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加速は? 距離は? 電動バイクって実際どうなの? ホンダ PCXエレクトリック試乗

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人気のPCXに追加投入された電動スクーター。免許証は普通二輪免許の小型AT限定でOK。125㏄と同じカテゴリーに入るので高速道路は走れないが、排気ガスはゼロ、音の静かな次世代コミューターの使い勝手は実に興味深い。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)

◼️ホンダ・PCXエレクトリック……リース専用車

パールグレアホワイト
EVとしての主要ユニット配置図。メットインスペースは2個のモバイルバッテリーパックに奪われた。
エネルギー源は48Vのリチウムイオン電池(着脱式のモバイルパワーパック)2個を直列利用した96Vだ。
パイプダブルクレードルフレーム下部にパワーユニットハンガーを介して組つけられるスイングアームの左側に新開発されたIPM(磁石埋め込み型)モーターが搭載されている。
充電器が車載されているので、ご覧の様に外部電源から充電できる。駐輪場所で家庭電源が取れればとても便利。
バッテリーは新開発されたモバイルパワーパック式。車体から取り外し、家屋内に置く専用充電器(別売)でも充電可能。

初代EVのホンダ・CUV ES

四半世紀前に投入されたホンダ初のEVスクーター

 PCXエレクトリックは一般販売はされていないリース専用車。法人企業や個人事業主、官公庁を対象にリース契約が可能となっている。これまで30名限定でモニター貸し出しが2回行われた他、首都圏や観光地でのバイクシェアリングやレンタルサービスの実証実験も実施。またフィリピンでは余剰電力活用システムの実証実験にも参画。今後社会への浸透と一般市販が期待されているのである。

 ホンダのEVスクーターは1994年に登場したCUV ESがお初。前後10インチホイールを履くスーパーディオ風のロングホイールベース車で都市部で活用するミニマムトランスポーターとして開発された。50ccクラス相当のモデルで86.4Vのニッケル・カドミウムバッテリーをフロアステップ下に搭載。充電器が車載されておりフル充電するには家庭電源で8時間かかった。航続距離は30㎞/h定地走行で61km走行できると言われた。

 それから四半世紀の歳月を経て登場したPCXエレクトリックは125ccクラスへとスケールアップ。前後に14インチホイールを履き、ホイールベースは1380mmと長めの設定だ。CUV ESとの比較でトルクは倍、定格出力は7割増。一方車重は約1割増の144kgで済んでいる。
 リチウムイオン電池は2 個直列のカセット式を採用し車体から取り外すのも簡単。専用充電器で個別充電にも対応するので、駐輪場所に電源が無くても困らない。フル充電には6時間、取り外して充電すると4時間×2個で8時間かかる。フル充電すると60㎞/h定地走行で41Km走れると言う。

 PCXと比較すると最高出力こそ控えめながら最大トルクは驚くべき太さだ。PCX(125)のトルクは12Nm/5000rpm、PCX150は14Nm/6500rpm、対するエレクトリックはなんと18Nm/500rpmというビッグトルクを誇るのである。
 ゼロ(停止状態)から瞬時に最大トルクを発揮できるのがエンジン車とは決定的に異なる電動ならではの特徴だ。クラッチもトランスミッションも持たないPCXエレクトリックならではの走りは如何に!?

パフォーマンスに不足無し!

 シートに腰をおろすと、PCXよりも車体は少し大柄な雰囲気。大差ないとは言え車重も重め。ひとつ上級の250cc クラスに乗る様な気分だ。でも特に大き過ぎるわけではなく、ちょっと格上の優雅な乗り味が印象深い。   
 鍵はスマートキータイプ。それをポケットに入れて、そのままスクーターに近付けばイグニッションダイアルが回せるようになり、スタート準備の他、充電用電源コード収納部やシートのロック解除、ステアリングロックの解施錠等ができる。
 イグニッションをONして発進準備すれば、あとは右手のスロットルを開けるのみ。クラッチは無く、モーターの回転と共に後輪も回り始めて実にスムーズに加速してくれる。しかも立ち上がりの加速力は強く、市街地や郊外の交通の流れに乗る上で、そのパフォーマンスに不足は無い。

 エンジンの様にアイドリングという準備が無いまま、平然とスルッと発進しグイグイと、かつなめらかに加速する様はEVならではの乗り味で、なかなか快適。過ぎたるパワーこそ感じられないが、まったく不満を覚えないだけのポテンシャルは十分である。

 法定速度(60km/h)までは速やかに到達し、それ以下の領域で走る限りはストレスなくキビキビと走れる。おそらくは制御系の設定次第で高速走行対応も可能と思われる潜在性能の高さがある事を感じとれたが、現状では下り坂で全開を続けたとしてもプラス10km/hが見込まれる程度だろう。

 もっとも動力性能をアップすれば航続距離のダウンは免れない。今回は編集部で行った通勤実用走行テストで約45kmの航続距離は確認したが、バッテリー残量計はゼロを示していたと言うからバッテリー消費管理にはかなり気をつかう必要がある。

 以前試乗したCUV CEは25kmの実用走行で電欠停止した記憶があるので、パフォーマンスUPも考慮すると実用で4倍近い性能向上を果たしていることは間違いない。
 その多くはバッテリーの進化によるところが大きいが、モーターや制御系の高効率化による性能向上も侮れないだろう。

 スロットルを戻すと、あまり強力ではない回生ブレーキが働き、30km/h程度まで落ちるとスゥーと転がるようになるから両手でブレーキをかけて停止する。それらの操作フィーリングは、あえて従来のエンジン車と大差のない扱いやすさに調教されている感じ。
 もっと強く広い速度域で回生ブレーキを活用してもよいのではないか? とも思えたが、バッテリー管理上の都合等、さまざまな要件のクリアも考慮して全体的に大人しい設定でまとめ上げられたようだ。

 直進安定性は高く、乗り心地そのものはロングツーリングにも適応できる資質が備わっている。リヤのツインショックは3ピッチスプリングを採用。荒れた路面でも長いストロークを活かした巧妙なフットワークを披露してくれた。

 試乗して感じられる懸念材料は、やはり電欠の事。ガソリン車の様に直ぐにはレスキューできないだけに、現状のままではエンジン車にとって変わる存在にはなり得ない。
 しかし、その一方で1日の走行が40Km程度の使い方で済むのであれば、これはとっても便利。しかも快適に走れる事もまた事実なのである。帰宅したら充電する。その使い方さえ慣れれば、翌朝はいつも満タン(満充電)スタートできる。
 数年もすればバッテリーの能力はどんどん進化するハズだから、航続距離が劣る差もいつのまにか縮まる事は必至。駐輪場や出先で充電可能なインフラ整備も進めば実用上の性能差はまるで気にならなくなってしまう事だろう。今回の試乗でそんな時代の到来は、もう直ぐ目の前に迫っていると感じられた。

⚫️足つきチェック(ライダー身長170cm)

ご覧の通り両足の踵はベッタリと地面をとらえることができる。他のPCXと比較すると車体は少し大柄だけど、シート高は760mmで同レベル。足つき性に難は無い。

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