BMW・R1250GSで雨天の300kmツーリングインプレ。結論:雨のおかげで足まわりの凄さがわかった
- 2020/05/05
- 佐藤恭央
近年大人気のアドベンチャーの筆頭、BMWのGSシリーズ。今回試乗したのはR1250GSのプレミアムスタンダードと呼ばれるグレードだ。ロワリリングキットとローシートが組み込まれているから、足着きに及び腰の人も安心! オプションのパニアケースを備えてスタイリングもバッチリ! せっかくなので雨予報だったけど往復300kmの日帰りツーリングを決行しました!
REPORT●川越 憲(KAWAGOE Ken)
PHOTO&EDIT●佐藤恭央(SATO Yasuo)
BMW・R1250GS……2,553,000 円~
フラッグシップに相応しいスタイル&機能
BMWモーターサイクルを代表するGSのフラッグシップモデル、R1250GS。アドベンチャーやクロスオーバーなどと呼ばれるカテゴリーに属し、BMWはこのジャンルのパイオニアだ。ちなみに、GSとはドイツ語で「ゲレンデ・シュトラッセ」の略で、端的に言うとオンオフ両方が走れるデュアルパーパスモデルを意味する。
大人気のカテゴリーなので、このR1250GSをベンチマークにして他メーカーからも魅力的なモデルが登場している。世界中のライダーが注視するR1250GSのポテンシャルは果たしていかなるものなのか? 筆者は先々代のR1150GSを長年所有し、先代のR1200GSの空冷、水冷仕様にも幾度となく試乗してきただけに今回の試乗は非常に楽しみにしていた。
新採用の“シフトカム”とは!?
R1250GSは、R1200GSからフルモデルチェンジされて2018年12月に登場した。お馴染みのボクサーエンジンのレイアウトはそのままに、排気量が1169cc→1254ccに拡大され、さらに可変バルブタイミング“シフトカム”の新機構が採用されている。可変バルブ機構で馴染みがあるのは、ホンダ・CB400SFやVFR800Fなどの「HYPER VTEC(ハイパーブイテック)」だろう。これは、エンジン回転数によって作動バルブ数が増減し、低速でのトルクアップと高速での伸びを両立させたもの。
これに対して、R1250GSのシフトカムは5000rpm付近でカムをスライドさせ、低速カム(スモールカム)から高速カム(ラージカム)へと切り替える仕様だ。低速カムの作動時はバルブリフト量が少な目で、排気量アップに関わらず燃費も改善。高速カムへ移行するとバルブリフト量も増大し、スムーズな回転とパワーを引き出すという。
課題だった低速トルクを向上!
先代までのGSのウィークポイントといえば、低速域のトルクがやや薄いことだった。大柄で車重があることもそう感じさせる要因だが、このバイクの使い方としてたくさん荷物を積み込むことが多々あり、膨れ上がった車体は発進時からある程度のスピードが出るまで繊細な操作が求められた。この唯一の欠点を最新モデルでは克服されているのか否か?
結論から言うと、排気量アップと可変バルブ機構の相乗効果は大成功! 排気量の拡大はわずか85ccだけなのに最大トルクは約14%、最高出力は11psもアップし、この数値以上に3000rpmまでのトルクの厚みが増しているのが、走り出してすぐに分かった。車両重量が増しているのに低中速で軽くなった印象すら受けるのだ。
さらに、特筆したいのがカムの切り替わりのスムーズさ。先述したホンダのHYPER VTECはエンジン音やトルクの盛り上がり方が明らかに変わるが、R1250GSのシフトカムは事前に知らなければ気付くライダーはほとんどいないだろう。それだけカムの切り替えがスムーズなのだ。5000rpm付近を意識して何度も走ってみたが、シフトカムの存在を知っていても自然なフィーリングで、この味付けはいかにもBMWらしいなと思った。
不自然を自然に! BMWのライダーへの配慮
BMWは先進的な技術を盛り込んでも、BMWに初めて乗るライダーが特に意識することなくライディングに集中できる環境を重視する。独自のサスペンション機構であるフロントのテレレバーサスペンションなどがまさにそうで、ブレーキング時や加速時のピッチングを抑えながらしっかりと路面追従性を確保できる。快適性はもちろん、安全に乗ることができるメカニズムでもあるのだ。新採用のシフトカムも、先代と乗り比べれば大きな進化が分かるのだが、その進化が当たり前と思えるほどスタンダードとなり、マシンの完成度を引き上げている。
先進的な電子デバイス&足周りも見どころ!
パワーユニットだけでなく、足周りや電子制御などの完成度も高まっていると感じられた。試乗時は途中から大雨が降ってきて4つあるエンジン出力モードの中からレインモードに切り替えたところ、普通のツーリングモードとなんら変わらないくらいのペースで走れてしまった。路面追従性が高いから、急勾配&タイトなワインディングも路面がウエットであることを忘れてしまうほど攻められる!
エンジンの出力モードや電子制御サスペンションのほかに、TFTディスプレイメーターを介して様々な機能が選択できるが、1日の試乗ではとても把握できないほど多岐に渡る。それを使いこなす喜びはオーナーだけの特権だろう!
ライバル車両の激しい追い上げもあるが、今回の試乗では、アドベンチャーバイクを牽引するモデルが一歩先に踏み出したことを確信した。
●足つきチェック(ライダー身長182cm)
シートが思ったより硬質で沈み込みが少ないが、ローダウン仕様(シート高820mm)なので、ライディングブーツを履いている身長182cmの筆者なら両足がべったりと着く。若干幅広のバーハンドルは、手前にオフセットされているので遠すぎる感じはしない。
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