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鉄スクーター代表 ラビットってどんなバイク? ライバル ベスパと比較してみた。 ラビットのライバルはベスパ? イタリア産と国産の鉄スクーターを比べてみよう。

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左がラビット・スーパーフロー125、右がベスパ125ET3。永遠のライバルだ!

現代の路上でもしっかり現役で走れるとわかったラビットS301。では同じ鉄スクーターのライバルと比較すると、どうだろう? 今でも中古車が比較的買いやすい状況にある鉄スクーターといえば、イタリアのベスパだろう。クラシカルなビンテージシリーズは買いやすい状況でラビットと比較しやすい。では見て乗って違いを感じてみよう。

ベスパのビンテージシリーズ最大排気量だった125ET3。現車は最終モデルだ。

悩めるビンテージ御三家。富士重工、三菱、ベスパ

ビンテージシリーズは1960年代に生まれ、2000年まで日本向けに生産された長寿モデル。
 50年以上も前に生産されたラビットは、意外にも現代の路上でまともに使うことができる乗り物だとわかった。そこで中古車を探してみると、全国に10台以上の中古車が見つかる。例えばS301であれば20万円代半ばから40万円くらいの間で流通している。もし仮に40万円でラビットを買ったとしても、このコーナーで紹介したようにラビット特有のトラブルが出ないとは限らない。何らかのトラブルは覚悟してほしい。
 40万円も出してトラブルが高確率でやってくるとなると、ちょっと考えてしまうかもしれない。では、同じ予算で違う鉄スクーターはないのだろうか? 新車販売時にラビットのライバルだったのは三菱シルバーピジョンだが、こちらは中古車として販売されている数はごく僅か。あまり一般的な買い物ではない。それよりも、鉄ボディのスクーターという意味でベスパに注目してみよう。
 ベスパは今でも新車が買える。確かにそれらはクラシカルなスタイルをしている。でも本当の意味でクラシカルな存在といえば、2000年まで日本向けに生産が続けられたビンテージシリーズにトドメを刺す。ビンテージシリーズとは鉄製のスモールボディに50cc、100cc、125ccと3種のエンジンを搭載したハンドチェンジモデル。いずれかのモデルなら、まだまだ中古車が豊富に揃っているはずだ。その中で、今回は同じ排気量であるベスパ125ET3をラビットと同じ舞台に立たせてみよう。

ハンドシフトがビンテージの証

クラッチレバーを握りながらグリップを回転させてシフトチェンジするハンドシフト。
 ベスパといえば、左グリップでシフトチェンジを行うハンドシフトを採用している。でもこれ、ラビットも通常の3速や4速モデルなら同じこと。スーパーフローのようなトルコンモデルはベスパにない。ある意味、ラビットのが進んでいたのだ。
 ハンドシフトは慣れるまで時間がかかるかもしれないが、慣れてしまえば左足でシフトするのと同じくらい自然に操作できる。走行中に力が入ってギアが抜けてしまいそうだが、これも実際走るとそんなことは滅多にない。それより怖いのは、各種ワイヤーが切れること。ハンドチェンジモデルならラビットも同様だが、クラッチレバーに1本、シフトチェンジ用に2本のワイヤーがグリップの中からボディの中を通ってエンジンまで繋がっている。これが切れると悲劇で、グリップかエンジン側どちらかから残りのワイヤーを引き出し、新しいワイヤーを入れ直さなければならない。これを出先で行えるようになれば立派な鉄スクーター乗りと呼べるのだ。
 これはラビット、ベスパいずれも同じなので差はほぼナシだ。

上がラビット、下がベスパのキーシリンダーだ。

キーシリンダーを見比べる

 ラビット・ベスパのライバル対決。まず操作系でいうとキーシリンダーがまるで違う。写真上はラビットS301で、キーを差し込み1段回すとイグニッションオン。この状態でセルを回せばエンジンがかかる。さらに2段回せるようになっており、次がスモールライト点灯、その次がヘッドライト点灯と、キーでヘッドライトを操作できるようになっている。だが、イグニッションはバッテリーカバーの上パネル右にある。走行中は操作しにくい位置といえる。
 変わって写真下のベスパET3ではメーターの上にキーシリンダーがある。キーを差し込み1段回すとイグニッションオンになる。この状態でキックペダルを踏み込むとエンジンが始動する。ベスパはバッテリーレス構造。ゆえにセルはないが、バッテリーを気にせず保管できる。またラビットと違ってヘッドライトは右グリップのスイッチで操作する。走行中でも操作しやすいので、ラビットより使いやすい。

上がラビットS301、下がベスパET3のエンジン。ラビットは車体中央に、ベスパは車体右にオフセットして搭載。

2台のエンジンを掛けてみる

 ではエンジンをかけてみよう。ラビットはキーを1段回してセルスターターを押す。冷間時はキーシリンダーの左にあるスターターボタン(チョークノブ)を引くと、始動性が良くなる。一度温まればスターターボタンを引く必要はない。ラビットのアイドリング回転は低く、メーター内の赤いインジケーターが点灯する。これはスロットルを開けると消灯して充電していることを教えてくれる。
 対してベスパはキーを回してキックレバーを踏み下ろす。やはり冷間時はシート下のチョークノブを引くと始動性が良くなる。アイドリング回転数は低くも高くもない状態がベスト。ベスパにはバッテリーがないため、ラビットのようなインジケーターはない。
 ラビットS301の最終モデルであるスーパーフロー125は車両重量が120kgある。対してベスパ125ET3の車両重量は73kgしかない。その差は47kgにもなり、小柄な女性ひとり分ラビットが重いことになる。これは発進時や加速時の性能差になって現れる。ラビットは信号ダッシュがスーパーカブ50並みであるのに、ベスパは国産90ccスクーターくらいに元気が良い。また走行中の加速についてもラビットは緩慢に車速が伸びる感覚だが、ベスパは加速力に鋭さを感じる。動力性能については明らかにベスパが上だ。

上がラビットS301のフロントタイヤ、下がベスパET3のフロントタイヤ。

走りのキャラはまったく異なる

 走り出して感じる足回りの違いはどうだろう。
 まずラビットは前にも書いたように乗り心地が非常に良い。同時期の4輪であるスバル360も同様の傾向で「スバル・クッション」という言葉が生まれたほど。ラビットのフロントサスペンションは3つ又アームとリンク部品、それにショックユニットで構成されている。対してベスパは長い1本のパイプが伸び、ホイール部にリンク部品が付いて上下動する。これをショックユニットで支えている。これだけでもラビットのサスペンションストロークが長いとお分かりいただけよう。またショックユニットの減衰力は穏やかな設定だ。
対してベスパは乗り心地が良くない。悪いとまで言わなくても、硬い部類だ。それはフロントサスペンションのストロークが短いことに端的で、上下動はほぼしない。リヤサスペンションもラビットはソフトでベスパはハードという印象。
 この足回りの動きはブレーキ性能によっても印象が異なる。ラビットとベスパともに前後ともドラムブレーキ。どちらもリヤブレーキを主体に使うのだが、ラビットはフロントも結構効いてくれるので、フロントブレーキだけで速度を調整できる。対してベスパはフロントがほぼ効かない。フロントブレーキだけ握ると、サスペンションが大袈裟に沈むものの速度が落ちているのを実感しづらい。
 またタイヤはどちらも10インチだが、ラビットは3.50サイズでベスパは3.00サイズ。これはそのままハンドリングに現れる。ラビットは直進性が強く、素直な倒し込みだが安定志向。対してベスパは軽快なハンドリングが身上で、ヒラヒラとコーナーを駆け抜けていく。
 総合的にベスパはスポーティでラビットは安定志向。どちらがいいかは個人の好みが大きいだろう。

ベスパ125ET3のシートは標準でタンデム可能。クッションは結構固い。
 ではシートはどうだろう。
 ラビットは前回にも書いたので重複するが、とにかくブ厚くクッション性が良い。足つき性を悪化させているが、それを差し引いても疲れ知らずな形状とクッションを実現している。片道3時間のツーリングでもお尻は痛くならなかった。
 対してベスパのシートは細身のため足つき性は良好。だが高さがあるためポジションが腰高となり自然と前傾気味の姿勢になる。完全な殿様乗りになるラビットと正反対で、スポーツバイクのようなポジションになるのがベスパだ。だからだろう、ベスパは2時間も乗らないうちにお尻が痛くなる。

シート下に配置される燃料タンク。上がラビットで下がベスパだ。

燃費はベスパが優勢か?

ラビットはシート後ろの台座を上げるとトランクスペースが確保されている。
 ではシートの下にどちらも配置されている燃料タンクを見てみよう。
 まず写真上のラビットは、ご丁寧に残量計が装備されている。グリーンで示されたガソリン残量は、とても見やすい。タンク容量は8リッターだが、実際そこまで入らない。7リッターも入れると走行中にガソリンがあふれた事がある。またラビットはガソリンにオイルを混ぜる混合方式。ガソリン25対オイル1の比率。燃費は実走行をもとに計算して、大体20km/Lから30km/L。
 対してベスパはキャップがあるだけで残量は推測するしかない。タンク容量は5リッターでラビット同様にオイルを混ぜる混合方式。ガソリン50対オイル1の比率なのでラビットの半分で済む。燃費は実走行をもとに計算すると悪くて30km/L、ツーリング時には40km/Lを超えたこともある。オイル量が少なく燃費も良いベスパはラビットより経済的だ。
 また、タンクと隣り合わさるトランクスペースだが、ベスパは写真でわかるように、タンク手前に筒があるだけ。混合用オイルとメジャーカップを入れるくらいしか入らない。対してラビットはシート後ろのタンデムバーが付くフタを開けるとトランクスペースになっている。底は浅いが、工具を入れることもできる。燃費はベスパ、積載性はラビットが上だ。

 結論として、スポーティなハンドリングと経済性で選ぶならベスパ、若干経済性が悪くても安楽にツーリングを楽しんだり荷物を運ぶならラビット、というところ。とはいえ、どちらも楽しいバイクなので、ぜひ2台とも乗っていただきたい!

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