今日から覚えるエアレースの歴史。〜1930年 /♯01 レッドブルエアレース
- 2019/08/16
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MotorFan編集部
2003年からスタートしたレッドブルエアレース は2019年9月7日、8日に幕張で開催される大会で幕を降ろすことになった。これを機会にもう一度飛行機によるエアレースがどんな歴史を辿ってきたのか振り返ってみることにしたいと思う。
REPORT●後藤 武(GOTO Takeshi)
飛行機によるレースの歴史は古い。最初のレースは1909年、南フランスで行われた「Prix de Lagatinerie」だ。ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功してからわずか6年のことである。4機のエントリーがあったこのレースでは、ゴールまで飛ぶことができた機体はなかった。飛行機の完成度はまだ非常に低かったのである。
しかしこの後、航空機はゴールデンエイジ・アビエーションという時代に突入。エンジンや機体の設計が急速に進歩する。それに伴って世界中でエアレーシングが盛んになっていった。
最も有名なのは1913年からスタートしたシュナイダー・トロフィーだろう。水上機による世界最速決定戦ともいうべきこのレースには、イタリア、アメリカ、フランス、イギリスが参加。優勝した国が、次回の開催国となり、3回連続で優勝した時点でレースは終了。その国が栄冠を手にするということになっていた。幕張で開催されるレッドブルエアレースは、海上で開催されるが、100年以上も前に同じような光景がヨーロッパやアメリカで見られたのである。
シュナイダー・トロフィーは、水上機の可能性を追求する意味もあって、フロート付きの水上機が使われていた。フロートは大きな抵抗になるから陸上機に比べて速度が出ないように思われる。しかし、技術が発達していなかった当時、水上機と陸上機の差はあまり大きくなかった。逆に水上機の方が有利な点も少なくなかったのである。
引き込み脚がなかったこの当時は、陸上機でも脚とタイヤは期待から飛び出したままだったからフロートに負けないくらいの抵抗になった。また、離着陸距離を短縮するフラップもなかったから、スピードの速いレース機を着陸させるには長い滑走路が必要となり、陸上ではこれを確保することが問題となった。
最も重要な点はプロペラだ。速度によってプロペラのピッチ(角度)を変える可変ピッチプロペラはこの当時存在していなかった。そのため、レース機はプロペラピッチを最高速度にセットしたまま離陸をすることになった。最高速用にセットしたクルマで、トップギアからスタートするようなものである。
そのため、離水するまでに非常に長い距離が必要となった。そしてこの傾向は、飛行機の最高速度が速くなればなるほど顕著になっていったのである。
空気抵抗をギリギリまで低減するため、操縦席も動体に収まったようなデザインの機体が多く、離着陸時の視界は劣悪。更に高速で離着水しなければならなかったため、パイロット達には、非常に高い操縦技術が求められた。小さなうねりがあるだけでも機体は暴れまわり、時には水に突っ込んだりした。飛び立って戻ってくるだけで、毎回命がけのフライトとなった。
世界最速を争うこのレースでは、それぞれの国が軍隊の中にエアレースの為のスペシャルチームを編成。国の威信をかけてぶつかりあった。人々はこの戦いに熱狂し、レースが開催されると数万人の観衆が押し寄せてきたと言う。
シュナイダー・トロフィーでは、当初、フライングボートと呼ばれる飛行艇スタイルが主流だった。胴体が船になっている為、大きなフロートを取り付ける必要がなかったが、エンジンを高い位置に取り付けなければならない為、抵抗も大きく、大きなエンジンを取り付けるのも困難。速度を追求するにも限界があった。
そんな中、1923年に登場してきたのがアメリカのカーチスCR-3だ。流線型の胴体にハイパワーなエンジンを搭載。最初のCR-1は陸上のレーシングプレーンとして開発され、ピュッリツアートロフィーというレースで大活躍。この改造型CR-2にフロートを装着したのがCR-3である。この機体の速さは、ライバル達を圧倒し、1,2フィニッシュを達成してしまう。
他の国々の衝撃は大きかった。直ちにカーチスを元にした機体の開発が各国で行われたが、その次に開催された1925年の大会では更に高性能となったカーチスR3Cが登場。天才パイロット、ジミー・ドゥーリットル(後に東京初空襲のリーダーを務めた)の操縦もあり、手のつけられない速さを発揮。アメリカが二連勝を挙げる。映画「紅の豚」は、この当時のエアレーサーやパイロット達がモデルになったと言われている。
1920年にイタリアがサボイアS12で優勝した時の平均速度は172.6km。それがカーチスCR-3の時は285.29km/h。R3Cでは374.28km/hだから、この当時のレース機がどれだけの勢いで進化していたか分かるだろう。直線だけの速さでいえば、レッドブルエアレースの機体に迫るくらいの速さだ。
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