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飛ばしたくならない大人のバイク! そんなMEGURO K3で軽めの200km試乗が楽しかった。

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半世紀以上も時代の空白を超えてリバイバルデビューを果たしたメグロ・ブランド。2021年2月1日に新発売された話題のK3に試乗した。ベースモデルがW800であることは承知の上だが、何とも懐かしい時代にタイムスリップしたかのような乗り味はとても新鮮。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●カワサキモータースジャパン

ミラーコートブラック×エボニー

カワサキ・MEGURO K3.......1,276,000円

 MEGRO K3の発表会は昨年11月19日に東京のカワサキプラザ等々力で開催。詳細は既報の通りだが、W1やZ1へと続くカワサキ4ストロークエンジン車の礎を築いたモデルとして、また1960年前後に高い評価を集めた重量級モデルの代表格としても、その存在感には目を見張るものがある。
 ごく簡単に振り返っておくと、目黒製作所が開発したメグロ・スタミナK1が初代モデルで、これは英国車のBSAを手本に開発された。
 そして1964年にカワサキ(当時は川崎航空機工業)と統合後の1965年に第二世代モデルとして投入されたのがカワサキ500メグロK2だった。これが後のW1(650)に続き、やがて新世代のW650、W800へと繋がっている。

 さて、現代に蘇えったMEGURO K3 は、カワサキ・W800がベースになっている。フロント19、リヤ18インチのスポークタイプを採用したホイールサイズも共通。キャスター/トレールや前後サスペンション・ストロークも同じ。
 ただ、明確に異なっているのは装備されたパイプバーハンドルがタイトなW800(幅は790mm)に対してK3はとてもワイドなタイプを選択。その幅はW800 STREETと同じ925mm。但しグリップ部の絞り(開き)具合は異なり、全高に関しても、それよりも10mm高い1130mmある。
 搭載エンジンはミッションのギヤレシオも含めてどれも共通。従って、インプレッションはW800と重なってくることは間違いないだろうが、前述の差異による微妙な違いが演出されている事もまた確かである。
 
 一方価格設定の違いも明確で110万円のW800に対してK3は127万6000円。プレミアムモデルとして価値ある商品に仕上げられていることが理解できるだろう。
 クロームメッキの輝きを誇ったかつての燃料タンクを彷彿とさせる拘りの銀鏡塗装が施され、艶ありのブラックも上手く使われている。手作業で丁寧に5色ものカラーで作られるエンブレムも贅沢な雰囲気。
 そしてもうひとつ見逃せないのがKawasaki Care込みの価格設定となっている。
 これは新車登録後の1〜35ヶ月後までに6回にわたる無償点検サービスが含まれている。内訳には2回の法定12ヶ月点検や、3回のエンジンオイル交換と同フィルターの交換も含まれ、オーナーは安心してベストコンディションを保つことができると言うわけである。

穏やかで頼れる乗り味には確かな心地よさがある。

「カワサキ最古にして最長のシリーズモデル」メグロK3に試乗した。筆者自身、メグロブランドのバイクに乗るのは、およそ半世紀ぶりの事。これまで多くのバイクに試乗してきたが、何だか特別に気分が高揚する。
 もちろん以前に試乗した友人のK2とはエンブレムのデザインを除いて全て別物。しかし艶のあるブラックと銀鏡塗装が施され、タンクにニーグリップラバーを持つ仕上がりでメグロらしい雰囲気が巧みに演出されていると思う。
 ラバーブーツを備えたテレスコピックフォークや、あえてデザインの古いハンドルスイッチが採用されている点もユニーク。個人的な感想としては、ヘッドランプハウスにメーターが組み込まれれば、なお良かったのではと思ったが、全体的には見事にメグロの雰囲気が醸しだされている。
 フェンダーも含めて鉄の塊感のある仕上げは、車両重量で227kg。今でこそ排気量はミドルクラスのそれだが、古き時代の重量車を彷彿とさせるには十分な貫祿がある。

 早速跨がると、思い切りワイドなアップハンドルのおかげで、バイクを起こす時や車体を取り回す時の感触が重過ぎない。それなりのズッシリとした手応えはあるが、思いの外操舵力が軽く感じられるからだろう。
 いわゆるスポーツバイクと比較するとステップ位置はやや前にあり、両足を地面に付くとふくらはぎの内側にステップの先端が軽く触れる。シート高は高くないが、ステップも高くはないので、乗車時の股はやや前下がりになり、自然と上体が起きた姿勢で乗れる。
 ワイドなアップハンドルも相まって、古い言葉を借りれば「殿様乗り」的な感覚で、これが古きスポーツバイクのスタンダードだった事が思い出された。 
 
 エンジンを始動すると低く乾いた排気音が轟くが音量は決して煩くない。始動直後は高めだが、安定後のアイドリングは800~900rpm程度。バイクのエンジンで1,000rpm未満の落ち着いたアイドリングを披露するモデルはそう多くないだけに、その落ち着いた雰囲気が先ずは印象深い。
 低くても安定して回り続けるには、それなりにマスの重いクランクが選択されていることを意味している。
 5速ギヤをローにシフトして、静かにスタート。早々にセカンド、サードへとシフトアップして行くと、ギヤレシオが比較的ワイドな事も影響して、増速してクラッチミートする度にグイ、グイッと力強い加速を魅せる。
 オ~コレコレ! かつて乗ったK2にも共通するこんな乗り味があった事を思い出させてくれた。
 ロングストロークエンジンらいし中低速トルクの豊かさ。回転を上げなくても力強い。そんな出力特性が今ではとても新鮮かつ魅力的に感じられたのである。
 なんともゆったりとしたリズムの中で悠々の図太い乗り味を発揮してくれる。その穏やかさ故、ロー発進後は1速飛びの増速で、1・3・5(トップ)という不精した走りも難なくごく自然とこなせてしまう。
 走り自体は決して遅いわけではないのに、乗り味はとても悠長で穏やかな気分に包まれるのが、何とも心地よいのである。
 Uターン等のハンドリングも素直で軽快。速度をあげるに連れて、直進安定性が徐々に増してくる感覚も全体の雰囲気と上手く調和する。
 上体の起きた姿勢は、前方視界が広く解放感がある。前方からの走行風を一身に受けるが、その風が心地よいと思える範囲のスピードで走れば実に快適。逆に言うと快適と思える速度でクルージングするから、気が急くことも皆無。
 コーナリングもブレーキングも余裕を持った走りに終始する。そんな大人の走りへ自然と導かれ、ストレスなく気分良く走り続けられる。そんな雰囲気と乗り味がとても新鮮だった。
 ポジションの関係も含めてタンデムライディングも快適そう。常にマイペースで平穏な心地よさを満喫しながら散歩走や、ツーリングにもってこいの相棒だと思えてくる。
 実際、試乗車を返却に行くさい、ついつい遠回りしてしまった程だったのである。
 
 ちなみにローギヤで5,000rpm回した時のスピードは50km/h。5速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は3,500rpm強。120km/hでは4,200rpmだった。
 また市街地から高速と郊外を含めた実用燃費率は、走行距離205kmで22.9Km/L(満タン法計測)だった。特にエコランをしたわけではなく、カタログデータのモード値である21.1km/Lを凌ぐ好データが得られたのは、中低速トルクに優れる穏やかな出力特性故のことだろう。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高は790mm。ご覧の通り両足はベッタリと地面を捉えることができる。上体が起きた姿勢で乗れるので素直に足が下へ伸びてバイクを支えやすい。

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