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SOCSってなんだ? スズキが投入した新油冷システムのこと!【スズキ・オイル・クーリング・システム】|バイクにまつわるヨコ文字・略語解説

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熱くなる部位を冷却するために合理的なオイル通路が設けられている。

今回の略語解説は、2019年の東京モーターショーで公開されて話題を呼んだ、「油冷エンジン」を取り上げてみた。油冷と言えばスズキお得意の冷却技術として定着、古くは1985のGSX-R750に端を発す。もっと言えば古き航空機エンジンに活用例がある事でも知られている。しかし新時代の油冷は、これまでとは異なる方式なのでここにクローズアップしてみた。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 スズキ

SOCS とは?

Suzuki Oil Cooling System (スズキ・オイル・クーリング・システム)の略称。

 ざっくり言うとエンジンの冷却方法は空冷方式と水冷方式がある。これまた簡単に言うと、普通のエンジンは空冷でも十分に冷却を賄うことができる。一方高性能を追求すると、水冷方式が必須となる。

 SOCSは、エンジンの燃焼室周りにオイルジャケットと呼ばれる冷却用回路を設け、そこにオイルを通す事で冷却を担う「油冷」方式である。潤滑とは独立して、冷却を目的とする別回路が追加されており、オイルクーラーで冷やしたオイルをオイルポンプによって速い速度で循環させている。

見た目は水冷のようだが、冷却水用のラジエターは存在しない。
ジクサー250と同SF250に搭載された新開発エンジン。
SEP(スズキ・エコパフォーマンス)と呼ばれる単気筒エンジンはSOHC4バルブ方式を採用。

ジクサー250を例に詳細解説

カットエンジンを見ると、シリンダー頂天部とシリンダーヘッド部の周囲にオイル通路の存在が見える。
 エンジンは内燃機関と言われる通り、気筒内で爆発燃焼を起こして大きなエネルギーを発生させる。その圧力でピストンが押し下げられ、それを繰り返す往復運動をクランクで回転運動に変換して動力を得ている。
 当然ながら燃焼爆発には発熱が伴い、金属で作られる各部品が焼き付く事なくスムーズに機能するためには、潤滑と冷却が欠かせないのである。

 ご存知の通り、潤滑はエンジンオイルが担い、冷却方式は一般的に空冷か水冷のどちらかが採用されている。
 空冷の場合は構造的にシンプルだが、放熱面積を稼ぐ為に大きな冷却フィンが設けられ、それがエンジンの外観デザインも左右する。
 水冷はウォータージャケットと呼ばれる通り、シリンダーやシリンダーヘッドに水路を設け、冷却水(不凍液・ロングライフクーラント)が通る。熱せられた水は、放熱効果を持つラジエター通過時に空気で冷やされ循環する。水の沸点は100℃であり、エンジンの温度上昇を安定的に抑えることができ、冷却効率に優れている。
 温度上昇が抑えられるなら、ハイパワーを稼ぐ(高温発熱)ことも許容出来る。つまり高性能の追求には水冷化が必須となると言っても過言ではないのである。
 ちなみに冷却性能は熱伝導率に関係し、水冷、油冷、空冷の順に高いのである。油冷エンジンのパイオニアとして知られるGSX-R750も後の高性能化に伴い水冷方式が採用されている。

仕組み

 SOCSはズバリ、スズキが開発した最新のオイル冷却システムの呼称である。
 潤滑オイルの噴射部位と吐出量、そして流速を高めた古き油冷システムとは決定的に異なっており、潤滑とは別に冷却を目的とする独立した回路を設けた点に違いがある。

 エンジンが燃焼爆発するタイミングは、ピストンが上死点付近にある時で、発熱はスパークプラグ周辺からシリンダーヘッド(燃焼室)全体に及び、上死点域のピストンクラウン周辺シリンダー部への影響も大きい。
 その部位を効果的に冷却するため、ぐるりと専用オイル通路が設けられている。ヘッド部やシリンダ周囲(頂天部)に設けられたオイルジャケット壁面の中には、バウンダリーレイヤーブレーカーと呼ばれる凹凸の突起が作られ、あえてオイルの流れを乱すことで熱伝達を向上させ、冷却効率が高められている。

●補足
 ジクサー250に求められたのは、環境性能の高い省燃費性能に優れたエンジンであり、フリクションロスの低減化が徹底追求されたSEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)エンジンである。
 いわゆる超高性能タイプではないが、10.7対1と言う、それなりの高圧縮比と太く柔軟な高トルクを稼ぎ出しており、安定した冷却性能を求めてSOCSの開発に帰結したと言う。
 つまり水冷に頼る程ではないが、空冷では、使い方によっては冷却不足が懸念される。そこに程よく機能してくれる新アイテムとして油冷が再登場したと言うわけだ。
 考え方としては決して驚く程の技術ではないが、巧妙なオイルジャケットを設けたシリンダーの量産化を実現した製造技術の高さは侮れないのである。
 またユーザーにとっても、空冷では得られない高性能と耐久性に対する安心感が得られる。しかも基本的に密閉構造のオイルラインとオイルクーラーが装備されただけなので、水冷の様なメンテナンスを必要としない点や、コンパクトでローコストに仕上げられた点が見逃せない魅力となるのである。

ご覧の通りSOCSは比較的シンプルな構造で成立している点も見逃せない。

●用語解説こぼれ話。
 油冷エンジンと言えば、1985年にデビューしたGSX-R750を思い出す人も少なくないだろう。高性能エンジンはどんどん水冷化されていた時代に登場したSACS(Suzuki Advanced Cooling System)は異色かつ合理的(軽量)な方式として話題を呼んだ。発表会当日開発責任者は、真夏のある日の話として「庭で勢いよく出る水道水に手を当てて涼を得る光景から閃いた」と、油冷エンジン開発に関する逸話が紹介された。後に筆者はこれが実話か、作り話なのかを発言されたご本人に尋ねたことがあるが、笑顔だけで返された事が思い出される。(^_^)

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