日本が先導する超希薄燃焼のインパクト——熱効率50％エンジンへの道

2019/11/28

（FIGURE：TOYOTA）

実際にあったドイツでの出来事。縦軸が電力供給量、色分けした帯が発電方法。いちばん下から水力、バイオマス、原子力、褐炭（ブラウン・コール）、石炭（ハード・コール）、重油、CNGの順だ。一方、山の頂上は太陽光、その下は風量。需要量に応じて太陽光と風力が動員され、運が良ければグラフ右端のように太陽光と風力の比率が大きくなるが、予定に組み込むことは難しい。

マツダが開発中の「常時プラグ点火+部分圧縮時着火」によるSPCCI方式で得られる効果。現在のスカイアクティブ・ガソリンエンジンで「最良」となる燃費領域が黄色、SPCCIで得られる「さらに燃費の良い領域」が橙色の部分だ。ドライバーが求める加速を行なっても燃費の良い領域から外れないことがSPCCIの「うれしさ」だという説明。

吸気工程で強いタンブル（縦渦）を発生させる。この高速気流は下降するピストンの冠面にぶつかり上昇気流になる。ピストンが吸気を引っ張ることでタンブル流になるが、これは意図的に作り出さなければならない。

吸気行程を終えて吸気バルブを閉じ（そのタイミングも重要）、圧縮行程でピストンが上昇を始めるときもタンブル流はシリンダー内で大きな輪を描いて回転する。たとえば、ここで燃料を噴射すれば燃料噴霧が気流に乗る。

圧縮行程が進み、ピストンが上昇を続けると、ピストン冠面にぶつかってできた小さな渦がタンブル流に乗ってシリンダー内に拡散される。この渦は極めて微細であり、その数はピストン上昇によってどんどん増えてゆく。

圧縮行程で小さな渦が増え、吸気全体に拡散されているときに点火エネルギーを与える。通常のスパークプラグではなくスーパー点火装置（詳細不明）を使い、そのアークがタンブルによって伸びながらエネルギーが伝わる。

タンブルはどんどん潰れて扁平な気流になるが、その過程でできた小さな渦にスーパー点火装置のエネルギーが蓄積され、燃焼手前の「火種」になる。この現象が同時多発し、混合気の温度は通常の圧縮以上に上昇する。

ピストンが上死点まで達し混合気の温度がもっとも高くなったところで、小さな渦のひとつひとつがほぼ同時に火炎核から火炎伝播へと形態を変える。ディーゼルエンジンに似た同時多発の燃焼にきわめて近い現象になる。

ガソリン燃焼の実験は小野測器横浜テクニカルセンター内に設置したラボで行なわれた。下の写真はラボ内。現在の燃焼解析は、左のようなシースルーの可視化シリンダーを使って行なわれる。外から観察・撮影することができる「見える化」の効果は大きく、エンジン技術の進化に大きく貢献している。仮説や推測がここでエビデンスになる。

慶應義塾大学大学院理工学研究科・飯田訓正特任教授。今回の成果を引き継ぎ、さらに発展させるための産学プロジェクトの必要性を飯田先生は訴える。欧州のエンジニアリング会社の多くは大学の研究室からスピンアウトした。果たして日本にも、サイエンスとテクノロジーを一体で考える組織が生まれるだろうか。

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