スバルのMTシフトフィールはどのように作り込まれているか。トヨタ86／スバルBRZのマニュアル・トランスミッション開発

2019/09/23

長谷川大氏：富士重工業スバル技術本部シャシー設計部シャシー設計第2課（取材当時）

富士重工業初のFR用MT。ベースはアイシン・エーアイ（当時）製のAZ6。ここ四半世紀で富士重工業がMTを新調した例は、軸間距離75mmの5速MTから、STI仕様での大トルク化を視野に入れた同85mmの6速MTに変わったときだけである。

シフトユニットの全体構成。金属とゴムと樹脂だけでできている。コストと使用実績から素材の選択肢は極めて狭い。だから機械としての設計が性能・機能を支配するのだ。機構を考え、シミュレーションを行ない、試作し、走ってみて、問題点を抽出して設計変更し、必要なら再びシミュレーションにかけ、試作し、必要があれば部品は自作し、走ってみて、その結果を検討する......こういうループを延々と繰り返さなければ、優れたユニットは生まれない。

ガイドとボールジョイント。上の写真に移っている突起は左側（1／2速）ゲートのガイド。量産時には2速に入れた状態でMT側の位置を定め、そこからRゲート位置を逆算し調整用のシムを入れて固定する。

このガイドが付いたプレートを外すと、シフトレバー根元のボールジョイント部分が見える。ここに使うグリースによっても操作感は変わる。

前面衝突時の座屈点。MTの上に後端よりもオーバーハングして取り付けられているシフトユニット(前ページ参照)は、一定G以上の衝突時にTMから切り離されるよう設計されている。上の写真は裏側から見たリブ形状であり、ここもチューニングされている。

シフトユニットの防振。ユニット後端部分でMT本体とシフトユニットが締結される。ボルト穴にはゴム系ブッシュが入っているが、この硬度と振動減衰特性のチューニングは、シフトレバーの中に使われる防振ゴムと常にペアで実験が繰り返された。

撮影のためにリンク部のゴム製ブーツを取り外してもらった。このリンクは左右にわずかに首を振るが基本的には前後方向の動きを規制する。現物では逆さになり、リンクの下にシフトレバーがある。当然、ブッシュ封入型である。

駆動を担当するアクセルペダルは右足、同じく駆動をつかさどるシフトレバーは左手。「だからこそ同じグループが設計する」のだ。当然、手のひらで握るほうが余計な情報を拾ってしまう。

シフトレバーを裏返すと、そのつなぎ目には防振ゴムが入っている。車両のあらゆる振動が最終的にシフトレバーに入るのをここで防ぐ。どのような振動減衰特性にするかは、実際に走り込んで決めた。

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