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８６
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帯電防止アルミテープの効能を体感する——トヨタ86に仕込まれた魔法

2019/12/31
Motor Fan illustrated編集部

空気の流れとボディ帯電。ボディの帯電と空気の流れの関係性を表した図。常にボディはプラスの電荷で帯電しており、同じ電荷を持つ空気とは反発しあう。ボディ表面の形状等純粋な空力の影響以外の要素で空気の流れが乱されてしまう。

ボディの部位別による帯電量。走行することで空気とボディの摩擦帯電により、さらに帯電量が増える。そこにアルミテープを貼ると、1/3以下に帯電量が減るという測定結果。

帯電の有無による空気の流速とボディ表面との距離との関係を表したグラフ。ボディ表面から5~10mm付近での差が大きい。この領域が境界層のなかでも乱流境界層と呼ばれる部分。ここから離れるに従って気流は乱流から層流となるため、帯電による影響度は低くなってくる。

バンパー帯電による気流変化

ガラス帯電による気流変化。帯電量の多寡による空気の流れの変化を実験した写真。帯電していない場合は明らかに空気がスムーズにボディ上を流れていく。ボディの表面積のうちかなりの部分を占めるガラス部では、特に顕著な差異が認められる。市販の新型86では、サイドドアガラスの前方下部にアルミテープが貼られる。

帯電防止アルミテープの現物。製造元は3M。誘電性を高める素材配合としているそうだが、決して特殊なものではないアルミ製。86以前にノア/ヴォクシーにはすでに採用済み。ミニバンのように車高が高く、空力的に欠点の多いボディ形状ではより効果が発揮できるという。ニュル24時間に出場した86にも装着され、空力的効果を実証済みということである。

走行テストではこのような定常の直線路における効果が高いことが確認された。試乗路の路面は結構荒れており、絶え間ない微振動にさらされるが、アルミテープをコラム下に貼ると、まるでタイヤやダンパーを替えたような体感となり、特にステアリングに伝わる振動が低減される。コラムが揺れないので、バルクヘッドからフロアにかけても振動も減った。一番の驚きはステアリングフィールの改善。

アルミテープ貼付による効果の狙い

メーカーによるアルミテープの貼付箇所による訴求効果は、上面(ウィンドウシールド下部)ではダウンフォース付加による安定性を、側面(バンパー・ドアガラス)では直進安定性と操舵応答性とされている。しかし、試乗で確認できた最大の効果は前輪周辺の整流が奏功したと思われる振動の低下と接地性の向上であった。外形的な工夫ができず空力パーツも付けられないタイヤハウス周囲で、いかに乱流が発生し、それが操縦安定性や振動特性に影響しているということが、実体験で確認されたのだった。

空力担当のエンジニア氏による試乗実車へのアルミテープ貼付作業。前後バンパーへの貼付は視覚的にもわかりやすくする意図があったと思われるが、市販車には貼られない部分。ステアリングコラムカバーへの貼付は試乗中に行なわれ、テープの有無による違いが確実に体感できた。貼る面積が多いほど効果は比例して高まるそうで「ボディ全体に貼っちゃえば？」の問いには「確かに効果は大きいですが、86というクルマの商品性を考えた時、あまり安定性を高めるのもどうかと」いう判断で、サイドガラスとコラムカバーのみの貼付とされている。

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