スズキのAMT+モーターはどれだけスムーズかスズキAGSハイブリッドの衝撃——なぜ10kW／30Nmのモーターなのか

2019/05/18

マニュアルトランスミッションの変速作動を自動化したのがAMT（スズキの呼称ではAGS）。クラッチの断続とギヤシフト&セレクト操作を電動油圧式（モーターで油圧ポンプを駆動）のアクチュエーターで行なう。

スズキのハイブリッドシステムはMGUに加え、ISG（モーター機能付き発電機）とスターターモーターを搭載する。スターターモーターはエンジン始動時にのみ使用。走行中の再始動はISGで行なう。MGUは回生／力行専用だ。スズキはアイドリングストップ~エネチャージ（オルタネーター回生）~Sエネチャージ（ISGによる回生／力行）と電動パワートレーンを進化・発展させてきた。それらの技術を積み上げた先にハイブリッドシステムがある。（FIGURE：SUZUKI）

スズキのハイブリッドシステムはフロント横置きのパッケージ。K12C型1.2l・直4自然吸気エンジン（67kW／118Nm）にAGSと呼ぶ5速AMTを組み合わせる。トランスミッションを介さず駆動力を直接駆動軸に伝えるため、トランスミッションの出力軸側に、MGU（交流同期モーター／ジェネレーターユニット）を配置。MGUが小出力であることや車室から離れた位置にあることなどもあり、走行中に電磁音を感じることはない。

回生／力行用MGU（交流同期型）の最高出力は10kW/3185~8000rpm、最大トルクは30Nm/1000~3185rpm。ISG （2.3kW／50Nm）を使うマイルドハイブリッド仕様車に比べて、高出力・高効率のMGUを使う。水冷式。

荷室下に収まるパワーパックの様子。元来スペアタイヤを収納するスペースに収まっている。バッテリーは空冷式で、右側に見える黒い樹脂製パーツに冷却ファンが収まっている。冷却風は室内（リヤシート部分）から取り入れている。

AMTはアップシフト時にクラッチを引き離している間、エンジンの動力が伝わらず空走する。ドライバーの意志とは無関係に変速が行なわれるので、Gの変動に違和感を覚えやすい。クラッチが切り離され、エンジンの動力が伝わらない間、モーターで駆動力を伝えてやると、Gの変動がなくなり、加速はシームレスになる。これがAMTにモーターを追加する最大のメリットであり、このメリットを享受するためモーターを出力軸側に配置した。（FIGURE：SUZUKI）

スイフトに搭載した例。ハイブリッドシステムを企画する際に定めたキーワードは、「軽量」「コンパクト」「高効率」だった。効率を重視するあまり、システムが重く、大きくなってはならない。もともと狭いエンジンコンパートメントにシステムを収める都合からも、（CVTではなく）AGSの選択は合理的だった。車重はCVTと組み合わせるマイルドハイブリッド仕様車と同等。パワーパックは荷室下に収納しているので、荷室空間をあまり犠牲にしていない。（FIGURE：SUZUKI）

山本通泰氏（スズキ株式会社電動車開発部第五課長：肩書は取材当時のもの）

藤峰卓也氏（スズキ株式会社四輪技術本部四輪トランスミッション第二課長：肩書は取材当時のもの）

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