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Harley-Davidson FAT BOB 試乗記 from editor's room……のつもりがハーレーダビッドソンの近未来の話に 最新のハーレーに乗って、ビューエルに思いを馳せる

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トラディショナルなデザインが主流のハーレーダビッドソンのなかにあって
ひときわ先鋭的でスポーティなアピアランスを見せるFAT BOB。
旧来からのハーレーファンではない、
スポーツバイク好きも引き寄せる魅力を持つ意欲的モデルだ。
だが、そんなFAT BOBにハーレー門外漢の筆者が乗ってみれば、
あらぬ方向へ妄想と期待が膨らんでしまうのだった。

TEXT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

ハーレーファン以外も引き寄せる鮮烈なアピアランス

 カッコいい、とにかくカッコいい。

 デザインの善し悪しというものは多分に主観によって決まるものなので、ここで多くを語ってもたいした意味はない。ただ、大排気量Vツインエンジン、クルーザースタイルのシルエット、ティアドロップ型ガソリンタンクといった、いかにもハーレーダビッドソンらしい基本構成を守りつつ、最新スーパースポーツもかくやと思わせるような細部の前衛的デザインが鮮烈な存在感を放っている。旧来からのハーレーファンではない人ほど、「これは!」と目を惹きつけられてしまうのではないか。

テールランプがない? 実は左右ウインカーのそれぞれ内側の半分がテールランプになっていて、外側の半分がウインカーになっているのだ。
ヘッドランプはLEDがズラリと横長に並ぶ抜群のセンス。ハーレーらしい重厚感と、ストリートファイターのような先進性が見事に共存している。
ガソリンタンクにマウントされた一眼式メーターはハーレーの伝統。しかしメインの文字盤は速度計ではなく回転計であり、速度はデジタルで表示されるところが現代風だ。
フロントフォークは倒立式。フロントブレーキはフローティング式ダブルディスクで、モノブロックキャリパーを備える。
深くえぐられたシートはいかにもアメリカンだが、小ぶりなリヤシートはまるでスーパースポーツのようにも見える。

とにもかくにもハーレーダビッドソンの魅力はエンジン

 熱狂的なファンの方に問えば、ハーレーダビッドソンの魅力などいくらでも出てくるだろう。たぶん一晩では語り尽くせないのかも知れない。

 一方で門外漢の筆者にとってみれば、なんといってもハーレーダビッドソンの一番の美点は、大排気量Vツインエンジンがもたらすトルク感、鼓動感、そしてサウンドに尽きる。

 45度という狭いバンク角による特徴的な不等間隔点火がもたらす「ダダッ、ダダッ、ダダッ」というリズムは独特で、バカでかいピストンが上下に動き、吸気、圧縮、点火、排気を行っているサマが頭に浮かぶ。さらにはアクセルを捻ったその刹那、間髪入れずにリヤタイヤがダダダッと地面を力強く蹴り上げる感覚も痛快だ。

 このエンジンのためだけにハーレーダビッドソンを買ってもいい。乗るたびに筆者はそう思うし、おそらく多くのライダーが同じ意見を持っているだろう。

ハーレーダビッドソンの魅力を決定づける45度V型2気筒エンジン。試乗したのは1868ccもの排気量を誇る「ミルウォーキーエイト114」なるエンジンを搭載した仕様。FAT BOBにはほかに「ミルウォーキーエイト107(1745 cc)」も用意される。

問題も多いのに、この魅力には抗えない

 しかしだ。ハーレーダビッドソンに乗ると、筆者はいつも同じ問題にブチ当たる。

 まずどうにも浅すぎるバンク角だ。本当に穏やかに曲がったつもりなのにガガガーとステップを擦ってしまって驚かされたことは一度や二度ではない。そのうちステップを擦らないことばかりに気を遣ってしまい、本来の気持ちよさを存分に味わえなくなってくる。ハーレーダビッドソンはあくまでアメリカ大陸に主眼を置いて設計されており、だからこそ味が濃く、その雰囲気を日本でも味わえるのが大きな魅力であることはわかっている。だからバンク角についてとやかく言うのは粋ではない。……粋ではないんだけれど、自分が日本で乗ると擦ってしまうのは事実なんですスイマセン。

 腰をずらして積極的にコーナリングすることこそバイクの醍醐味と信じている自分にとって、それができないのも残念。そしてほとんどのモデルの場合、果てしなく前方にあるステップのおかげでスタンディングができず、長距離ツーリング時にお尻を休ませることができないのも残念。

「だったらハーレーになんか乗らなきゃいいだろう。ほかにバイクはいっぱいあるんだし、そもそもハーレーには熱狂的なファンが世界中にいるのだから、買いもしないオマエがそんなつまらないことで文句を言うのは筋違いだ」

 ここまで読んでくださった多くの人、いや、ほとんど全員がそう感じていらっしゃることだろう。ただ、だったらハーレーに乗らなければいい、と簡単に諦めきれないほどの魅力をFAT BOBに乗って知ってしまったのだ。

・やっぱりあのVツインはたまらなくスバラシイ!
・FAT BOBのデザインは最高にカッコいい!

 中学生みたいなコメントで申しわけありませんが、バイクを好きになる理由なんてそんなものです。 

ビューエルがあったじゃないか!

 つまり、ハーレーダビッドソンのエンジンを積んだ、最高に前衛的なストリートファイターがあればいいのである。と思ったら、あったじゃないかまさにそんなバイクが。そう、ビューエルである。

 1980年代から90年代にかけて人気を博したビューエルには、当時から畏敬の念を抱いていた。いつか乗りたいと憧れていた。しかし90年代末にハーレーダビッドソンに買収されたかと思いきや、いつの間にか消滅。ネットで中古車を探したこともあったけれど、詳しい先輩方はみんな異口同音に「ビューエルはやめておいたほうがいい」とおっしゃる。そう、自分、乗ったことがないんです。諸先輩方に言わせれば、とにかくピーキーで乗りにくいとのこと。「もっとやりようがあるだろうに」と、その車体構成やセッティングに疑問を抱いている人も多かったらしい。

 しかし時代は飛んで2018年である。今なら扱いやすく、気持ちよくコーナリングできて、45度Vツインを心ゆくまで味わえ、そしてFAT BOBの兄弟車のようなカッコいいストリートファイターが作れるのではないか。

ハーレーダビッドソンのVツインを搭載し、見た目はバチバチのストリートファイター。まさに筆者にとって理想的な成り立ちを持っていたビューエル。

2020年にハーレーダビッドソン製ストリートファイターが誕生する!

 ……などと妄想していたところ、7月末にハーレーダビッドソンが新たに中期経営計画を発表した。そこで明らかにされた販売予定モデルのなかに、なんと975ccのストリートファイターが入っていたのだ!

 排気量のほかは詳細は不明だが、写真を見る限りかなり市販型に近い仕上がりで、ほぼこの姿で発売されると思って間違いなさそうだ。デビューは2020年とアナウンスされている。これは期待するなというほうが無理な話だ。

 ただ、もしかしたらなんの前フリもなくいきなりコイツをリリースしていたら、我々はキョトンとするばかりだったのかもしれない。FAT BOBでスポーツバイク好きや最新デザインを好むユーザー層の心を軽く掴んでおいて、彼らの気持ちがハーレーダビッドソンに向いてきたところでドカンとストリートファイターを出す。

 だとすれば、筆者はそんなハーレーダビッドソンの策略にまんまと乗せられてしまったということか。オーケー、そんな策略なら大歓迎だ。東京オリンピックと同じくらい楽しみだぞ。


 

バンク角が45度かどうかはよくわからないが、水冷Vツインであることは明らかだ。倒立フォークやラジアルマウントのモノブロックキャリパーなど、本気で走りを追求していることがヒシヒシと伝わってくる。

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