第一印象、こりゃいいなぁ。キビキビ走るしライポジもグッド!【BMW C400GT試乗】
- 2021/05/11
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中村友彦
メカニズムに目新しさは感じられないし、正直言って乗り味に驚きや感動はなかった。とはいえ、BMWにとって第4のスクーターとして開発されたC400GT/Xは、ライバル勢とは一線を画する、絶妙なバランスを備えていたのだ。
REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●佐藤恭央(YASUO Sato)
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BMW・C400GT・・・92万7000円(グレーメタリックはプラス6000円)
近年のBMWの勢いを象徴するシリーズ
目新しくても、革新的ではない?
どんな状況でもストレスを感じない
ディテール解説
■主要諸元
BMW・C400GT・・・92万7000円(グレーメタリックはプラス6000円)
近年のBMWの勢いを象徴するシリーズ
近年になってとてつもない勢いで、ラインアップを拡大しているBMW。その象徴と言えるのが、2012年から本格的な展開が始まったスクーター、アーバンモビリティのCシリーズだ。何と言っても20世紀のBMWにとって、スクーターはまったく無縁のジャンルだったのだから。もっともそういう見方をするなら、サーキットでの速さを徹追及したスーパースポーツのS1000RRや、ストレート6ならではのシルキーさが満喫できるK1600シリーズ、ミドルパラレルツインのFシリーズだって、かつての同社の頑固一徹な姿勢を考えれば(1990年代のBMWのエンジンは、フラットツイン、縦置き4気筒、単気筒の3種のみ)、相当に縁遠いジャンルだったのだが。
1980年代以降のBMWは、車名の最初の英字でエンジン形式を表すことが通例。大昔から不変のR=フラットツインに加えて、K=並列6気筒、S=並列4気筒、F=並列2気筒、G=単気筒、という図式が最近では定着しているものの、Cシリーズだけは他とは異なる命名を選択。650は並列2気筒、400は単気筒、エボリューションは電動モーターを搭載しているし、車体構成も各車各様なのだ。他のシリーズの整然とした構成を考えると、この事実はBMW製スクーターの王道が、まだ明確に定まっていないことの証明なのかもしれない。
目新しくても、革新的ではない?
BMW製スクーターの原点となった2000~2002年型C1(エンジンは125/175cc単気筒)が、ヘルメット無しでの走行を前提にして、ライダーを保護する独創的なアルミ製パッセンジャーセルを導入していたこと、2012年に登場したC600GT/Sport(2016年から650となる)が、メガスクーター初の270度クランクや倒立式フォーク、片持ち式スイングアームなどを採用していたことなどを考えると、2018年から発売が始まったC400GT/Xは、誤解を恐れずに言うなら、ごく普通のスクーター……?という印象である。
と言うのも、C400GT/Xのパワーユニット+後輪駆動はスクーター界の定番であるユニットスイング式で、フレームにも特に目新しさは感じられないし、正立フォークの支持はアンダーブラケットのみ、リアはオーソドックスなツインショックなのだ。
もっとも、不快な振動を抑制するディカップリグシステムや、デビュー時はクラス初の機構だったラジアルマウント式フロントキャリパー、日本仕様では標準装備となるグリップ/シートヒーター、シート下の収納スペース容量が可変するフレックスケース、オプション設定のTFTフルカラーディスプレイなど、目新しい要素はいろいろと存在するものの他のBMWで頻繁に感じる革新的な要素がこのモデルは希薄なのである。
どんな状況でもストレスを感じない
さて、ここまで文章を振り返ると、何だか盛り上がりに欠ける展開になってしまったけれど、今回の試乗で久しぶりにC400GTを体感した僕の第一印象は、こりゃいいなあ……だった。兄貴分のC650と比べれば格段に軽くて親しみやすく、それでいて250cc以下のスクーターを比較対象とするなら、圧倒的に速くて車体が安定しているC400GTが、この日の僕にはバランスが絶妙で、すごくいいところを突いている!と思えたのだ。
もちろんその印象は、排気量と車格だけが原因ではない。このモデルはまずライディングポジションが秀逸で、市街地の移動がイージーなだけではなく、ツーリングとスポーツライディングの両方が楽しめそうだし、車体は大前提として抜群の安定性を備えながらも、ここぞという場面での動きは予想以上にキビキビ。
エンジンに関しては、右手の操作に対する応答遅れがほとんどないこと、振動が少ないことが好感触で、その背景にはCVTとディカップリングシステムの緻密なセッティングがあるようだ。
現在の日本市場でC400GT/Xのライバルに相当する車両は、スズキ・バーグマン400、SYMマキシム400くらいしか存在しないものの、海外ではホンダ・フォルツァ350、ヤマハXMAX400などが、好敵手として認知されている。そしてそれらに排気量が異なる兄弟車が存在するのに対して、C400GT/Xはすべてが専用設計。もちろん、兄弟車が存在するのは決して悪いことではないけれど、今回の試乗を通して僕が感じたバランスの絶妙さは、専用設計だからこそ得られたのかもしれない。
なお兄弟車……と言うより、一卵性双生児として開発されたC400GTとXの主な相違点は、外装一式と灯火類、シートなどで、エンジンや車体の基本構成は共通である。ただし2台を同条件で乗り比べると、しっとりした乗り味のGTはツアラー指向、車重がGTより10kg軽いXはスポーツ指向、と感じる人が多いようだ。
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