4バルブ化&高圧縮化を体感|フルモデルチェンジのホンダPCX/PCX160、新型試乗レポート
- 2020/12/22
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MotorFan編集部 近田 茂
2020年12月8日に発表された新型ホンダPCX 。PCX 160とPCX e:HEVを含めた3機種が新登場。2021年1月28日の新発売に先駆け、横浜の日本丸メモリアルパークにおいて報道関係者を対象とした撮影・試乗会が開催された。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 ホンダモーターサイクルジャパン
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ホンダ・PCX.......357,500円
ホンダ・PCX160.......407,000円
人気車種ならではの総合性能の高さ。その洗練された仕上がりは魅力的である。
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
PCX
PCX160
◼️主要諸元 PCX /PCX 160
⚫️試乗後の一言!
ホンダ・PCX.......357,500円
ホンダ・PCX160.......407,000円
初代モデルの登場は2009年の事。進境著しいアセアン諸国を主要の市場ターゲットとして開発されたPCXは、大き過ぎない程良いサイズ感のコミューターである。日本では2010年から市場投入された実用性の高いピンクナンバー(原付2種)スクーターで前後に14インチホイールを履いた点と当初30万円を切る価格設定にも注目されて確かな人気を獲得した。
2012年にはPCX150が加わり、2014年には第二世代へモデルチェンジ。2018年にはLEDランプやスマートキー装備の第三世代へと進化していた。
初代登場から約10年で累計約150万台の販売実績を重ね、今や年間40~45万台の生産規模を誇るヒットモデルに成長。今回、約2年8ヶ月振りと言う、少々早過ぎるフルモデルチェンジを実施。開発コストを惜しまないメーカー姿勢の表れは、PCXが世界市場で如何に高い人気を得られているかを示していると言えるだろう。
それだけ多くのユーザーに親しまれ売れ筋モデルとして定着して来た、高い評価が得られている証でもあるわけだ。
ちなみに主要マーケットはインドネシアで販売実績は全体の約60%。タイが20% 。その他はおおよそ5%ずつ、韓国、欧州、ブラジル、そして日本で売られている。
さて今回はフレーム、エンジン等、ほぼ全ての部分が新設計となるフルモデルチェンジである。
開発のねらいは、“Personal Comfort Saloon ”としてのさらなる進化にあった。各国で高い評価を重ねてきたこれまでのモデル人気も踏まえ、ワンランク上の上質な定番コミューターとして熟成する。
もちろんその決起となった要因には2021年から適応される排出ガス規制のユーロ5対応が背景にある。
主に緻密な燃焼制御を担う燃料噴射を要とする吸気系と、排気系に装備されるキャタライザーの装備。そして排気具合を検知することでリアルタイムで燃焼状態を細かく適正に保つ電子制御技術の進化で既にクリーンなエンジンが投入されてきているが、メーカーは段階的に厳しくなる規制への適応が迫られる。
ユーロ5は2020年から新型機種への適応が始まっているが、継続販売車両に関しては2021年から適応されるのである。
それをクリアする、高い環境性能を備えた次代のパワーユニットとして、ホンダは今回eSP+エンジンを新開発した。それに合わせてユニットスイングのエンジン懸架方式やリヤサスペンションの熟成。
安全性や使い勝手の進化も含め、トータルで全てが見なおされたと言う。そんな中、あえて変更しなかったのは、車体のサイズ感である。多くの国で高い人気を獲得した要因は実用性の高さと、決して大き過ぎることのない程良い車体ボリュームにあると判断。
実際、新旧モデルの主要諸元を比較してみても、両車の差は小さく、ホイールベースやシート高は同じである。目立つ違いを列挙すると、リヤのホイールサイズが14から13インチになった事。リヤブレーキのディスク化。4 バルブ化されたエンジンはボア・ストロークも異なり圧縮比も高くなった。150(149cc)は160(156cc)へ排気量を拡大すると共にショートストローク化。125はロングストロークながらも少しスクエアに近づけられている。
より厳しくなる排出ガス規制に対応していくには、例えば触媒等パワーをスポイルするデバイスの装備も不可欠。走行性能を落としたくなければ、エンジンの基本性能は高めておく必要があるわけだ。
今回のeSP+では、両エンジン共にシリンダーボアの拡大に加えて4バルブ化と高圧縮比化を実現してパワーアップ。またフリクションロスの低減も徹底的に見なおされたと言う。
結果は出力特性を示す性能曲線の新旧比較の通りである。4バルブ化とスロットルボア拡大による吸排気効率の向上と気筒内での爆発(燃焼)圧力の増大、駆動系の熟成も相まって実質的な走行性能向上も果たしていると言う。
フレームもまるで異なる仕上げ。ダブルクレードル式からアンダーボーン式に変更されてスッキリとシンプルなパイプワークになっているのが印象深い。
各生産拠点で作りやすくする事で、安定した製造品質を確保しながら、コストダウンにも貢献。さらに約900gの軽量化とステアリングヘッドパイプ回りの捩じり剛性強化、そしてシート下収納容積拡大も実現している。
そんな基本を押さえながら外観フォルムも一新。「伸びやかでエレガントな造形」が追求され、直線基調のエッジの効いたラインを活かしたデザインは新鮮でかつ上質なイメージが巧みに表現されているのである。
人気車種ならではの総合性能の高さ。その洗練された仕上がりは魅力的である。
PCXの試乗は横浜の市街地がメイン。PCX 160はオプションのETCも装備され高速道路もOK。まずPCXに跨がった感触は足つき性も良く、ほとんど同じだが、車体は見た目に細っそりとシェイプされた印象を受ける。
エッジの効いたライン構成のデザインによる見た目の効果が大きいと思うが、実際アッパーカウルは少しスマートになっていると言う。
シートもクッションの材質と厚さに変更は無いと言うが、デザインは熟成されており乗車時、及び停車時共に、ライダーとシートとのフィット感がしっくりと良く馴染む感触である。
スクーターはバイクの様に筋力を使うことなく腰掛けてしまう乗り方になりがちだが、それでも下半身の安定具合が良くなっているように感じられた。ステップフロアも長くワイドに設計変更されており、足の置き場に自由度がある。
急ブレーキ時に減速Gに耐えるため前方に足を突っ張る時も、両足の膝下で車体をはさむ時もしっくりとフィットする感じが好印象である。
フロントフォークは共通だが、タイヤサイズはワンサイズ太く100/80-14から110/70-14へ。リヤは120/70-14 から130/70-13へ変更。これに伴いリヤサスペンションはストロークが伸ばされている。
ホイールトラベルはフロントが100mmで変わらず、リヤは84から94mmに延長。果たしてこの違いが体感できるのだろうかと自分でも疑問に思いながらスタートしたがギャップを拾った時の感触が確かに良くなっていた。
リヤの突き上げ感が緩和されており、凹凸の連続でもピッチング挙動が少なくなっている。さらにタイヤの影響か、コーナリング時のグリップ感も良く落ち着きのある安心できる乗り心地がなかなか気分良い。
スクーターは気持ちも姿勢もリラックスして乗ることが多く、不意のギャップでは慌てる事もあるのだが、その意味でも快適性が確かに向上していたのである。
ラバーマウント構造を採用したハンドルのお陰で振動も少なく、それは160で特に顕著に感じられ、コンセプト通りワンクラス上質な乗り味りに貢献している。
スロットルレスポンスは、大差は無い中でも発進から中速域のレスポンスで不足の無いトルク感に軽やかな吹き上がりがが加わった印象。発進停止の多い市街地でも生き生きと走ってくれた。
一方160 は、全域に渡ってスロットルレスポンスが強力になっている。グイグイと元気良く加速する様は高速域まで衰えなく、速い流れへの合流も難なくこなせる。
直進安定性も優秀で、遠方までツーリングするのも快適。タンデムも余裕でこなせるポテンシャルの高さがある。日本では必要十分と思えるハイパフォーマンスである。
但し、高速道路の120km/h制限が普通になってくると、クルージング速度の性能にやや不足を覚えてくるかもしれない。高速移動がメインなら、より大きなスクーターが選択肢に入ってくると思えたのも正直な感想。それでもPCX160が幅広い場面で使い勝手に優れた万能コミューターであることは間違いなく、とても魅力的に思えた。
先代モデルでもコストパフォーマンスの高いモデルだと思っていたが、進化の大きな今回の仕上がり具合を目の当たりにして、そのお買い得感は驚きに値すると、改めてそう思えてきた。
取材後にふと気になってホンダ・スーパーカブ・シリーズの価格を調べてみた。PCXの価格は、流石にクロスカブ110(税込341,000円)よりは少し高め。しかしスーパーカブC125(税込407,000円)よりは大幅に安いという事実に気付く。PCX の装備と仕上がり、そして基本機能の素晴らしさと商品力の高さは、驚きのレベルにあると思えたのでる。
足つき性チェック(身長168cm)
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