【新車インプレ】ホンダCT125・ハンターカブを味見した感想。いくつか挙げてみた。
- 2020/08/22
- MotorFan編集部 栗栖国安
ハンターカブのコンセプトを継承して現代によみがえったCT125は、発表と同時に予約が殺到し、いまも納車待ちのユーザーが何千人と控えている大人気モデルだ。アウトドアテイストいっぱいのCT125は果たしてどんな走りを提供してくれるのか、期待に胸を膨らませてツーリングに出てみた。
REPORT●栗栖国安(KURISU Kuniyasu)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ホンダCT125・ハンターカブ……440,000円
力強さと頼もしさを感じさせる武骨なスタイルが街で目立つ
従来からのハンターカブをモチーフとしたスタイリングデザインは、現代風にまとめられているもののとくに目新しさを感じる要素はない。そんなふうに断言してしまうと身も蓋もないように思うかもしれないけれど、このハンターカブらしさが大きな魅力であり、ユーザーを惹きつける最大の要因なのだ。
そんな武骨なボディを形成するフレームは、スーパーカブC125の骨格をベースに、延長したリアフレームやヘッドパイプまわりの補強、ピボットプレートの追加などで剛性バランスの最適化を図った新設計のバックボーンフレームとなっている。
搭載されたエンジンは、先に登場しているスーパーカブC125やモンキー125と共通の空冷SOHC2バルブ単気筒で、最高出力は8.8psに抑えられているが、そのぶん低中回転域で太いトルクを発生する特性としている。これはCT125・ハンターカブの使用領域が、市街地から一般道、さらに林道をはじめとしたオフロード、荷物を積載しての登坂などが主流となるはずなので、理に適っている。始動方式はセル・キック併用で、自動遠心クラッチ式の4速ミッションを採用している。
さらに特徴的なのは、ハイマウント吸気ダクト採用のエアクリーナーとアップマフラーによる専用の吸排気システムとした点だ。実際にそういう場面に遭遇するかは別にして、浅めのところであれば渡川走行もできてしまうというわけだ。
ブレーキにはハンターカブ初のディスク式が採用。フロント側にはABSを標準装備している。またフロントフォークも一般的なバイクと同様のトップブリッジとテレスコピックフォークを採用していて、最低地上高は165mmを確保している。こうした装備からもCT125・ハンターカブは、自然の奥深くまで入り込めるライトスクランブラーだということが理解できる。そういう点からも、林道ツーリングを身近にしてくれそうだ。
「ちょっと山へ」そんなのんびりツーリングに最適な走行性
カブシリーズの中では最大級のボディを持っているので、見るからに安定感がある。大型で肉厚のシートに跨りアップハンドルに手を添えると、目線の高さにオフテイストを実感する。800mmのシート高は、シートに腰を下ろして前後サスペンションが沈んでも足が着きにくい。ただグラッとしたときにも重量を感じないので不安はない。車重は120㎏とこのクラスのバイクとしては重めだが、取り回しにつらさは感じない。予想通り、ポジション的にはゆったりと乗れるタイプで、街乗りはもちろんツーリングに最適だ。
それにしても、荷台と呼んだほうがピッタリの頑強で大きなリアキャリアに圧倒されそうだ。これならキャンプ道具一式がラクラク積める。CT125・ハンターカブを目の前にすると、だれもが旅心を刺激されるはずだ。そんなふうに、乗りたいと思わせるところは大きな魅力だと思う。遊びの要素が多分に盛り込まれていることに加え、原付二種ならではの手軽さがCT125にはあるのだ。
始動すると、排気音がはっきりと耳に届く。アップマフラーであることに加えサウンドそのものも迫力がある。音量があるといってもそれは、他車に存在を認知させるのに有効な大きさで、早朝の出発に気を遣うほどではない。いずれにしても、バイクは音がないと魅力が半減してしまう。静粛性は大切だけど程度問題だ。そういう意味でCT125のサウンドは合格である。
走り出してまず感じるのが、低速域での力強さだ。クラッチ操作がないので、シフトペダルを踏みギヤを1速に入れてアクセルを開けるだけなのだが、しっかりと車に先行できる。しかもそれほど高回転まで引っ張らないでシフトアップしても加速性は十分。これなら市街地もスピーディに走ることができる。実用的にはまったく不満はない。しかし山道に入り、登りがきつくなってくると回転の上昇を鈍く感じてしまう。たとえば、クロスカブの110ccエンジンに比べて10%ほどパワーが上なのだが、もうちょっとトルクが欲しいなぁというのが正直なところ。ワインディング走行を楽しむのであれば、低めのギアで高回転を多用する必要がありそうだ。
走行性は、しっかりとした直進安定性と素直で軽快なハンドリングを発揮してくれ、そこそこスポーティな走りも楽しめる。基本的に飛ばすバイクじゃないので、クセのない操縦性ならそれでOK。小回りやUターンもしやすいから狭い場所へも入り込んでいける。今回は砂が浮いた舗装林道や所どころ荒れたダート林道を少しばかり走ってみたのだが、恐怖心を抱くことなく走ることができた。オフロードバイクというカテゴリーで考えればCT125・ハンターカブの車体はコンパクトなので、荒れたダートやぬかるんだところも、それこそ二輪二足で走り抜けることができる。標準装備のタイヤはオン・オフタイプだが、林道ツーリング中心に使うなら、IRCのFB3に換装する方法もある。このブロックタイヤに変更することで、かつてのCT110イメージに近づけることもできる。
ブレーキは安定した効きを示してくれる。さすがディスクブレーキである。浮き砂のある林道でフロントブレーキを強くかけてみたが、ABSが作動し滑ることはなかった。ABSを作動させるのは決して褒められた走り方じゃないが、いざというときの保険として心強いのは事実だ。
サスペンションは良く動いてくれていた。とくにフロントはストロークが大きめでソフトな作動性を見せる。結果として快適な乗り心地を与えてくれた。そんな良好な作動性を発揮する一方、ワインディングなどのオンロードをちょっとスポーティに攻めたときにはしっかりと踏ん張ってくれて、フラついたりヨーイングが出るようなことはなかった。まあスピードが大したことないというのもあるけれど、不安定な動きにならないのはいい。
ところで、CT125・ハンターカブにはソロシートが装備してあり、後部には大きな荷台が装着してある。スーパーカブも含めてこうした仕様はお決まりなのだが、二人乗りもできるようになっている。荷台に簡素なリアシートを取り付けることになるわけだが、はっきりいってパッセンジャーに快適な居住性はない。しかもCT125のリアステップは、マフラーのある右側が異常に外側に張り出している。そう左右非対称なのだ。マフラーのぶん右足が外側に開いてしまうのはわかる。それに対処するためステップを外側にしたのはいわば当たり前だ。でも見た目はカッコ悪い。現実的にタンデムするユーザーはほとんどいないと思うが、製品としてはスッキリさせてほしかった。
ともあれ、CT125・ハンターカブの登場によって原付二種クラスがますます注目を集めるのはうれしいことだ。しかも年代を越えて人気を集めているのだから、今後もCT125・ハンターカブから目が離せない。
CT125ハンターカブ 気に入ったところ
・前後ディスクブレーキが林道でもしっかり効いた
・フロントサスペンションがよく働く
・街もツーリングも快適なゆったりポジション
CT125ハンターカブ 気になったところ
・もう少しだけ低速トルクが欲しい
・シート高が高く、足着きは他のカブが優る
主要諸元
車名・型式: ホンダ・2BJ-JA55
全長(mm):1,960
全幅(mm):805
全高(mm):1,085
軸距(mm):1,255
最低地上高(mm):165
シート高(mm):800
車両重量(kg):120
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):
61.0(60km/h)<2名乗車時>
67.2(WMTCモード値)<1名乗車時>
最小回転半径(m):1.9
エンジン型式:JA55E
エンジン種類:空冷 4ストローク OHC 単気筒
総排気量(cm3):124
内径・行程(mm):52.4×57.9
圧縮比:9.3
最高出力:6.5kW [8.8PS] /7,000 rpm
最大トルク:11N・m [1.1kgf・m] /4,500 rpm
始動方式:セルフ式(キック式併設)
燃料供給装置形式:電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):5.3
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式: 常時噛合式4段リターン(停車時のみロータリー式)
変速比:
1速:2.500
2速:1.550
3速:1.150
4速:0.923
減速比(1次/2次):3.350/2.785
キャスター角:27°00′
トレール(mm):80
タイヤサイズ(前/後):80/90-17M/C 44P / 80/90-17M/C 44P
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク
懸架方式(前/後):テレスコピック式/スイングアーム式
フロントフォーク・ストローク:110mm
フレーム形式 :バックボーン
製造国:タイ
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