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新型CRF250Lは本当に買いの1台かもしれない。 ヤマハ セローオーナーが感じたこと。

  • 2021/04/08
  • 大屋雄一
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2021年にフルモデルチェンジを実施したホンダのオン・オフロードモデル、CRF250L&CRF250ラリー。それぞれにシート高が異なる2種類がタイプ設定されており、バリエーションは全部で4種類となる。先に試乗したCRF250L〈s〉が好印象だったことから、今回はシート高が50mm低いスタンダード(従来のローダウン仕様=タイプLD)をテスト。ライバルと目されるセロー250最終型のオーナーが一刀両断!

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・CRF250L……¥599,500

上が今回試乗したSTD(無印)で、シート高は生産終了となったヤマハ・セロー250と同じ830mmを公称する。2021年モデルで競技用モトクロスマシンCRF450Rのイメージを踏襲したスタイリングに。
こちらはシート高が880mmの〈s〉で、基本設計はこちらをベースに行われた。ホイールトラベル量はSTDの235/230mmに対し、260/260mmに設定される。試乗インプレッションはこちらに→。https://motor-fan.jp/article/10018335
車体色はSTD、〈s〉ともにエクストリームレッドのみとなる。価格も同一だ。

舗装路ではモタードのような旋回力を発揮

筆者はつい最近、ツーリングセローのファイナルエディションを新車で購入した。特にオフロードで遊びたいわけではなく、この名車の最終型を手元に残しておきたいというジャーナリスト的な想いからだ。セローは225時代から何度も試乗しているので、走行性能や乗り味その他については体に染み付いており、納車時の感動は特になし。新車にもかかわらず、むしろ実家に帰ってきたような安心感すらあった。
そんな私が「あっ、失敗したかも……」と感じたのは、新しいCRF250Lにまたがった瞬間だった。車重はCRF250Lの140kgに対しスタンダードのセロー250は133kgを公称するが、ツーリングセローは大型のリヤキャリアやアドベンチャースクリーンなど純正アクセサリー各種を標準装備しているので、おそらく実測ではCRFとほぼ同等と思われる。よって、サイドスタンドからの引き起こしや取り回しで感じる重さがほとんど変わらないのだ。
シート高はCRF250L、セロー250とも830mmだが、乗車1Gでのサスとシートの沈み込み量の違いから、セローの方がわずかに足着き性がいいと感じる。ちなみにセローは主にリヤの車高が下がるのに対し、CRF250Lは前後サスがバランス良く沈むセッティングとなっている。
CRFのクラッチレバーを握った瞬間、思わず「軽っ!」と驚いた。これは2021年モデルから採用されたアシストスリッパークラッチの効果であり、明らかにセローよりも操作力が軽いのだ。そしてクラッチをつなぐと、セローとのエンジン性能の差が顕著になる。最高出力はCRFの24psに対して空冷のセローは20psと、その差はわずか4psだが、CRFの方が発進加速が圧倒的に力強くて速いのだ。念のためにギヤ比を計算したところ、1速での総減速比は両モデルともほぼ同じ。つまり、CRFは純粋にトルクが厚いと言えるだろう。
舗装路でのハンドリングは、セローがリヤ荷重の旧車的な舵角の付き方で向きを変えるのに対し、CRFは前後荷重が均等なイメージで、操縦次第ではモタードかと勘違いするほどフロントから気持ち良く旋回する。なお、シート高が50mm高いCRF250L〈s〉は、同じようなペースで峠道を走るとピッチングが大きいため、ブレーキングから倒し込み、そして立ち上がりに至るまでの動きが常にワンテンポ遅れる印象があったが、スタンダードのCRFにはそれがない。オンロードが主体なら〈s〉を選ぶ意味はほどんとないだろう。

抜群の足着き性により藪漕ぎもへっちゃら

身長175cmの筆者なら、CRF250Lでも両かかとが楽に接地する。しかも、エンジンはトルクフルでありながらスロットルの動きに対する低回転域でのマナーがいいので、セローが得意とする〝二輪二足〟的な藪漕ぎも楽にこなせてしまうのだ。よりハードな状況では、セローのホイールベースの短さ(CRF250Lより80mmも短い)や51度ものハンドル切れ角(CRFは現行モデルでは未発表だが先代は45度を公称)が生きるだろうが、おそらく一般ライダーがそこまでエクストリームな場所に入り込むことの方が稀だろう。なお、ホイールトラベル量はセローの225/180mmに対してCRF250Lは235/230mmとなっており、軽量かつしなやかになった新型フレームと合わせて、トータルでの悪路走破性はCRFに軍配が上がる。
高速道路の巡航性能もCRFの方がいい。トップギヤ(CRFは6速、セローは5速)で100km/hを出したときの回転数は、CRFが6,000rpm、セローが6,600rpmと1割程度の違いしかないが、最高出力発生回転数まであと900rpmしかないセローはほぼ全開で走っているような印象があり、さらにメカノイズや微振動も多めだ。これに対してCRFは、洗練された水冷のエンジンフィールに加えて優れた直進安定性や快適なライディングポジション(セローはシートのウレタンがソフトすぎてお尻の血行が悪くなりやすく、かつステップが高い位置にあるので膝の曲がりが窮屈)などにより、ロングツーリングも許容できるほど懐が深い。
この2021年モデルからCRF250Lはローダウン仕様のタイプLDがスタンダード(無印)になったのだが、その理由と意味について痛感する試乗となった。CRF450Rを祖とするアグレッシブな外観ではあるが、セローが得意とするコアなフィールドも許容するほどのポテンシャルを秘めている。これぞ王道のデュアルパーパスだ。

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