FB型水平対向エンジンの生産技術ーー将来のスバルのための工場ーー

2020/02/16

これがFB型エンジンの大物部品。機械加工を終えて最終組み立てラインに入る前の様子だ。軽量設計のアルミブロックは、持ち上げてみると意外なほど軽い。鋳造精度は高く、型から出したままの部分も地肌はきれいだ。

ほぼ同じ敷地面積の工場が5棟並んだ大泉工場。第5工場の屋根のデザインが違う理由は、ホコリ対策と温度管理徹底のためにゾーン空調を取り入れたことだ。明かり取りの天窓は廃止された。リチウムイオン電池の生産もできそうなくらいクリーンで明るい内部である。

富士重工大泉工場の沿革

カムシャフトキャリアの加工について熱心に説明してくれるスバル製造本部群馬製作所第3生産技術部エンジン加工技術課の太田正章課長は、水平対向エンジンのクォリティを支える重要なスタッフのひとり。新工場の立ち上げは苦しくても楽しい作業だったのだろう。

第5工場での作業風景。床に敷かれたAGV用の軌道は変更も簡単で、ステーション数の増加やライン長の変更にもフレキシブルに対応できるという。

これが最終組み立てラインを流れる台車。エンジンと部品を載せて完成テスト工程まで移動する。この下にAGVがセットされており、走行は動力で行なわれる。

熟練の技を持つスタッフが、長いピンセットをつかってサービスホールからクリップを挿入する光景。ピンセットが周囲のネジ山に当たらないよう慎重な作業が求められるが、作業は素早い。今後の富士重工のエンジンからは、このシーンが消える。

このエンジンブロックはEJ型。丸く囲った部分がサービスホールで、コンロッドとクランクシャフトを締結した状態で左右ブロックを合体させ、この穴からピストンピンとクリップを入れる。普段はキャップで塞がれ、整備が必要なときキャップを外す。

EJ型のコンロッド（左）とFB型（右）の比較。FBでは分割線が斜めになる。下はFBのシリンダーヘッド部分。カムシャフトは別部品のキャリアに固定される。色分けされた部分がそれである。

左右ブロックを合体させ、両側のヘッド方向からピストン・コンロッドを入れ、斜め割りしたコンロッドをクランクシャフトに連結する。この角度でしかボルト締め作業は出来ない。

シリンダーヘッドの燃焼室側。吸気／排気のそれぞれふたつのバルブの間は機械加工で仕上げられる。バルブ穴の周囲、バブルシート部分も機械加工で高精度に仕上げられている。こうすることで燃焼室容積は設計どおりになりバルブの密着度も高まる。

機械加工工程にある洗浄機。加工機同様に自動段取り化されており、製品バリエーションの拡大に対応できる。リークテスターも同じように段取り自動タイプだ。

この写真はEJ型の機械加工工程。FB型では加工パレット方式になり、ブロックのデザインが変わっても混流生産が可能だという。FBにも過給仕様がある？

上がFB型の片バンクで下がEJ型（ピストンが入った状態）。過給を前提としたEJに比べデッキ部のデザインや水路の取り回しが異なるのがわかる。

機械加工部品にはすべてQRコードが刻印されており、製造履歴が管理されている。何月何日に部品がつくられ、だれが組み立て作業を担当し、完成テストの結果はどうだったのか、そのすべてをコードから追跡可能。もっとも、このような刻印に頼らなくても富士重工製の水平対向エンジンはすべてがシグネチャーグレード（製造者サイン入りのスペシャル品）だと筆者は思っている。

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