これぞモーターサイクルだ!と唸らせる正統派、トライアンフ・ストリートツインに試乗
- 2020/09/10
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MotorFan編集部 近田 茂
トライアンフブランドの主カテゴリーと言えるモダン・クラシック。伝統的なバーチカルツインエンジンを搭載、懐かしさを漂わすデザインセンスを披露し、今や10機種ものバリエーション展開を誇っている。その中で最も親しみやすい価格でリリースされているのが、このSTREET TWINである。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン
トライアンフ・ストリートツイン.......1,096,500円
トライアンフの公式WEBサイトから引用すれば、「新たに誕生した正統派マシン」とある。バイクに対するイメージは人それぞれ、年代によっても様々であろうが、50〜60年代のバイクシーンを牽引してきた、ロードスポーツモデルにおけるスタンダードな姿をそこに見出すことができる。
ベンチマークとしたのは、1959年のボンネビルだと言う。そのスピリットを継承しながら、現代の最先端テクノロジーを融合させているわけだ。そして自らがそれを正統派モダンクラシックと位置付けている。
3種類のカラーバリエーションが揃えられているが、そのお値段は、JET BLACKをチョイスすれば1,070,000円で手が届く。同ブランド入門用としても親しみやすい存在なのである。
ボンネビルも同様だが、筆者にとってこのスタイリングは重量級ロードスポーツ車の王道と言える、いかにもオーソドックスな手法でまとめられている。スチールパイプで枠を成すフレームワークを始め、長めのタンク・シート、エンジン後方に吸気系、前方排気のエキゾーストパイプは美しいカーブを描きながらエンジン前方から下方を通りツインマフラーで締めくくられる。
フロントフォークは蛇腹のラバーブーツに覆われた正立のテレスコピックタイプで、リヤにはコイルスプリングとダンパーが一体となった2本のショックユニットを採用。
ライダーは上体の起きた楽な姿勢で乗れ、街中から高速や郊外のワインディングロードまで、どんな場面でも自然体で柔軟に対応できる扱いやすさがある。
パフォーマンスや機能性に尖った部分のない親しみやすいロードスポーツというイメージである。
搭載エンジンは、ボア・ストロークが84.6×80mmと言うショートストロークタイプの900cc。圧縮比はやや高めの11.0対1で、最高出力は65PS/7,500rpmを発揮。一方で80Nmの最大トルクを3,800rpmで発生。いかにも柔軟な出力特性が見て取れる。
しかもそこに組み合わせたトランスミッションは5速。900と言う排気量から容易に想像できるポテンシャルと共に、穏やかで扱いやすい乗り味にも期待値の大きなモデルと言えるのである。
足回りはフロントに18インチ、リヤに17インチを採用。これはボンネビルT100と同じだが、フロントのジオメトリーは、キャスター/トレールが、ボンネビルの25.5°/105.2mmに対して、ストリートツインは、若干フォークが立てられた25.1°/102.4mmとなっている。
ほんの僅かな違いで、あくまで傾向論ではあるが、ストリートツインはボンネビルとの対比で、直進安定性よりも、ハンドリングの軽快感を狙って仕上げられた点が特徴である。
装備内容や選択された部品に贅沢な雰囲気は少ないが、素性の良いベーシックなスポーツモデルとして、非常に良くまとめられている。
車体サイズと重量、そしてエンジン性能の全てが掌握できる。
昔で言えば間違いなく重量車。今流で言うとアッパーミドルクラスと言うのが正解だろう。筆者にとってその大きさは親しみやすい。試乗車を受け取るとボンネビルの兄弟モデルであることは直ぐに理解できた。
特に虚飾のない、スッキリしたデザインセンスはむしろ好感触。普段着感覚で乗れる点が、とても良い感じである。車体のサイズと重量も程良さがあり、足つき性もバッチリ。両足は楽に地面を捉えることができ、それら全ての要素が自分の手の内納まる感じである。
バイクを自由自在に扱いこなす上で、全てを掌握できる程良さはとても魅力的である。 別に油断するわけではないが、余計な緊張感を持たずに、気軽に乗れる。簡単にまたがり楽にスタートできる相棒感覚。サイドスタンドの出し入れも扱いやすい。自分の愛車にするには実に丁度良いと思えてきた。
エンジンを始動するとアイドリングは900rpm程で安定。なかなか落ち着きのある回転フィーリングは大人びた感触。そして出力特性は実用シーンにとても良く合う。
5速トランスミッションとの相性が良く、ギヤレシオのセッティングも素晴らしい。簡単に解説するとワイドレシオとエンジンの出力特性とのマッチングが良い。もっと言うとより大きな排気量のエンジンに乗っているかの様なおおらかな気分で走れる。
中低速域のトルクが十分なので、スロットルを大きく開ける必要はなく、常に余裕綽々な走りが楽しめる。それでいて、右手をワイドオープンすると、軽やかで十分逞しい吹け上がりを示すと共に、伸びを待つ心地よい加速フィーリングが楽しめ、各ギヤで引っ張って行く時の感覚が気持ち良いのである。
ちなみにローギヤで5,000rpm回した時の速度は60km/h。5速トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は、3,200rpmだった。120km/hクルージングの場合でも約3,800rpmで走れてしまう感覚は、やはりクラスを超えるゆとりが楽しめる。
スロットルレスポンスは決して乱暴ではなく、軽やかさと逞しさを合わせ持つ感じ。市街地はもちろん、登りのワインディングロードでも各コーナーをグイグイと立ち上がれる底力は十分。高速でのゆとりも申し分無く、ライディングポジションの良さも相まってタンデムツーリングも快適にこなせそう。
その総合的な乗り味は、日本の交通環境にも相性が良く、ある種万能なスポーツモデルと言える。どんな場面でもトルクに不足は感じられない。レスポンスに穏やかさもあるエンジンはとても扱いやすいからである。
そんな扱いやすさ故、あまりその必要性は感じられかったが、ライディングモードは通常のロードの他により穏やかに駆動力制御されるレインモードも選択可能。ウェット路面でも安心感は高い。
ハンドリングも軽快かつ素直な扱いやすさが目立つ。前後ブレーキも同様に扱いやすく、自然な乗り味に好感が持てるものだった。
あえてボンネビルと比較すると、エンジンこそノーマルながら、ちょっとスプリンター的に軽いチューニングを施されたモデルのように軽快な雰囲気がある。
また、全体的な見た目としてリーズナブルなモデルであることは理解できるが、決して安っぽくは無い。その割に親しみやすい価格設定には、改めてお買い得感の高いバイクであることに気付くのだ。
普段使いにもまるでストレスを感じない気軽さは足代わりから、様々なツーリングまでフルに使い倒せる感覚。良い意味でとても無難なチョイスである。
これを愛用し尽くしたオーナーが、何かプラスαを望む時は、自由にカスタムを楽しむのも良いだろう。
自分好みに仕立てて行くベースモデルしても、長く付き合える賢い選択肢のひとつになることは間違いと思えた。
足つき性チェック(身長168cm)
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