【本当にお得だったのか?】5万円で譲ってもらったベスパ(放置数年、サビ穴だらけ!)の程度を自己診断してみた。
- 2020/06/16
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増田満
ラビットやシルバーピジョンなど、スチールボディのスクーターを「鉄スク」と呼ぶ。当然、鉄スクは古いモデルばかりなので、経年により錆びる。サビだらけのボディにも味があるけれど、動かなくては話にならない。そこでイタリア産鉄スクの代表であるベスパを題材に、鉄スクを復活させる手段や方法を考えてみよう。
こちらでは何度か、自ら所有するラビットやベスパの記事を紹介したので、ご記憶の方もいるだろう。昔からバイクは大好きだけど、同時にベスパやラビットなどの鉄スクーターも大好きだった。だからベスパはすでに2台乗り継いでいるし、ラビットは紹介したように全バラによるレストアを施した。そんな筆者だからか、またある出会いに恵まれた。
出会いの経緯は以下の通り。まず筆者、最近になって山と川しかないような田舎へ引っ越した。住み良い環境を求めての引っ越しだったが、同時に広いスペースを確保してバラバラに置いていたポンコツたちを一か所に置きたかったというのも理由の一つ。引っ越した先で新たな道を走る最中、フト目に気になるモノが見えた。バイクを左に寄せて来た道を戻ると、そこにはガソリンスタンドが。スタンド脇にある建物のガラス越しにベスパが見えたのだ。それが写真の姿なのだ。
その後も気になって、ガソリンスタンドの前を通るたびに立ち寄って見せてもらっていた。すると、店主から「欲しいなら譲るよ」との言葉をいただいた。こちらから譲ってというのもナンだし、何も言わずに見せてもらっていたから、この言葉は嬉しさ以外の何者でもない。
もちろん「はい、譲ってください」と即答したものの、値段交渉が待っている。その前に状態を良く見せてもらおうと、細部に目をやってみる。すると走行距離は1.6万kmで、前オーナーがガソリンスタンドのお客さんだったとか。前オーナーが老齢のため乗らなくなると、ガソリンスタンド店主が譲り受けたのだという。それから数年が経つものの、屋内に置いていたので劣化は止まっているとのことだ。
「それまで動いていたから、たぶんエンジンはかかるんじゃないかな」という店主の言葉だが、放置して数年経つバイクだから油断はできない。ただ走行距離なりに程度は悪くないようだ。これなら気長に直せば復活させられそう。でも引っ越したばかりで予算は限られている。なんとか5万円以内にしてもらって引き取ってきたのだ。
P125Xは1978年に発売された新世代ハンドチェンジ・ベスパで、125のほかに200や150も存在する。長らく不人気モデルで中古車価格も安めだったのだが、それも昔のこと。試しにヤフオクをチェックしてみると、売りに出ているP125は1台しかなく、程度も悪くないため値段は27万円スタート。もっと程度の悪いものが出てきても10万円を下回ることはなさそう。ずいぶんと人気が出たものだ。
とはいえ我がP125Xは歴とした不動車。まずは洗車して細部まで状態を確認してみよう。
洗車の基本は、車体の上から下へ洗っていくこと。ミラーは外れていたのでハンドル周りからスタートすると、なぜかアクセルグリップが途中までしか入っていないことが判明。何かしらトラブルが出て外したはいいけれど、最後まで入れられずに諦めたのだろう。
ハンドルの下にはPシリーズらしくトランクがある。キーでロックを解除してフタを開けると、まぁ想像していた通りで汚れ放題といったところ。純正の空気入れが入っていたのはラッキーだが、もう抜けてしまって使い物にならないから、オブジェにでもしよう。そのほか内部のモノを取り出して大掃除しよう。
トランクの内部をカラにして水をかけながら洗っていると、やはり奥の部分に赤いサビを発見。ブツブツと塗装を押し破ってサビが侵食してきているから、早めに処置しないと腐食して穴が開くこと間違いない。これは次の作業でトランクを外すようだ。
すでにシートがキレイな状態であることは確認済み。ではシートを上げて燃料タンクを見てみよう。シートを持ち上げたところ、意外なほどシート下にサビはない。ロック部分が黒くなっているのは、ステーを装着してボックスを装備していた名残。キレイにすべきか思案中だが、これなら大掛かりな再塗装は必要ないだろう。
では給油口を空けてタンク内部を確認してみよう。古いバイクの場合は燃料タンクが錆びて、穴が空いていることもザラにある。そうなると修理が大変なので事前にチェックしておこうというわけ。すると、意外なほどサビがない! これはタンクの状態が最高に良いと言えるだろう。ガソリンスタンド店主がガソリンを抜いておいてくれた成果だ。
ではシート下の左右にあるフードを取り外してスチールフレームやエンジンなどの状態を確認しよう。フードはフロア側にあるノブを引きながら回せばロックから外れてくれるので、リヤ側の突起をボディの穴から抜けばいい。
内部はうっすらとサビがあるものの、汚れとクモの巣だらけなことくらいで。致命的な腐食はないようだ。ホッとする。
左側にはスペアタイヤと電装部品が配置されている。スペアタイヤとスペアタイヤカバーを外して内部まで徹底的に洗おう。すると、内部の配線が一つユルユルになっていることを発見。後でギボシを交換するなど対処することに決定。
車体の右側にはエンジンがある。フレームが大きくえぐられてはいるが、エンジンは右にオフセットして搭載されているのだ。でも不思議なことに、走り出して右が重いとは感じないはず。よくできたものだ。
エンジンの上にはキャブレターが配置されている。通常はエアクリーナーボックスにあるネジを回すだけでアイドリング調整が可能な構造だ。ただ、エアクリーナーのダクトが破れている。大きな問題にはならないだろうが、心理的に良くないし、シビアなセッティングには不可欠だと思われるので新品に交換しよう。
車体の前に回ってフロントタイヤを確認しよう。まだ山はあるものの、サイドウォールに亀裂が走っている。触ってみても固くなっているので、これは問答無用で交換だろう。おそらく内部のブレーキシューもダメだろうから、フロント周りはそっくり整備しなければならないはずだ。
古いベスパで問題になることが多いのがフロアだ。なぜなら、ここも鉄でできているため、屋外保管車だと大抵サビが出ているのだ。まだゴムマットを外して見ていないので、恐る恐るマットを外してみよう。すると…
まぁ、ここまで確認しなかった自分がいけないのだから誰も責められないが、フロアは無残なまでにサビが広がり、腐食による穴が何個も空いていた。これを放置すれば、いずれは足が地面に届いてしまうだろう。大掛かりな板金作業が必要になったということだ。
ちなみにPシリーズはフロアレールが3本あり、いずれもフロア裏でリベット留めされている。外すことは可能だし、リベットが打てればもう一度装着することも可能。また右フロアから突き出ているのがリヤブレーキレバー。本来ここにはゴムペダルを付いているので、足が痛くなるようなことはない。
これだけ穴だらけだと、プロに板金を頼むだけで10万円くらい飛んでしまうだろうか。もう悲しくて涙が止まらない。でも仕方ないので水でサビを洗い流しながら、フロア中央の突起にあるゴムマットも剥がすことにした。ここまでサビが進行していたら、ここはメインフレームのようなものなので、再生を諦めたほうがいいかもしれないからだ。まず左右のモールを外してしまおう。
左右のモールはビス8本で止まっているだけ。不幸中の幸いでビスは腐食していなかったから、スンナリ外せた。でも肝心のゴムマットが外せない。力任せにエイヤッと引っ張ると、バリバリと音がしそうな勢いで剥がれてくれた。なんと接着剤で止まっていたのだ。
ただ、フロア中央にはサビも腐食も見当たらない。これなら剛性は保たれているだろうから、フロアを補修すれば大丈夫だろう。とはいえ油断は禁物。いずれフロアの裏から状態を確認して処置しないとダメだろう。ということで、P125Xの復活には時間がかかりそう。続けて何度か、その工程をお伝えしたいと思うので、乞うご期待!
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