モード次第で凶暴な顔も!なのに毎日乗れる懐の広さが魅力|KTM・1290 SUPER DUKE R KTM・1290 SUPER DUKE R試乗|どんなバケモノかと思ったら、実はフレンドリーなヤツだった。
- 2019/12/21
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MotorFan編集部
KTMラインナップの最大排気量、1301ccのネイキッド「スーパーデューク」。いったいどんなバケモノなんだ!? と思いきや、意外と付き合いやすい力持ちだった。
TEXT●ノア セレン
PHOTO●山田俊輔
1290 SUPER DUKE R……2,036,100 円
とにかく小さい!
「いや、お願いしたのは790ではなく1290の方なんです」。とは広報車を引き取りに行った時の発言だ。「1290、これですよ」。
……そのぐらいとにかく小さいのにまず驚く。
1300ccのVツインエンジンを搭載する、DUKEシリーズの頂点モデル、1290スーパーデュークは想像している以上にとにかく小さいのである。
跨るとシート高はそれほど高く感じないのに足つきがもう一つなのはシートに幅があって足がまっすぐに下ろせないからだろう。シートのカドがももに当たるのがわかるのだが、これは逆にステップに足が載っている時は快適ということだし、シートの位置そのものはタンクの後ろに落とし込んであるような感じで、無理なくニーグリップが効くため車体との一体感は高い。
無理のないポジションにある比較的ワイドなアップハンドルの中央にはスマホのような四角いディスプレイの小さなメーターがあるだけで、その向こうにはもう何も見えなく、視覚的にも軽量だ。セルモーターを押してからわずかなタイムラグののち始動するエンジンは、メカニカルノイズこそ690シリーズなどより静かなものの、太鼓を連打するようなけたたましい排気音を放つ。小ささゆえに根拠のない自信が生まれつつあったのを、この狂暴な排気音でまた失ってしまう。大丈夫かな、乗れるかな……という気持ちと同時にドキドキがたまらない。出力特性のモードがスタンダードといえる「ストリート」に入っていることを確認して優しく発進した。
いきなり噛みつかれることはない
この小ささなのに170馬力以上、この軽さでこの刺激的なサウンド、といったアンバランスさに最初は構えていたが、とても軽いクラッチを繋いで発進すると驚くほど従順だ。ビッグツインのガオガオしたような特性が駆動まで繋がることはなく、3000rpm以下でも普通に流せてしまうほど従順。電子制御スロットルの中にはツキが激しすぎて使いにくいのもあるがKTMは総じてここら辺の制御が上手で、それはこの頂点モデルにおいても同様。低速での取り回しが多い都心の試乗でも持て余す感じが無いのが嬉しい。
最近のスポーツモデルやスポーツネイキッドは腰高な設定のものも多く、交差点など低速では「オットット」となるような場面も少なくないが、スーパーデュークは重心自体が低いとは言わないものの、タンクと一体感を感じられるシートのおかげか車体とライダーの重心が近いように感じ、そこに自信が生まれる。さらにクラッチミートがとてもわかりやすいうえ、ハンドル切れ角も十分確保されているため、入り組んだストリートでも本当にストレスが無いのだ。
しかし街道に出ると状況は一変。3車線のひらけたバイパスでアクセルを開けていくと弾け飛ぶように加速する。フロントがすぐにフワフワしだすが、そこから先にマクレ方向に行かないのは制御が入っているからだろう。とんでもない加速力ですっ飛んでいく。クイックシフターも優秀で、クラッチを使わずアップもダウンも思うままにシフト可能。息つかせぬ加速も鋭い減速も意のまま、全くタイムラグなくこなせてしまう。さらにスポーツモードを試すと本当に「荒れ狂って弾け飛ぶ」といった感じで怖いぐらい速い。公道でしっかりとアクセルを開け切ってレブリミットまで持って行くなんて言うのは不可能だと思う。
常用域ではマイルドとまではいわないまでもとてもフレンドリーなのに、ライダーのスイッチが入った途端に間髪入れず本来の「ビースト」が目覚める特性の共存をよくここまで作り込んだな、と感心したり、恐れおののいたり、欲しくなったり……様々な想いが駆け巡る試乗となった。
開けなきゃ普通。使えるネイキッド
とにかくすさまじい性能を持っているのは実感できたが、それよりも好印象を持ったのは「使える」度合いだ。無理のないポジションや快適なシート、文字こそ小さいが見やすいメーター、繋がり感のわかりやすいクラッチやどんな速度でも確実に、かつ安心して使えるブレーキなど、常用領域においても無理がない。タンデムシートでさえ、言い訳的に「とりあえず付けておきました」という最小限のものではなく、ちゃんと上面に平らな部分がありタンデムも荷物の積載も現実的。「速いけれど、現実的には使えないよね」という部分がほぼ見当たらない。あえて粗探しするなら、排気音が大きくて気が引け、信号待ちではアイドリングストップしていたことぐらいだろう。その点を除けば、いい意味で汎用性があって、ストリートバイクとして優秀に思えた。
DUKEシリーズの頂点モデルとして様々な最新機能が満載された究極のストリートネイキッド。価格も200万円ほどとハイエンドであることは間違いない。しかしこれは使いやすさ、絶対性能、カッコ良さ、汎用性などあらゆる角度から見て、誰にでも薦められるモデルだと思う。「ネイキッドの、カッコ良くて速くて、それでも毎日乗れるような、良いバランスのバイクないかなぁ」と思っているアナタにプッシュしたい、総合バランスが非常に高い良いバイクである。
フロントは一般的な17インチ。ブレーキはブレンボのモノブロックキャリパーを備え、ディスクも320mmと大径。絶対ストッピングパワーはもちろん、低速域でも使いやすい特性だ。
LC8と呼ばれる、水冷V型2気筒エンジンはなんと177馬力を発揮。最初の1290からこの型にモデルチェンジした時に燃費向上なども含めたアップデートがなされている。トレリス形状のフレームもKTMならではの特徴であり、懐の深いスポーツ性に寄与している。
190幅のタイヤはテールカウルより太いようなイメージで存在感がある。マフラーは腹下の箱を経て右一本出し。排気音は大きめだ。
フルアジャスタブルのリアサスはWP製。純正オプションではサーキット走行を見越したさらに調整幅の豊かなバージョンも用意。
片持ち式のスイングアームを採用。チェーンガードとマッドガードを兼ねる部品など、細部の仕上げがスマート。リアブレーキは対向式2ポッドのブレンボ。
周りがポジション灯として光り、左右に分かれたライトが特徴的。真ん中部分に走行風が通ることで、ヘッドライトの熱を逃がしているとか。
カラーだがかなり小さ目のメーターは当初見にくいかと思ったが、実際にはハンドル上部に位置するため、目からの距離は50センチといった所で小さな文字も意外と見えた。暗い所では色が自動で反転する。
リラックスでき、同時にパフォーマンスも堪能できる絶妙な位置のハンドル。電子キーとなっているためキーシリンダーはなくスマートだ。
WP製フォークはもちろんアジャスタブル。減衰力は圧側・伸び側共にフォークトップで、ダイヤルにて工具なしで行うことができる。
主要諸元
エンジン形式: 水冷4ストローク75°V型2気筒
排気量: 1.301cc
ボア×ストローク: 108×71mm
最高出力: 130kw(174hp)9,750rpm
1290SUPERDUKE R
最大トルク: 141Nm/7,000rpm
圧縮比: 13.6:1
スターター/バッテリー: セル式/12V12Ah
変速機: 6速
燃料供給方式: Keihin製EFI(スロットルボディ:56mm)
バルブ数/カムシャフト: 8V/DOHC
潤滑方式: 3基のインポートポンプによる圧力潤滑
エンジンオイル: Motorex、Power Synth SAE 10W-50
プライマリードライブ: 40:76
ファイナルドライブ: 17:38
クラッチ: PASC™スリッパークラッチ・油圧操作式
EGマネージメント/イグニッション: Keihin製EMSダブルイグニッション・RBW・クルーズコントロール付
トラクションコントロール: MTC(3モード・解除可能、オプション:TRACKモード)
フレーム: クロームモリブデン製トレリスフレーム(パウダーコート)
サブフレーム: クロームモリブデン製トレリスフレーム(パウダーコート)
ハンドルバー: アルミニウム、テーパー状φ28/22mm
フロントサスペンション: WP製倒立フォークφ48mm
リアサスペンション: WP製PDSモノショック
サスペンションストローク(F/R): 125/156mm
ブレーキ(F): Brembo製4ピストンラジアルマウントキャリパー×2、ディスクブレーキφ320mm
ブレーキ(R): Brembo製2ピストン固定キャリパー、ディスクブレーキφ240mm
ABS: Bosch 9.1MB 2チャンネル(コーナリングABSおよびSUPERMOTOモードを含む、解除可能)
ホイール(F/R): アルミキャストホイール 3.50×17”/6.00×17”
タイヤ(F/R): 120/70 ZR-17/190/55 ZR-17
チェーン: DID製 525 5/8×5/16"
サイレンサー: ステンレススチール製ブライマリーサイレンサー/アルミ製セカンダリーサイレンサー
キャスター角: 65.1°
トレール量: 107mm
ホイールベース: 1,482±15mm
最低地上高: 141mm
シート高: 835mm
燃料タンク容量: 約18ℓ
車輌重量: 約195kg(半乾燥)
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