画面上で設計図面を3次元自由に回転させることができる。原寸で車両をイメージでき、同じ画面をスタッフ全員が共有できることはメリットだが、あるベテランエンジニアは「パッケージングは立体パズルであり想像力と絵心が物を言う」と言っていた。
Volkswagen ID.3
リヤに電動モーターと1段減速機構を置くRR(リヤモーター・リヤドライブ)である。オレンジ色の電線が高電圧系。フロントボンネット内はエアコンのコンプレッサーやEPS(電動パワーステアリング)ユニットなどが収まる。
赤丸内に「e-Golf」の文字。VWが公開した動画には、この文字を書くシーンがある。画面右はe-Golfの電池搭載要領。床下に収めているように見えるが、実際には前後シート下とセンタートンネルに電池が突出している。
赤い太線は筆者の追記。これが乗員の「足」を示している。足を置く部分はフロアパンが低く、電池を置く部分はもっとかさ上げされる。言い換えれば、MQBに電池を大量に積む工夫が「e-ゴルフ」の真骨頂だった。
オレンジ色の線(筆者の追記)はe-Golfの平面電池配置。青い線(同)がMEB。赤い線は床下サイドメンバーでありe-Golfはこれを避けて電池を積む。平面視で電池面積が広いためMEBはフロア構造が大きく変わった
「ID.3」の床下電池モジュール全体レイアウト。10等分された容積の1パック分を電池制御ユニットに充てている。電池の冷却はどう行なうのだろうか。電池モジュール全体にエアコンからの冷気を導くのだろうか。
L字型のアルミ押し出し材1種類の溶接で電池モジュールの4辺を作っている。この断面形状が工夫である。ダイキャストより安くできるだろう。飛び出したリップの部分に車体への取り付け穴が開いている。
電池パックの間にこうした凝った形状の樹脂部品が入る。なぜこういう形状なのだろうか。逆アーチの橋梁構造なのか、車室床側の都合なのか、冷却風の循環と電池温度分布の関係なのか……非常に興味が湧く。
電池パック天板に極性が刻印されているが、この天板はかなりの厚みがある。VWは電池内製のための試作工場を立ち上げたが、電池は中国のCATL製なのか、それともドイツ製なのか。このモジュールを中国で組み立てて陸上輸送する可能性もゼロではない。
こうした実物大表示できる大型ディスプレーが設計現場では当たり前になった。十数年前にVWの開発担当役員は「自分が担当する小さな部位しか画面に映し出されない点がCADの弊害だ」と語っていた。
画面上で設計図面を3次元自由に回転させることができる。原寸で車両をイメージでき、同じ画面をスタッフ全員が共有できることはメリットだが、あるベテランエンジニアは「パッケージングは立体パズルであり想像力と絵心が物を言う」と言っていた。
Volkswagen ID.3
リヤに電動モーターと1段減速機構を置くRR(リヤモーター・リヤドライブ)である。オレンジ色の電線が高電圧系。フロントボンネット内はエアコンのコンプレッサーやEPS(電動パワーステアリング)ユニットなどが収まる。