こんなにも変わっていない。もっと評価されていいはず、イタリア最古参ブランド!! 【V7 III ミラノ試乗レポ】昔のバイクはよかった……。そう嘆くなら迷わず選ぼうモトグッツィ!
- 2018/10/11
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MotorFan編集部
今夏、日本にもデリバリーが始まったモトグッツィの「V7 III ミラノ」に乗った。トラクションコントロールやABSといった現代的な装備を搭載しているものの、そのテイスティな乗り味はホンモノのクラシックバイクだと頷いてしまう。最新の排出ガス規制「EURO4」に適合しながら、こんなにも古めかしい。環境規制のため、昔ながらのバイクはもう作れない……。そう思って諦めてきたが、グッツィに限ってはそんなことなかった!
REPORT●青木タカオ(AOKI TAKAO) PHOTO●太宰吉崇(DAZAI YOSHITAKA)
モトグッツィ V7 III ミラノ……1,148,000円
ネオクラシックとかモダンレトロなバイクが注目を集めているが、昔からずっとスタンスを変えていないのが、現存するイタリア最古参のモーターサイクルブランド「MOTO GUZZI(モトグッツィ)」だ。オーソドックスな空冷OHV2バルブ90度Vツインを縦置きで車体に積み、ファイナルドライブをシャフト駆動にするという方式は、1967年の誕生した初代『V7』から変わらない。
どうしてモトグッツィのエンジンは、ずっと縦置きなのだろうか……!? エンジンを縦置きにすると、クランクシャフトとドライブシャフトの軸方向が同じになって効率が良く、回転方向を90度変換するのは、リヤハブにて一度だけで済む。また、クランクシャフトの回転が進む方向に向かって安定しようとするジャイロ効果が生まれ、直進安定性が高まる利点も。さらにヘッドが左右に張り出し、走行風がそれぞれのシリンダーへ均等に当たって冷却効率にも優れる。
ちなみにモトグッツィは2つの気筒をV字に90度開き、1次振動を打ち消し合う構造とするが、BMWのフラットツインでは180度=水平にまで広げ、2次振動までを解消しスムーズなエンジンにしている。両者ともエンジン縦置き+ドライブシャフトなのはバイクファンらの間では有名だが、こうした複数のメリットがあるから長い間、採用し続けているのだ。
そんなこと知っているよと、コアなバイク好きには言われてしまいそうだが、モトグッツィの評価が日本では低すぎる気がしてならない。だって、他にはもうないと言ってしまっていい、こんなにも同じものをコツコツつくっているメーカーは……。
昔も今も大きく変わらないシルエット
前置きが長くなってしまったが、モトグッツィはそんな技術を現代に受け継ぎ、半世紀以上が経った今も「V7シリーズ」をラインナップしている。
現行は2007年のミラノショーで発表され、現代の技術で蘇ったもの。鋼管ダブルクレードルフレームに、『ブレヴァV750』譲りの744ccOHV2バルブエンジンを搭載し、日本には2008年にセミアップハンドルの『V7 クラシック』がまず上陸。ただし排ガス規制との兼ね合いで輸入が一時中断され、規制対応モデルが発売されたのは2010年から。2015年にはトランスミッションを6速化した「V7 II」系へと進化し、2チャンネルABSやトラクションコントロールもこのとき新採用した。そして2017年に環境規制EURO4に適合しつつも10%の最高出力アップを果たした「V7 III」へとバージョンアップ。III となって初めて登場したのが『V7 III ミラノ』、日本のユーザーには今夏からデリバリーが始まったばかりのニューモデルだ。
シックなモノトーンだが光沢のあるタンクカラーで、マフラーやパッセンジャーグラブはクローム仕上げ。ブラックアウトされたエンジンによってコントラストが強調され、光沢がいっそう際立つ。前後フェンダーやサイドカバーはアルミ製で、隅々にまで高級感があり、落ち着いたムードのスタイル。バイク好きならモトグッツィだとすぐに分かるだろう、昔から変わらないシンプルな装いに好感が持てる。
エンジンを始動し、まず試してみたくなるのが、アクセルを吹かしてブルンっと一発。相変わらず車体が右へグラッと傾き、このクセがたまらない。シフトはスムーズに入り、乾式単板クラッチをスパンと繋ぐと、ゴロンゴロンと慣性マスの大きいクランクシャフトが回っているのが分かる気がして、マイルドなトルクと鼓動が心地良い。
街乗りの速度域では車体を振るわせているが、ハイスピードレンジに入ると振動がすっと消えて快適なクルージングが楽しめる。トップギヤ6速での100km/h巡航は3700rpmほどで、直進安定性の高さや90度Vツインの真価を充分に発揮するのは、もっとスピードを上げてからだ。
イタリア気質感じる身のこなしの軽さ
街乗りでも扱いやすく、かつて大排気量車として認識されたナナハンも、ジャストフィットのサイズに感じる。そして直進安定性が高いからといって、コーナリングが不得手なわけではない。アクセルを緩めて、シートへの荷重をイン寄りに意識してやれば、車体は軽快に寝ていく。
クルーザー然とした落ち着いたハンドリングながら、コーナーではアグレシッブな走りが楽しめるのは、さすがはイタリア生まれ。バンク角は充分深く、最初にセンタースタンドが路面に接するが、そこからまだまだ寝かし込め、フルバンク中にギャップを拾っても前後サスと車体が衝撃をスポイルし、狙ったラインを外さない。
どこかが尖っているわけではない、まるでお手本のようなトータルバランスの高さ。街乗りだけではもったいない。もしオーナーになったら、高速道路を使ってワインディングに出掛ける頻度が増えるだろう。そして今の時代に、このオーソドックスなオートバイを新車で手に入れたことを幸運だったと思うはずだ。
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