接続・切断の切り替えは、ボタンを押すだけで自動または手動で行われる。架線に接続されたeHighwayトラックの運転は、一般的なディーゼルトラックと変わらない。

(提供:シーメンス)

 続いては車両。電化路線においては、トラック(スカニア製『R 450 hybrid』)はアクティブパンタグラフを介して電力供給を受ける。それ以外のセクションではハイブリッドドライブにて駆動される。搭載されるパワートレインに制限がないのは『eHighway』の特徴だ。フルEV、燃料電池などにも実装できる。もちろんエネルギー回生技術も利用できる。

 今般スカニアが発表したのは、ドイツにおける実証実験のフル稼働である。新型コロナの影響もあったのか計画よりやや遅れたものの、本年7月以降、フランクフルト近郊のアウトバーンの架線が張られた5kmの区間を、パンタグラフを搭載した5台のScania R 450ハイブリッドトラックが毎日走行している。現在はデータ収集段階であるが、ハイブリッドトラックの運用事業者であるContargo社のディレクターHeinrich Kerstgens氏は以下のようにコメントしている。

「高速道路の両方向5kmのテストトラックは非常に短いように思えるかもしれませんね。でも、現在の目的はテクノロジーをテストすることです。フィードバックが肯定的であり、もしドイツの高速道路ネットワークの約3分の1が電化架線を備えたならば、ドイツで登録されている大型トラックの約80%がこのテクノロジーを使用して電気モードで運転できるようになります。それは炭素排出量の削減に重要な貢献をすることでしょう」

(提供:シーメンス)

 インフラ側を担当するシーメンスは以前から、この『eHighway』システムのメリットを発表していた。BDI(ドイツ産業連盟)は、低コストで脱炭素化ができるとして、アウトバーンに4,000kmのネットワーク構築を提言している。また40tトラックがeHighwayを走行すると、100,000kmあたり16,000ユーロ分の燃料節約になる、という。

『eHighway』は、現在実証実験が行われている近距離でのシャトル輸送のみならず、鉱山における電化貨物輸送、それに長距離交通、という3シーンでの利用を想定している。

 日本にいると夢物語のように感じてしまう『eHighway』だが、スカニアとシーメンスのそれぞれの母国であるスウェーデンとドイツのほか、イタリア、アメリカでも実証実験が行われている。

 特に興味深いのはイタリアにおけるプロジェクトで、イタリア北部のロンバルディア地方にある3つの主要都市(ブレシア、ベルガモ、ミラノ)を『eHighway』で結び、最終的には62.1 kmのルートに沿って太陽光パネルを設置。その電力でハイブリッドトラックを走らせようとしている。

『eHighway』システム下でパンタグラフを搭載したハイブリッドトラックが走り回る日が来るのだろうか? 実証実験の結果が待ち遠しい。

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