出力をトルク×回転数と定義するならば、回転を抑えてトルクで同じ出力を出すことは可能。ただし回転を抑えた分、トルクの発生ポイントも下げなければ意味がない。NAで高回転高出力を狙うには、排気管をタコ足にして排気脈動の転換点を上へ持っていく。回す必要がなければ極端に短い排気管でも構わない。
レシプロエンジンの間欠燃焼による回転変動振動を抑える目的のフライホイールは、トルクには何の貢献もしないばかりか、動力装置としては単なる錘に過ぎない。その慣性モーメントは回転上昇の妨げになるから、振動より出力を優先する高回転エンジンでは、素材を軽くした上に軽め孔を開けて軽量化を施す。
林義正先生
「力」とは、エネルギーを持っているけれどまだなにも結果がもたらされていないもの。「力」によって、物体がある距離を動くとはじめて「トルク」となる。トルクは一般的に移動角θで表される。同じ移動距離もしくは角度でも、移動するスピードが違えば、それは「出力」が違う。同じ「トルク」を発生していても、到達時間が短ければ「高出力」ということ。我々はクルマに乗っている時。たとえわずかな時間でも時間軸でエネルギーを感じている。言い換えればクルマの動力性能を「出力」で認識しているのだ。
レシプロエンジンのトルクは気筒容積でほぼ自動的に決定し、ボアやストロークとは関係ない。ロングストロークでトルクが出る、という迷信は、「同じボアでストロークを増やした場合のことを勘違いしているのでは」と林氏は語る。トルクは排気量でほぼ決まると同時に、超高回転まで回せば慣性吸気で吸入空気量が増え、トルクも出る。
左の仕様では最大トルクは4000rpmで400Nmを発揮し、最大出力は5300rpmで193kWを発生する。右の高出力仕様になると、最大出力は200rpm高い回転数で10kW高く、最大トルクは逆に低くなっているが5500rpmまで発生ポイントが高められている。ターボエンジンなので過給圧でトルクはいかようにも演出できるが、出力を上げるためには、よりエンジンを多く回し、最大トルクも高回転域に寄せなければならないのが一目瞭然。
今度はほぼ同排気量のディーゼルターボエンジン(左)とガソリンターボエンジン(右)との比較。排気量はDEの方が200cc少ないが、ほぼ同等のトルクを発生している。しかしガソリンエンジンが5700rpmで最高出力を発揮するのに対し、DEではその6割程度でしか回せないため、結果的に出力に倍以上の差が現れる。DEは排気量当たりの出力が稼げないので高速走行車には向かないが、代わりにボア径の制約がないため、排気量=トルクはいくらでも大きくすることができる。
出力をトルク×回転数と定義するならば、回転を抑えてトルクで同じ出力を出すことは可能。ただし回転を抑えた分、トルクの発生ポイントも下げなければ意味がない。NAで高回転高出力を狙うには、排気管をタコ足にして排気脈動の転換点を上へ持っていく。回す必要がなければ極端に短い排気管でも構わない。
レシプロエンジンの間欠燃焼による回転変動振動を抑える目的のフライホイールは、トルクには何の貢献もしないばかりか、動力装置としては単なる錘に過ぎない。その慣性モーメントは回転上昇の妨げになるから、振動より出力を優先する高回転エンジンでは、素材を軽くした上に軽め孔を開けて軽量化を施す。
林義正先生
「力」とは、エネルギーを持っているけれどまだなにも結果がもたらされていないもの。「力」によって、物体がある距離を動くとはじめて「トルク」となる。トルクは一般的に移動角θで表される。同じ移動距離もしくは角度でも、移動するスピードが違えば、それは「出力」が違う。同じ「トルク」を発生していても、到達時間が短ければ「高出力」ということ。我々はクルマに乗っている時。たとえわずかな時間でも時間軸でエネルギーを感じている。言い換えればクルマの動力性能を「出力」で認識しているのだ。