【インプレ】スズキV-STROM1000→V-STROM1050 に進化! でも排気量は変わらず。新型ブイストロームをたっぷり解説。
- 2020/05/29
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青木タカオ
熟成のVツインに電子制御をプラスし、総合力アップ!!
スタートスイッチを押せば、エンジンは確実に目覚める。たとえしっかりスターターボタンを押せてなくとも、スターターモーターが一定時間回転し、ECMが始動状況を認識し制御する「スズキイージースタートシステム」を搭載するからだ。
さらに発進にも気を遣う必要はない。極低回転でクラッチをつなぐと、自動的にエンジンの回転数を上げてくれる「ローRPMアシスト」により、クラッチミートさせるまでの瞬間もエンジン回転の落ち込みを気にしないで済む。Uターンや渋滞時の低速走行などでありがたい電子制御サポートは、決してビギナーだけのためでなく、上級者もロングライドで疲労軽減につながる。
90度VツインDOHC4バルブエンジンは排気量1036cc。車名でこそ1000→1050 となったが、100.0mm×66.0mm のボア・ストロークは変わらない。電子制御スロットルを採用し、吸排気タイミングの見直しで出力をピークパワーを7PS向上。99PS/8,000rpm→106PS/8,500rpmとした。
SDMS(スズキドライブモードセレクター)を新たに搭載し、3つの出力特性をライダーは選択できる。スロットルレスポンスが最もシャープで、全スロットル開度で最大限のエンジン出力が得られるのが「Aモード」。スロットル開度中間域で、レスポンスをややマイルドな特性にした「Bモード」。そしてさらに穏やかな「Cモード」としている。
筆者の場合は「Aモード」がキビキビ走ってくれて、むしろ扱いやすい。レスポンスが曖昧になる「Cモード」に設定すると、アクセルを大きく開けがちになり、かえって億劫。ただし、それはコンディションの良いときだから言えるのだろう。スロットル操作に気を遣わなくてはならない雨天や荒れた路面では、「Bモード」や「Cモード」が役立つはず。そのへんの味付けは欧州で定評のあるスズキVストロームだから、秀逸であるに決まっている。もっと長丁場を走ればまた印象が変わってきそうだ。
トラクションコントロールも3モード+OFFから介入レベルを選択できる。最小限に介入するのがモード1、シティランで最適なバランスを提供するモード2、ウェット路面など滑りやすい路面向けで最大限のトラクションコントロールをおこなうのがモード3となる。
冒険心を刺激する堅牢なテーパーハンドルバーを標準装備。多機能インストルメントパネルの上には、エンジン回転インジケーターランプも配備した。任意の回転数で点灯するようプログラムができる。燃料タンク容量は20Lを確保。従来型と変わらない。
SDMS(スズキドライブモードセレクター)やトラクションコントロールは、軽量コンパクトなフル液晶ディスプレイとハンドル左のセレクターボタンで直感的に設定できたことも報告しておきたい。SDMSおよびトラクションコントロールのモードは、タコメーターの右下に集中し表示され、どのモードが選択されているか一目で確認できた。
スピードメーターは右上、ギヤポジションはタコメーター中央に表示。時計と外気温が常に表示されるのも旅の相棒としてはとてもいい。「Vストローム1050」は背景が白、XTだと背景が黒の液晶になる。
1997年のTL1000Sから受け継ぐセミカムギヤトレイン採用のVツインエンジンは、これまでも定評あるスズキ自慢のパワーユニットだが、新型「Vストローム1050」では低中回転域では扱いやすく、高回転域では高揚感があって熟成の域に達している。ゆったりと走っていると鼓動感もあって、アクセルを開けたときはきっちりと応えてくれるトルクフィールは秀逸だ。
ジャジャ馬とも言えたリッターVツインも、2014年に996→1036cc化し、カムプロフィールを変更するなどし、アドベンチャーの心臓部として相応しいものへと進化を遂げている。
吸・排気ともにカムプロフィール、カムタイミングを見直し、バルブリフト量を増加。バルブタイミングを最適化し、オーバーラップを減らすことで燃焼効率を向上させているのだ。
軽量化と剛性を両立したボア径100mmのピストンは、軽量・コンパクトな薄型。上部にはアルマイト処理(陽極酸化)を施し、耐久性を向上した。メカニカルロス低減と信頼性を高めたピストンリングを組み合わせている。
インナーチューブ径43mm のKYB製倒立フロントフォークは、無段階のダンピングアジャスターとスプリングプリロードアジャスターを装備。初期荷重ではしなやかに動き、奥ではしっかりと踏ん張りが効く。フロントブレーキはラジアルマウントモノブロックキャリパーと310mmフローティングマウントディスクという組み合わせ。一線級の足まわりで、制動力やタッチ、コントロール性に不満などあるはずがない。
10スポークアルミニウムキャストホイールを装備し、タイヤはブリヂストンBATTLAX ADVENTURE41。軽快なハンドリングを実現している。
リヤサスペンションはKYB製リンク式モノショック。伸び側減衰力調整機構やノブ式プリロードアジャスターを備え、タンデムや荷物積載時、また路面状況に合わせた細かなセッティングを可能としている。
リヤブレーキは260mmディスクローターを採用。バネ下重量の軽減に貢献するアルミ製スイングアームや10スポークアルミニウムキャストホイールもまた、高い運動性能をもたらしている。
前後サスペンションはソフトにセッティングされ、乗り心地が良く快適。スピードレンジを上げ、ハードに走りたいならプリロードをあげるという方法もあるだろう。
また総合力が高く、メーター横にUSB電源を備えるなど細かいところを見ても、まさに旅の百戦錬磨といった印象。開発陣が目指したのは「万能性」「日常的な扱い易さ」「走行性能」が高次元で調和され、誰もが認める最高のスポーツアドベンチャー ツアラーモデル。買ったらとことん付き合える、そんなモデルに仕上がっていて、さすがスズキVストロームの新型フラッグシップだ。次回は「Vストローム1050XT」を紹介しよう。
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。最新バイク情報をビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説し、休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持されている。現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアにて執筆中、バイク関連著書もある。
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