ハスクバーナ スヴァルトピレン701の見た目以外のイイトコロ|ずばり、ギャンッ!と回るエンジンと、250cc級の軽さです。
- 2019/12/06
- モト・チャンプ編集部
「〇〇ピレン」というモデルが次々と出てきたハスクバーナブランド。フロント18インチの、デコボコタイヤの付いた「スヴァルトピレン701」を紹介しよう。
TEXT●ノア セレン
PHOTO●山田俊輔
ハスクバーナSVARTPILEN701…… 1,380,100円
新生ハスクバーナ
まずは最近のハスクバーナを簡単に説明したい。歴史的には主にオフロードの世界で活躍し、そして20年ほど前の日本ではモタードの上陸と共に再注目され、そして今はKTMグループの一員となって、KTMの派生ブランドという立ち位置といえるだろう。
ここで紹介する「ピレン」シリーズは701が今は絶版となってしまったKTM690DUKEがベースでフレームも足周りもエンジンも基本的に共通。そして今回は登場しないが、401シリーズはKTM390DUKEがベースでフレームも足周りもエンジンも基本的に共通というものだ。
このほかに、モトクロスモデル、エンデューロモデル、そしてモタードモデルなどを展開するが、コンペモデル、公道モデルに関わらず基本的にはみなKTMの兄弟車両と考えて間違いない。オフロードの世界では統のある、ヨーロッパの2大ブランドがタッグを組んだということだ。
量産市販車最大シングル
701シリーズの最大の魅力は、おおよそ700ccもあるシングルエンジンと軽量な車体である。KTMの690DUKEが絶版となってしまった今、このエンジンが使われているのはハスクバーナブランドのみ。魅力的なエンジンが生きながらえたことが素直にうれしい。
これだけの大排気量シングルが普通に使えることも驚きなのだが、いわゆるビッグシングルとして連想するキャラクターとは違うということをはっきりと伝えておきたい。400ccを越えるようなシングルは、国産車に親しんだ感覚からするとドッスンドッスンと回って粘り強く、実用的なイメージもあるかと思う。しかしこのエンジンはまるで違う。フライホイールなど付いていないんじゃないかというほど「ギャンッ!」とフケ上がる様はまさにモトクロッサー。そして高回転域ではストレスも振動もなくパワーが出続けてレッドゾーンまでグイグイと引っ張り続ける。その怒涛のパワーはレブリミットに当たるまで苦しさや陰りを一切見せることなく、一般的に700ccのシングルから想像するような「大きなピストンが一生懸命仕事している」というような感覚は全くない。
軽さは正義
この魅力的なエンジンが搭載されるフレームもまた優秀で、軽量な仕上がりを実現しているだけでなく踏み込んだスポーツ性にもしっかりと応えてくれる。車重はおおよそ150~160kg、それに70馬力ほどのエンジンが載っているわけで、感覚としてはブ厚いトルクがプラスされた、アップハンの現代版NSRといった感じだ。サーキットにおけるパフォーマンスも非常に高いと断言させていただくのは、筆者もKTMの690DUKEを所有し、かなり走り込んだ経験からである。
サーキットにおいてこのパッケージは大変魅力的だが、軽いということは公道においてもアドバンテージ。乗り出すことが億劫にならないからだ。車庫から出して走り出すまでに「ヨッコイショ」がないため、250cc感覚で「今日もバイクで行くか!」という気分にさせてくれる。700ccなのにである。そういった接しやすさは大切だろう。
個性的ルックス
ここまでの話は基本的にエンジンとフレーム、及び足周りと組み合わされた基本部分の性能の高さについてだが、ハスクバーナ版ピレンシリーズはその中でも個性が強いバージョンといえるだろう。690DUKEとの一番の違いはポジションだ。シートが高くステップが低いため膝の曲りがとても緩やかでリラックスできる。このスヴァルトピレンはフロント18インチでトラッカー的なワイドでアップなハンドルを装着していることもあり、DUKEよりも一回り大柄に感じて余裕を持ったポジションで乗れるが、一方で小柄な人にとって足つきはそれなりに厳しいかもしれない。
サイドパネルにデザインされた701の文字を配したり、タンデムシート後端がぴょこんと跳ね上がっていたり、タンクに機能とは関係なさそうなデコボコあったりと全てにおいて個性的である。あらゆるアイディアが出尽くしたと思われる現代において「〇〇っぽい」というのが一切ないデザインを実現したのは素晴らしいことだろう。
走りもそれなりにスパルタン
余裕のポジションと素晴らしい軽さは魅力だが、ビッグシングルエンジンはそれなりにスパルタンさも持っている。中~高回転域では楽しさが爆発するが、3000rpm以下ではどうしてもギクシャクしてしまうためストリートでは低めのギアを選択しておく必要がある。一方でフロントの18インチ化はいい意味で緩慢さが生まれ、ストリート向けになったとも言える。タイヤがオフロードも連想させるパターンになったこともあるだろう、全体的に「ユルさ」がプラスされ、エンジンの回転域さえ気を付けておけばその高いスポーツ性を意識せずにカジュアルに付き合うことも可能だ。
トラコンやABSももちろん備えるが、ストリートにおいてそれらが作動することは稀だろう。一方でクイックシフターは使うこともあるかもしれない。アップ・ダウン双方で使えるクイックシフターはクラッチ操作を不要にしてくれるアイテムだが、けっこう敏感な設定のためシフトペダルに意図せず触れてしまった時に突然点火カットが起きたりすることがあり注意したい。
トラッカー的スタイリングと包容力を手に入れたことでノンビリ走ることも可能にはなったが、本質的にはレディトゥレースなKTMスピリッツがまだまだ潜んでいるナ、と実感した試乗。個性的なバイクに乗りたい、いざという時にはエキサイト出来るスポーツ性も欲しい、毎日乗れるような付き合いやすさも欲しいというライダーに薦めたい一台だ。
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