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カワサキKLX230/R試乗|初心者&中級者向けの割り切り設計! だからオフロードがめちゃ楽しい!

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カワサキから久々のオフロードモデルが登場した。公道モデルのKLX230とコース専用モデルのKLX230Rは「誰もがオフロードでのファンライドを楽しめる」ことをコンセプトに開発された完全新設計モデルである。カワサキ主催のメディア試乗会でダートコースを主体に走り込んでみた。

REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●星野耕作(HOSHINO Kosaku)

■カワサキ・KLX230……49万5000円

KLX230(公道モデル)

KLXの名が3年ぶりに復活

 KLXとは4ストロークエンジンを搭載するカワサキのオフロードモデルに付けられた伝統的なシリーズ名で、90年代のエンデューロブーム時には公道仕様のKLX250SRとレース仕様のKLX250Rとがあった。その後、公道仕様に一本化されたKLX250も2016年のファイナルエディションを以って生産終了となり、一部のファンからは再販を希望する声も多かったようだ。それが今回、完全新設計のKLX230/Rとして復活したことで、ようやくカワサキにもオフロードモデルが戻ってきたことになる。

誰もが思いきりオフロードを楽しめる

 KLX230は初中級レベルのライダーでも性能を扱いきって楽しめることを目指したという。2つのバリエーションがあり、ストリート仕様のKLX230はオンとオフ両方の走りを想定したデュアルパーパスモデルで、大型ヘッドライトとタンデムも可能な快適なシート形状、オフロードABSなどを装備。一方のRはより軽量化され、出力特性や前後サスペンション、タイヤなどの設定もオフロード走行に最適化されているのが特徴。最高出力19psを発揮する空冷4スト単気筒SOHC2バルブ232ccエンジンをスチール製ペリメターフレームに搭載、前後21/18インチホイールを装備した車体構成は共通である。

かつてのKLX250とはキャラが異なる

 試乗する前は230という一見中途半端な排気量が気になっていて、正直KLX250のリニューアル版でもいいのでは? と思っていた。試乗するまでは。しかし今回KLX230に乗ってみて、新型のコンセプトを見誤っていたことを思い知ったのだった。
 自分は従来のKLX250にも何度も試乗したことがあるが、ひと口に言うと大柄で車重もあるし、当時全盛だった2ストのオフロードマシンを打ち負かすという意味での「闘う4スト」のキャッチフレーズどおり、高回転までぶん回してパワーを絞り出すタイプのマシンだった。パワフルで車体もガッチリしているのでツーリングなどで距離を伸ばすにはもってこいだが、反面オフロードで乗りこなすにはちょっと難しい感じもあった。

低中速トルクたっぷりで坂道も安心

 そのイメージから一転してKLX230は見た目からしてコンパクト。フラットなシート形状やサイドパネルと一体化したロングシュラウドなど、モトクロッサーKXシリーズとも共通する最新デザインに仕上げられている。シート高は885mmと高めだが、実際に跨ってみると初期で沈み込む前後サスとスリムな車体まわりのおかげで足着きも悪くない。自分の場合(身長179cm/体重73kg)で両足とも余裕で接地できた。
 まずはオフロードコースで試乗したが、低中速から粘りのあるエンジンは、さほど回転を上げなくてもエンストする不安もなく急坂を上ってくれるし、グリップの悪い砂利道や湿った土でもよく路面をとらえてくれる。つまり、トラクションが良いのだ。

扱いやすいパワーと車体で自在に走る

 林道のようなフラットダートを散策気分でトコトコ走るのも楽しいし、慣れてくるとスタンディングで凸凹路面をいなしつつ、コーナーでは積極的にアクセルを開けてリヤを流しながら立ち上がることも可能だ。デュアルパーパスABSも試してみたが、オフロードでも前後ブレーキともしっかり強くかけられる安心感は絶大。ABSの作動は自然なので、うまく操ればブレーキターンもできなくもない。モトクロッサーのような派手なジャンプなどはできないが、扱いやすいパワーと軽快な車体のおかげで自在感のある走りが楽しめた。

 オンロードも走ってみたが、車体はしっかり感があってブロックタイヤもオンロード対応なので普通にコーナリングできるし、しなやかな前後サスのおかげで乗り心地も良好だ。ハンドル切れ角も大きく小回りも得意など、街乗りやコミューターとしても活躍できそう。高速道路も6速ミッションのおかげで回転数を上げずにクルーズできるが、パワー的にはソロツーリング向きか。しかしながら、出力特性やギヤリングなどはやはりオフロード寄りの設定であると感じられた。

KLX230R|保安部品なし! だけどその分走りはもっと楽しい!

■カワサキ・KLX230R ……51万7000円

KLX230R(コース専用モデル)

純粋にオフロードを楽しむなら「R」がおすすめ

 一方、KLX230Rはというと、跨った瞬間、まずシートが高くサスペンションの張りも強いなど俄然レーサーチックな雰囲気が伝わってくる。スペックを確認すると、前後サスはより高荷重設定でストローク量も30mm程度長く、車重も20kg近く軽い115kgということで走りは別モノといっていい。ある程度の経験があれば、初心者向けのモトクロスコースでもガンガンに攻められるし、タイヤもよりガチなオフロード対応なので、深いワダチができた荒れたガレ場などでも難なく走破できる実力がある。アクセルレスポンスも鋭いので立ち上がりでスライドもさせやすく、足まわりも本格的なのでジャンプも飛べる。ABS無しなのでブレーキターンを使った向き変えも容易にできるなど、自分で積極的に操れる人向きだろう。コース専用で走ることを考えれば「R」が断然楽しい。また、オフロードの基本テクを磨きたい人、いずれはモトクロッサーKXへのステップアップを考えている人にも是非おすすめしたい。

■KLX230/R ディテール解説

エンジンは整備性と信頼性を優先して、あえてシンプルな空冷2バルブSOHCを選択。232ccという排気量も軽量コンパクトを追求した結果だ。ボア×ストロークは67.0×66.0mmとほぼスクエア設定とし、低中回域からの豊かなトルク特性を実現。
フロントフォークはφ37mmの正立タイプでストローク長を220mmとしオフロードでの走破性を向上。シングルディスク&2ピストンキャリパーにオンとオフ両方の路面に対応するデュアルパーパスABSを装備。
リヤサスはカワサキ伝統の新型ユニトラック式でストローク長も余裕の223mm、プリロード調整機構を備える。シングルディスク&シングルピストンキャリパーを採用。前後のホイールリムは軽量なアルミ製となっている。
車体センター寄りにコンパクトに収められたサイレンサー、ライダーが動きやすいフラットなシート形状と平滑なサイドパネルなど、人間工学に基づく最新のデザインが採用されている。
明るさを最優先した大型ヘッドライト。オフ車はライトが暗くて当たり前、という常識を覆す大光量60/55Wランプと大型リフレクターが夜間での優れた視認性を確保する。
シンプルなコックピットまわりだが、メーターには大型液晶パネルを採用するなど見やすさ重視の設計。スピード、距離、デュアルトリップ、燃料計、時計、各種インジケータなどを表示。
ライダー側ステップは滑り止め加工されたワイドで頑強なスチール製フットレストを採用。これだけでもオフロード重視であることが分かる。二人乗りを考慮してヒールガード付きのタンデムステップを装備。
純正オプションのリヤキャリアとETC車載器を装備したデモ車。キャリア中央に収まるボックスはキー付きのフラップが開閉可能で、その中にETC車載器本体がある。
コース専用モデルのKLX230Rはヘッドライトやウインカー、バックミラーなどの補器類はなく、また樹脂タンクの採用などにより、車重は19kgマイナスの115kgまで軽量化されている。
スイングアームは軽量化と剛性バランスを考慮してアルミ製(公道モデルはスチール製)にアップグレードされている。

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。

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