新型KTM 1290スーパーDUKE R|エンジンとフレームから読み解くKTMの実力
- 2020/03/10
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MotorFan編集部
2020年春以降に国内導入予定の新型KTM1290スーパーDUKE R。海外試乗会においてその実車に触れるとともに、開発陣に話を聞くことができた。
KTM 1290スーパーDUKE R
オフロードで手に入れた数々の栄光
KTMというメーカーは言わずと知れたオフロード……。
いや。今現在はロードレース最高峰であるMotoGPクラスに、レッドブルをスポンサーにファクトリー参戦しているのだから、もしかするとバリバリのオンロードメーカーと思っている方も少なくないかもしれない。
しかし、そのルーツは完全にオフロードである。モトクロスやエンデューロ、特にシングルエンジンが得意であった印象が強いが、世界選手権、そしてAMAのスーパークロス制覇等、現在進行形でオフロードのトップブランドである。
80年代からダカールラリーにも積極的に参戦し、数々の栄冠を獲得。ビッグオフのジャンルでも不動の地位を築き上げた。
現在、レギュレーションの関係でダカールラリーは450㏄までのシングルエンジンでの戦いとなっているが、以前はツインエンジンのマシンも数多く参戦。KTMも2000年代にはVツインエンジンを投入し、そのレプリカモデルも発売されていた。(現在の1290スーパーアドベンチャーがその血統を伝承した最新モデルである)
LC8=リキッドクールド8バルブエンジン
そのエンジンがルーツとなるLC8と呼ばれるVツインエンジンを搭載したモデルがスーパーデュークである。ちなみにLC8とはリキッドクールド8バルブエンジンの略であり、シンプルに水冷8バルブエンジンといった意味となる。
先にリリースされていたシングルエンジンを搭載したDUKE同様、オフロードマシンとオンロードマシンのミックスといったイメージで、そのマシンの歴史はスタートしている。
しかし、990時代のスーパーデュークは実にスパルタンなマシンであった。ハードなサスペンション&車体設定にレスポンスの良すぎるエンジン。出力特性はトルクがないわけではなかったが、アクセルをオンの方向に回しているときのみ有効といったキャラクターで、低中速でアクセルを中途半端に開け閉めするような、日本での市街地走行等では非常にギクシャクして扱い辛かった。
反面、開けること。そしてしっかり荷重をかけることを前提とした走行ではReady To Raceを感じさせる割り切ったキャラクターで、マニアックではあるが、非常にエキサイティングで楽しいマシンとなっていた。
MotoGP譲りのテクノロジーが凝縮
そんなスーパーデュークが大きく変わったのが2014年発売の1290からである。
エンジンの排気量アップに加え、車体もデザインも全て刷新。パワーアップは当然ながら、コントロール性の高いフレンドリーなマシンとなっており、スペインで行われた発表試乗会に参加して非常に驚いた記憶がある。
そのことをあるエンジニアに言うと「ちょっと前まではオンロードのこと、よくわからなかったんだよね~」というまさかのコメント……。
2017年にはより熟成された2.0へと進化。そして2020年モデルの3.0では、大幅なイメージチェンジこそ行っていないものの、じつはフルモデルチェンジと言っても差し支えない改良が与えられている。
KTMの市販モデルは全て同胞のキスカデザインにてデザインされる。デザイン料が高いのか安いのかは聞くことが出来なかったが、あまりコロコロとスタイリングを変えないところが特徴でもある。
新型もキープコンセプトのイメージではあるが、その多くを改良している。外装パーツは全て刷新。それはデザイン変更という作業だけでなく、材料を薄くする等の細かい積み重ねにより軽量化を促進する。
タンクやフロント周りのデザインは高速域でダウンフォースを生み出す設計となっており、最新のMotoGP等で得られたノウハウも取り入られている。
熟成を重ねた新型エンジン
しかし、最も大きな変更は車体周りである。メインフレームはKTM伝統のクロモリパイプをつなぎ合わせたトレリスフレームに変わりはないが、全く新しいデザインに変更。エンジンをストレスメンバーとしてより積極的に利用することなどで、従来比で3倍もの剛性が与えられている。
また、リヤのシートレールはトレリスタイプのものからアルミ製に変更。すっきりとしてコンパクトなリヤ回りと軽量化を実現した。
ちなみにトレリスフレームはMotoGPマシンにも採用されており、その手法を用いるのは現在KTMだけとなっている。オフロードでも頑なにパイプフレームを使い続けたKTM。日本製モトクロッサーがすべてアルミフレームに移行する中それで戦い続けたKTMであるが、当時は賛否もあったものの、チャンピオン獲得によってその雑音をすべて跳ね返した経緯がある。
また、エンジン搭載位置も38㎜アップされ、運動性を向上。スイングアームピボット位置も5㎜(エンジン位置と合わせると43㎜)上昇し、アンチスクワット効果をより高めた。
リヤショックマウントは従来型の直付けからリンクを介した取り付け法に変更し、フルアジャスタブルのショックを、より幅広い走行状況に対応出来る構造としている。
そんな車体に搭載されるエンジンは、排気量にこそ変更はないものの、ヘッド回りはもちろん、ピストン、クランクシャフト、クラッチ回り等、ほぼ全てに手が入る。エアボックスも大型化され、エアフローも効率化。そして得られたパワーは従来比プラス 馬力となる180馬力を発揮。
また、電子制御系もアップデートされている。4軸だったIMUは6軸となり、さらに細かいトラクションコントロールの選択やコーナーリングABSの精度を増している。
ライディングモードもレイン、ストリート、スポーツ、トラックの他にパフォーマンスが選択可能のほか、アクセルのレスポンスも細かく調整が可能となる。
そのほかにもホイール変更によるバネ下重量の軽減を実現。これは軽量化だけでなく、様々なホイールをテストした中で最適な剛性バランスを持つものをチョイスするという拘りようだ。
このような、非常に細かい積み重ねによるアップデートはまるでレーシングマシンを開発しているような作業であるが、これこそがKTMらしさの真骨頂でもある。
まさにReady To Raceを地で行くメーカーの作り上げた渾身のマシンとなっているのだ。
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