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紳士な走りに過激さも同居!|1200ccビッグツインエンジンのトライアンフ・スピードツインに試乗

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カフェレーサーのスラクストンRSに次ぐホットモデルがこれ。伝統的バーチカルツインの1200ccエンジンを搭載。個性的バーエンドミラーの装備を初め、各使用パーツが厳選される等、マッシブな高性能ロードスターとして仕上げられている。その原点にあるのは1938年製のSpeed Twin、トライアンフの名声を世界に広める事に貢献した伝説のモデルで、今回の試乗はその現代版というわけだ。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン

2019年モデル発表時にリリースされたデザインスケッチ

トライアンフ・スピードツイン.......1,685,500円

SILVER ICE & AMP, STORM DREY.......1,685,500円
JET BLACK.......1,645,900円
KOROSI RED & AMP, STORM GREY WITH HAND PAINTTED GRAPHITE COACHLINE

 プレスリリースから引用するとスピードツインは“カスタムロードスター”と呼ばれている。冒頭に記した通り、往年のネーミングを2019年に復活導入。クラス最高のハンドリングとスリリングなパフォーマンスを備えていると言う。
 一見そのフォルムは、ボンネビルT120ベースのお手軽な派生モデルに見えるかもしれない。しかし、実はフレームもエンジンチューニングも専用新開発されており、同ブランドに掛けた意気込みの強さが感じられる力の入ったホットモデルなのである。

 搭載エンジンはもちろん1200ccのバーチカルツイン。ショートストロークタイプのSOHC8バルブと270°クランクの採用等、基本的には共通だがスラクストンRのユニットをベースに専用チューニングが施された。
 ボンネビルT120と比較すると圧縮比は10.0から11.0対1へと変更。最高出力は80ps/6,550rpmから97ps/6,750rpmへ、最大トルクは105Nm/3,100rpmから112Nm/4,950rpmへ大幅に向上している。
 クラッチ部品一式も変更熟成され、マグネシウムカバー等、エンジンカバー類も軽量化が施されている。スラクストンエンジンと比較しても2.5kg軽く仕上げられた。左手スイッチで簡単に切り換えられるライディングモードもロード、レイン、スポーツの3モードから選択できる。
 
 またフレームはアルミ部品を組み合わせた新デザインの採用で軽量高剛性を追求。リヤのスイングアームもT120はスチール製だが、スピードツインはアルミ製を装備。7本スポークの軽量アルミキャストホイールの採用等、車両重量も大幅に軽量化され、スラクストン比で10kgダウンの196kg(乾燥)に仕上げられている。
 前後タイヤは17インチZRコードのピレリ製ディアブロロッソⅢ。ちなみにボンネビルT120はフロント18、リヤ17インチサイズ。フロントのジオメトリーも専用設計され、T120はキャスターが25.5°、トレールが105.2mm だったが、スピードツインは22.8°の93.5mm。フロントフォークを立てた設計が印象深い。
 これは軽快なハンドリングを重視した設計を意味している。特別にスポーティなセッティングが施されているのである。

鋭さを隠して穏やかに走るカッコ良さに魅力を覚えた。

 今回のスピードツインは、オドメーターが数kmに過ぎないド新車だったので、各部は慣らしが十分でない状態で試乗したことをお断りしておきたい。

 まず全体の雰囲気はボンネビルから派生したモデルらしく、バーチカルツインエンジンを搭載する王道的なデザインセンスが親しみやすく筆者にも好感触。
 それでいて各部に、さりげなく吟味された使用パーツが目に入り、艶消しアルミ製ショートフェンダーの採用や軽快な7本スポークデザインのアルミキャストホイール等、全体にガッシリと逞しさの中に、スッキリとシェイプされたスタイリングが印象的である。
 エンジン、マフラー、フロント回り等、ブラックアウトされたカラーリングもハイポテンシャルを内に秘めた迫力が静かに漂ってくる。細部まで見れば見る程、お手軽にカスタマイズされたモデルでは決して無いことが理解できてくる事だろう。
 楕円ボックス断面形状のアルミスイングアームが採用されている点、ブレンボのダブルディスクブレーキや同じく調節式ブレーキレバー。燃料キャップもモンツァ風と呼ばれるこだわりの方式が採用され、バーエンドミラーの装備も特徴的。随所に散りばめられたアルミパーツや化粧カバーも所有欲を満たすファクターとしてセンスの良い上質な仕上がりを披露している。

 早速跨がるとやや腰高な印象だが、足つき性がスポイルされる事は無く、筆者にも丁度良い感覚。ライダーの上体が起きた自然体で乗れる。そんな中でハンドル位置が僅かに低く感じられ、やや後退気味のステップ位置と共にスポーティなキャラクターを持つバイクであることが理解できる。
 言い換えると長閑な雰囲気は影を潜め、背後にあるアグレッシブな感覚がライダーのスポーツ心を快く刺激してくれるのである。
 エンジンを始動し、左手のMODEスイッチでスポーツモードを選択。走り始めると、流石にトルクフル。右手をワイドオープンすると、スラクストンRSに肉薄するパンチ力が簡単に発揮できる。
 レッドゾーンは7,000rpmから。吹け上がりの軽やかさではスラクストンRS程ではないが、メリハリのある豪快なハイパフォーマンスが堪能できる。
 ドライブスプロケットとドリブンスプロケットの歯数はスラクストンRSと同じ。ちなみにボンネビルT120は17/37T、スピードツインは16/42T。2次減速比が2.18から2.63に低く設定された上にパワフルなエンジンとのセットで、加速力は明らかに鋭く、強烈なダッシュ力を魅せる。
 ちなみにローギヤで5,000rpm回した時のスピードは50km。6速トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は3,400rpm。120km/hクルージングなら4,000rpm強だ。
 ハンドリングも、ゆったりと挙動に落ち着きがあるボンネビルのキャラクターとは明確に異なり、クィックなレスポンスでシャープな旋回性が楽しめる。倒れ込むスピードが素早くワインディングロードで右へ左への切り返しも、スパッと向きを変えて行けるアグレッシブなポテンシャルがあり、それがまた気持ち良い。
 ライダーもそのポテンシャルに気付くにつれて、大人のハートをキープしながらもエキサイティングな走行性を楽しんで見たくなるのである。
 市街地でも自然体で乗れるライディングポジションは常に穏やかで快適に走れるが、気持ちの上ではどこかに若きスポーツマインドをスタンバイさせている感じになる。
 タッチの良いブレーキに関しては効き味が若干穏やかに感じられたが、おそらく慣らしが済めば鋭い効力を発揮してくれる事は間違いないだろう。
 通常はライディングポジション的にごく普通な乗り味。出力特性も穏やかで扱いやすいが、いざと言う時にはごく平然と侮れないビッグトルクを発揮してくれる。
 普段はあえて爪を隠し、必要ならいつでも牙を剥くという感じだろうか。そんな頼り甲斐のあるハイパフォーマンスぶりが魅力的に感じられた。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高はボンネビル比較で17mm高い807mm。ご覧の通り両足はベッタリと程よく地面を捉えることができる。筆者にとっても丁度良いサイズ感だ。

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