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HSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)ってなんだ?|バイクにまつわるヨコ文字・略語解説

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バイク関連の記事中で、良くわからない専門用語を見かける事はありませんか? 特に欧文文字を並べた略語に戸惑うことも少なくは無いでしょう。そこでモーターファン バイクスでは、新旧色々な「用語」をランダムに取り上げて、ひとつひとつをわかりやすく解説していきたいと考えました。積もり積もらせ、目指すは簡単で明快な “用語辞典” です。

解説●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
協力●株式会社 ホンダモーターサイクルジャパン

HSTC とは?

Honda Selectable Torque Control(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)の略称。

 俗に言う「トラクション・コントロール」、つまり駆動力制御装置の事である。
ただし、ライダーが任意でその機能をOFFできる事から「選択可能」(セレクタブル)の意味合いで “S” を含めたホンダ独自の呼称となっている。

 ごく簡単に説明すると、後輪の駆動力を自動的に調節(セーブ)することで、旋回中にパワーの掛け過ぎによって誘発されるリヤからのスリップダウン(横滑りからの転倒)を防ぐ事に貢献する賢い電子制御装置だ。

 ただし公式には「スリップをなくすためのシステムではありません。あくまでもライダーのアクセル操作を補助するシステムです。 ー中略ー 無理な運転までは対応できません。」とある。

滑りやすい路面で旋回中、二輪車はスロットルを開け過ぎると後輪がスリップ!転倒に至る危険性がある。

HSTCの中ではシンプルな仕組みを持つPCXを例に少しだけ詳細説明

 HSTCは既にいくつかのバイクに採用されてきている。CBR1000RR-Rにも搭載されている技術で、実はその仕組みや制御具合は車両ごとに異なっているが、狙っている基本機能は同じなので、最もシンプルなPCXを例に説明を続けよう。
 舗装路を走る時でも、例えば浮き砂があるようなシーンや雨で濡れた路面等を想像して見て欲しい。ライダーが予期した路面状態よりも悪い状況下で、そうとは気付かずにグイグイとアクセルを開けて(パワーを掛けて)行くと後輪のグリップ力より駆動力が勝ってタイヤの過回転で横滑りを始め、そのままにすると転倒してしまう。
 何も滑りやすい場面だけではなく、コーナーを攻め込んでタイヤのグリップ限界を超えてしまうようなシーンでもスリップからの転倒は良く有り得るパターン。
 ピリピリと神経を張りつめた上手なライダーなら、瞬時にスロットルを少し閉じて駆動力をセーブ、あるいは車体を起こして後輪のグリップを回復させる事で転倒の危機を回避することができるのも事実だが、誰もがバイクを上手に扱いこなせるとは限らないし、下手(失敗)するとリヤが大きく流れて転倒させてしまうこともありえる。
 HSTCはそんな場面で自動的に駆動力をセーブし、スリップを回避してくれるのである。

仕組み  

  ABSに使われている前後車輪速センサーからの情報で差動(後輪の過回転)を察知するとエンジンを管理しているECUの指示により燃料噴射量をセーブする。スロットルの開度や速度と前後輪の差動具合を見極めた上で、後輪のグリップをキープする様にエンジントルクを最適化してくれるのである。
 分かりやすく言うと、後輪を滑らせない制御装置と理解しても良いだろう。

HSTCは、基本的に操作は不要。あえて機能を解除したい時だけ、①と②のスイッチを使ってOFFすることができる。
HSTCの状態表示を担うのが③と④のパイロットランプ。メーター中央の下方にもHSTCの文字表示が出せる。
とても見やすい大型メーターが採用されたPCX。同160 、同e:HEVも基本的に共通である。

●補足
 前の説明で “滑らせない制御装置” と記したが、単純に言うと後輪が滑ると即座に駆動力を落としてグリップを回復する仕組みである。
 ただ様々な状況下を走る時、場合によっては例え滑ってでも駆動力を失いたくないケースがある。深い砂地や雪上等で滑ると駆動力がセーブされて発進すらできないケースもあり得るからだ。
 そんな時、あるいは滑らせてコントロールを楽しみたいライダーのために、任意で機能をOFFできるようになっている。
 通常はいつもONに設定されている。OFFにしたい時だけ操作が必要。
 その場合は、①のSEL(セレクト)スイッチを押してメーター中央の下にHSTCの文字を表示させた上で、②のSET(セット) スイッチを押し続けるとONとOFF が切り換えられる。
 なお③のパイロットランプは制御が介入(作動)すると点滅して知らせてくれる。④はOFF 状態を示す警告灯だ。

●用語解説こぼれ話。
 略語の頭にHが付くのは、HONDA(ホンダ)の呼称である事が多い。全てに当てはまる訳では無いが、Hで始まる略語や造語はホンダが開発した技術や装備の存在をわかりやすく表現するアイコンの様に活用される。あるいは文章中での詳細解説を割愛(備考や注釈掲載)するのに利用したり、呼称を広く定着させる事に期待し、さらには宣伝効果を高める狙いを込めて使われるケースもある。
 同様に他のメーカーの場合は、Y(ヤマハ)やS(スズキ)そしてK(カワサキ)で始まる略語が使われるわけだ。

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