「優れる快適性にエキサイティングな面白味をプラスし、もっと遠くへと旅に出たくなる」 BMW F850GS/試乗レポ「F750GSと同じ853 ccだが、その個性は大違い!」
- 2018/12/29
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青木タカオ
各メーカーが重要視するアドベンチャー600〜1000ccのセグメント。シーンを牽引するのは、もちろんBMWのGSシリーズだ。オフロード性能も高い次元で確保したオールラウンダー「F850GS」は、なかでも大本命と言えよう。先にここにアップした「F750GS/試乗レポ」と合わせて読んでいただきたい。
REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
BMW F850GS……1,541,000円〜1,789,000円
人気のミドルクラスアドベンチャーを牽引していく大本命!!
フルモデルチェンジした「F750GS」と、スチールシェル構造のブリッジフレームや逆回転270度クランクのパラレルツインエンジンといった基本構成を共通としながら、足まわりを前後アルミ製のクロススポークホイールとし、前輪タイヤを走破性の高い大径21インチとしたのが「F850GS」だ。
「F750GS」のフロントフォークはインナーチューブ径41mmの正立式で、ストローク量は170mmだが、「F850GS」では43mm倒立フォークとなり、ストローク量も230mm(スタンダード210mm)と長い。リアサスペンションも150mm→215mm(スタンダード195mm)に伸ばされ、試乗したプレミアムライン(最上級仕様)では、電子的にリバウンドダンピングを制御するダイナミックESAも搭載している。タイヤはミシュランANAKEE 3を履く。
新設計のスチールシェル構造ブリッジフレームに吊り下げられた並列2気筒エンジンは「F750GS」では57kW(77PS)/7,500rpm、「F850GS」では70kW(95PS)/8,250rpmへと大幅にアップ。エンジン下には樹脂製のアンダーガードを標準装備するが、オプションで長さと幅を拡張したしたアルミニウム製も用意されている。
ウインドシールドも「F750GS」では軽快なショートスクリーンだったが、「F850GS」ではより高さがありプロテクション効果も向上している。左右非対称のLEDヘッドライトやターンシグナルは共通だ。
従来型まではリアシート下に燃料タンクを配置していたが、エンジン上にレイアウトする一般的なタンクに一新。容量は15リットルだ。なお、新設計ブリッジフレームや270度クランクの並列2気筒エンジンについては基本構成を同じにする「F750GS」の試乗レポートを前回ここに寄稿しているので、そちらを参照していただければありがたい。
BMW F750GS/試乗レポ「逆回転270度クランクが心地良いパルス感」
由緒正しきGSシリーズのミドルレンジは独自の道を歩んできた
まずはシリーズの変遷と位置関係をおさらいさせていただく。今回乗ったF850や750が名乗る「GS」とはゲレンドシュポルト、つまり山野も駆け巡り、走りの場所を選ばないデュアルパーパスを意味する。BMWは1980年に「R80G/S」を発売して以来、このシリーズをラインナップに欠かせない主軸へと育ててきた。
「R80G/S」がそうだったように、フラッグシップは絶えずBMWではお馴染みのフラットツイン=水平対向2気筒エンジンを積み、最新モデルでは排気量を1254ccに拡大している。F850GS/750GSは、その本流の血筋とは異なるミドルモデルで、1994年の「F650ファンデューロ」をルーツに持つ。
これはデビュー当初、市場に受け入れられなかった。排気量652ccの水冷単気筒DOHC4バルブエンジンはロータックス社との共同開発によるもので、ヘッド部のみをBMWが担当。車体の組み立てはアプリリア社で行われ、ドイツ、オーストリア、イタリアの3カ国3メーカーの合作は熱心なBMWファンからは冷めた目で見られたのだった。
しかし、2000年に陸の王者の証である「GS」の称号が与えられ「F650GS」を名乗ると、パリ・ダカールラリーではワークスチームがワン・ツー・フィニッシュという快挙を成し遂げ、そのポテンシャルの高さを証明した。オフロード性能を高めた「F650GS ダカール」も登場し、F650シリーズは上級モデルに乗るライダーにも高く支持されていく。
フラットツインを積むR-GS系は進化とともに車体のボリュームが増し、「大きすぎる」と感じていた一部のGS乗りたちが、「操れるちょうどいいサイズ」とダウンサイジングしてきたのだ。また、GSシリーズには乗ってみたいが、サイズ感を考えると踏み込めない。そんなエントリーユーザーにもF650シリーズは最適で、GSワールドの門戸を広く開いたのだった。
水冷シングルエンジンを搭載したF650系だが、排気量798ccの水冷パラレルツインへと心臓部がスイッチしたのは2008年のこと。このときオンロード指向のスタンダードは「F650GS」を名乗り、オフ寄りの後発モデルを「F800GS」とした。800ccの2気筒を積むのに「F650GS」のネーミングを受け継いだため、シングルエンジン時代と区別するため“エフロク・ツイン”と呼ばれることもある。
その後「F700GS」へとネーミングが改められ、「F800GS」そして「F800GS Adventure」も加わって3本立てで2018年を迎えていたが、19年型で「F700GS」が「F750GS」に、「F800GS」が「F850GS」へと進化。前回レポートしたのが「F750GS」、そして今回が「F850GS」というわけだ。
BMW F750GS/試乗レポ「逆回転270度クランクが心地良いパルス感」
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