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スラクストン1200 RS|トライアンフのカフェレーサーは1200ccだけど意外とスマート

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全10機種もの充実したバリエーションを展開するモダンクラシック。トライアンフ伝統のバーチカルツインエンジンを搭載するのが特長だが、価格も性能もその中で頂点に君臨するモデルがスラクストンRSだ。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン

JET BLACK

トライアンフ・スラクストン1200 RS.......1,920.500円

MATT STORM GREY & SILVER ICE.......1,960,100円

 スラクストンのネーミングはイギリスのハンプシャーにあるスラクストン・サーキットから由来。往年のトライアンフが同耐久レースやマン島TTで活躍した話は有名。実際60年代末までは、量産車世界最速の座はトライアンフに牛耳られていた。
 そんな実績のもと、60~70年代に競技車両をイメージして改造されるマシンはカフェレーサーと呼ばれ、ブームになった。スラクストンはその元祖とも言える存在である。

 シングルシーターと割り切ったところから既に別格の香りが漂い、フロントフォークにクリップオンされたセパレートハンドルやバックステップの採用等、あちこちにスポーツ性能を高める“本気”が表現されている。
 前後サスペンションはプリロードはもちろんリバウンドとコンプレッションの両側でダンピングが調節できる上質なフルアジャスタブル仕様を採用。ブレーキやタイヤもレベルの高い高性能の発揮を狙っている。
 そして搭載エンジンは、同社が誇るバーチカルツイン(直立2気筒)の中で、唯一特別に12対1を超える高圧縮比を得て高回転高出力を発揮。最高出力は105ps/7,500rpm。最大トルクは112Nm/4,250rpmを誇る。
 ちなみにレッドゾーンは7,000rpmから。最大トルクはスピードツインと同じだが、発生回転数はそれよりも700rpm低い所で発揮させている。さらに見逃せないのは、クランクマスが20%も削減された。
 圧縮比の変更には専用ピストンを採用。もちろんポートも含めて吸排気系を変更。カムのプロフィールも専用開発された力の入れようである。
 キャスターやトレールはスピードツインとほぼ共通する設定だが、使用タイヤはよりグリップが高く、許容速度域も高いZRコードのスポーツタイヤ、メッツラー製Racetec RRが標準装備された。
 エンジン部にマグネシウムカバーや薄肉カバーを採用する等、先代モデルのスラクストンRとの全体比較で6kgの軽量化も達成。前述したブレーキやサスペンションも上質な部品が選択されており、一段と魅力あるプレミアムな仕上がりを披露しているのである。

ストリートスポーツとして実に気持ち良い走りが楽しめる。

 実は今回の試乗はトライアンフ車12台を数日かけて乗り比べたもの。その中でバーチカルツインの1200ccエンジン搭載車は6台。その中でスラクストンRSに跨がり走り始めた瞬間、どれよりも異質な印象に驚かされた。
 ボンネビルを始めスクランブラーも一様に大きく重いドッシリと立派な乗り味を覚えたものだが、スラクストンRSはスラッとスマートな車体で、大胆にシェイプアップされていたのが印象的だったからである。
 ゴールドに輝く前後サスペンションやスエード調のシングルシート等、そこかしこからプレミアムな雰囲気も漂い、趣味の良い大人の味わいが香り立つ。ロングタンクもニーグリップ部分がえぐられ、ライディングポジションも細くスマートに決まる。
 前傾姿勢も辛いレベルではなく、スポーツバイク好きをさりげなく主張できる、程良い格好良さがある。
 そして走り始めるとさらに良い印象が積み重なって行く気持ちの良い乗り味に思わず頬が緩んでくる事に気付くだろう。ともかく同エンジン搭載車の中で飛び抜けて軽快なのである。

 右手のスロットルを開けると、良い意味で900cc かそれ以下の様な印象で軽々と吹き上がる。クランクマスの低減は絶妙で、俊敏なレスポンスを発揮しながらも、スムースさを失っていない点が素晴らしい。
 しかもスロットルをワイドオープンすると他のどの1200ccツインにも勝る爆発的な力強さでダッシュできるポテンシャルを持っているのである。車体が軽いこともあって、その豪快な走りはカフェレーサーとしてトップレベルの楽しさがある。
 ちなみにローギヤで5,000rpm回した時のスピードは54km/h。6速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は3,250rpmだった。市街地で普通に走るとエンジンの使用域はたいてい2,000rpm以下。ワイドオープンした時は特に4,000rpm前後のトルクが強烈である。
 クラッチの扱いも軽く、市街地でも気楽に乗れる程良い感覚も魅力的で、なぜか他の機種よりエンジンからの熱気もそれほど気にならなかったから不思議である。
 ハンドリングもとても素直で、交差点をひとつ右左折しただけでも、思いのままのラインをトレースできるスポーツバイクとしての資質の高さを実感。前述の出力特性と相まってエキサイティングかつ楽しい気分で快走でき、それをひとりで楽しめる自分が誇らしげに思えてくることだろう。
 メッツラー製装着タイヤも頼り甲斐のある高いグリップ性能を発揮してくれ、ワインディング路でも安心感が高い。
 ひとたびワイドオープンした時の加速力も強烈。そういえばイギリスのスラクストン・サーキットは高速サーキットで知られていると聞くが、そんなシーンでスポーツ走行を楽しむのに相応しい仕上がりなのではないかと、頭の中には勝手な想像が膨らんでくるのである。
 記者の体重が軽いせいか、前後サスペンションは少々硬めに感じられたが、フロントフォークとリヤショックは共にフルアジャスタブルな機能を備えているだけに、週末毎に自分好みのベストセッティングを見つける楽しみもまた侮れないと思えた。     
 ちょっとレベルの高い走りをクールに楽しむに相応しい。そんな大人の逸品的なプレミアム・カフェレーサーと言えるのである。

足つき性チェック(身長168cm)

ハンドルとシート、そしてステップとの位置関係はチャレンジャーの気持ちになれるスポーティーな雰囲気に溢れている。シート高は810mm。ご覧の通り両足の踵は少し浮いた状態になる。

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