ホンダ NSR50/80のライバル、「YSR50/80」を知る。 1980年代に活躍したヤマハ YSR50/80、50ccなのにスペックが本気すぎる。
- 2019/12/24
- MotorFan編集部 北 秀昭
バイクブーム&レーサーレプリカ人気が真っ只中の1986年(昭和61年)に登場した「ヤマハ YSR50/80」は、ロードレースの最高峰・世界GPに参戦していたヤマハのワークスモデル「YZR500」の縮小版として、レースファンやミニバイクレーサーに支持された50cc/80ccスポーツモデル。空冷ながら、7馬力(80は8.8馬力)を発揮する2ストローク単気筒エンジン、サーキットでも使える5速ミッション、フロントディスクブレーキなど、本格的なスポーツ走行も可能にするスペックを備え、ミニバイクレース(12インチクラス)の定番モデルにもなった。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
「12インチ車=GPレーサーの登竜門」とレース関係者にも言わしめた、元祖12インチモデル・ヤマハ YSR50/80
1986年(平成61年)登場
ヤマハ・レーシング・テクノロジー。その結晶、「YZR500」のエッセンスを全身に受け継ぎ、ライディング・スポーツに新しい風を吹き込む……(YSR50/80のカタログより)。
日本全国にバイクブーム、そしてレーサーレプリカブームが吹き荒れた、1986年(昭和61年)にリリースされた50ccモデル「YSR50(3月発売)」と、80ccモデル「YSR80(9月発売)」は、ヤマハの世界GPワークスマシン「YZR500」のミニ版として登場したレーサーレプリカだ。
前後ホイールは、YSR50/80発売の1ヶ月前(2月発売)に登場した「スズキ GAG」の10インチよりも大径の、12インチに設定。ボディサイズも非常にコンパクトで、全長は同社の50ccフルサイズスポーツモデル「RZ50」よりも340mm短い、1570mmに設計されている。
ミニマムサイズながら、“レーサーレプリカならでは”の本格的な装備
フレームは角型鋼管を採用した、新設計のダイヤモンドタイプ。これに角型のスイングアーム、モノクロス型リアショックを組み合わせ。
ミッションは5速を採用。左右のステップ&ステップ周りは軽量なアルミとし、チェンジペダルはレーサーと同様、リンクを介さないダイレクトタイプが導入されている。
フルカウルの外装は、前年にデビューした兄貴分「TZR250」に似た、レーサーそのものの、アグレッシブなフォルムにデザインされているのがポイントだ。
エンジンはヤマハのアメリカンモデル「RX50/80」用をリファインした、空冷2ストローク単気筒を採用。50ccモデルは、空冷4ストロークエンジン搭載の「スズキ GAG」を遥かに上回る、7馬力(GAGは5.4馬力)を発揮。マフラーはスポーティなチャンバータイプを装備している。
YSR50/80には、吸気側にチャンバーを設置し、吸気効率を向上させるための「YEIS(Yamaha Energy Induction System)も採用済み(ヤマハのスポーツモデル・RZ50などにも採用)。
フロントは正立型フォークに、油圧式ディスクブレーキを採用(リアブレーキはドラム式)。前後ホイールは、ミニバイクレースブームの先駆けとなった“12インチ”を採用。タイヤはフロントに3.50-12、リアに4.00-12の各サイズをチョイス。
トップブリッジにクリップオンされたセパレートハンドル、透過照明式のホワイトメーターなど、レーサー然としたハンドル周りも特徴的。
1986年(昭和61年) これがヤマハのGP500ファクトリーマシン「YZR500」
1985年の同型モデルを発展させた、ヤマハのGP500ファクトリーマシン「YZR500」。V型4気筒エンジンのさらなる出力向上、車体ディメンションの最適化、シート形状の変更などが施され、ロードレースの最高峰「世界GP 500ccクラス」では、エディ・ローソンが2年振り、2度目の世界チャンピオンを獲得した。
エンジンは水冷2ストロークV型4気筒499cc。クランクケースリードバルブ、6速トランスミッションを採用。最高出力は145馬力以上。
コスパの高いYSR50/80は「ホンダ NSR50/80」のライバルとして、ミニバイクレースでも大活躍!
YSR50/80は、発売とともに大ヒット。特に全国のサーキットでは、YSR50を駆った若きレーサーたちが大挙して出場し、ミニバイクレースの主役は、YSR50が出場する12インチクラスとなった。
YSR50/80が登場した翌年の1987年(昭和62年)、ホンダが水冷2ストロークエンジン搭載の7.2馬力モデル「NSR50」をリリース。サーキットでは12インチクラスの人気が増し、原田哲也、加藤大治郎、中野真矢、ノリック(阿部典史)、青木三兄弟など、世界を舞台に活躍した偉大な日本人ライダーを続々と排出。『12インチ車=GPレーサーの登竜門』というイメージを確固たるものにした。
なお、1987年(昭和62年)に発売されたNSR50の価格は21万9000円。一方、YSR50は18万9000円(YSR80は21万9000円)。7.2馬力の水冷エンジンやディスク式リアブレーキなど、NSR50は“価格に見合った”徹底したつくりが特徴。
YSR50は空冷7馬力エンジンやドラム式リアブレーキなど、NSR50よりも機能面でハンデを背負っていたが、「NSR50よりも3万円安い」「NSR50に比べてコストパフォーマンスが高い」「オレはヤマハ党」などの理由から、“レースではNSR50が優勢”だったものの、多くのミニバイクレーサーたちに支持された。
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