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【カワサキ Ninja ZX-25Rを+6馬力】サブコンチューン「ラピッドバイクEVO」を試してみた。|ZX-25R連載2/3

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高回転域が圧倒的にパワフルでよく回るだけではなく、低中回転域もトルクフルで扱いやすい。ラピッドバイクEVOでスロットルバルブの開度とインジェクションマップを見直したNinja ZX-25Rは、全回転域でノーマルを凌駕する性能を獲得していた。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)
取材協力●
 JAM ☎048-287-9673 http://jam-japan.com/
 ラピッドバイクジャパン/Ninja ZX-25R特設サイト http://rapidbike-japan.com/

■ノーマルに対する高評価が揺らぐ?

ルックスはノーマル然としているものの、ラピッドバイクEVOを投入したJAMのテスト車のエンジンフィーリングは、ノーマルとは完全な別物だった。

サブコンチューンの概要とラピッドバイクEASY(3万250円)の乗り味を紹介した第1回目に続いて、第2回目はラピッドバイクEVOの話である。当記事に全面協力してくれたJAMの成毛浄行さんによると、近年のバイクは厳しい排気ガス・騒音規制に対応するため、低中回転域の空燃比が理想値より薄目になっていて、ZX-25Rの場合は乗り手がどんなに右手をひねっても、12,000rpm以上でスロットルバルブが全開にならないとのこと。ではその問題を解消するべく、ラピッドバイクEVOでセットアップを行ったZX-25Rが、どんな特性を獲得していたかと言うと……。

ラピッドバイクEVOとRACINGは、いずれもインジェクションマップの調整を主目的とする本格的なサブコン。最上級モデルのRACINGは、点火時期調整機能とトラクション/ローンチコントロールを標準装備。ZX-25R用の基本価格は、EVO:7万6450円、RACING:11万7700円。

■全域で扱いやすくてパワフル!

最終仕様ではないものの、ZX-25Rのインジェクションマップ調整画面。低回転低開度の領域はノーマルより濃くなっているが、高回転高開度はノーマルより薄い傾向。

どこからどう語るかで迷うものの、ラピッドバイクEVOを装着したZX-25Rの最大の美点は、高回転域の爽快感と力強さである。この点に関して、僕はノーマルもかなりいい線を突いていると思っていたのだが、右手の操作に対するエンジンの従順な反応や吹け上がりスピードの早さ、そして回せば回すほどパワーが出て来る感触は、明らかにラピッドバイクEVO装着車のほうが上。中でも11,000rpm以上のフィーリングは完全な別物で、ノーマルを基準にするなら、ハイカムや大口径スロットルを投入したかのような感触なのである。今回は試していないけれど、この速さであれば、おそらく最高速も10km/h前後は上がっているだろう(僕がサーキットで確認したノーマルの最高速は、メーター読みで181km/h)。

パワー/トルクカーブは、赤:ノーマル、青:ラピッドバイクEVO装着車。この種のグラフでは最高出力に目が行きがちだが(ノーマル:36ps弱、ラピッドバイクEVO装着車:42psオーバー。いずれも後輪出力)、ラピッドバイクEVO装着車は、全域でノーマルを上回っているうえに、オーバーラン特性も良好。

実際にスポーツライディングを楽しんでいる最中、僕が面白いと思ったのは排気音の変化だ。テスト車はサブコンチューンの効能をわかりやすくするため、あえて純正マフラーを使っているのだが、高回転域の音質はノーマルよりカン高くなっていて、乗り手としては気分がどんどん高揚。ラピッドバイクEVOを装着したZX-25Rは、燃焼状態が良好になり、高回転域のスロットルバルブの開度が大きくなっているのだから、音質の変化は不思議ではないのだが、吸気と排気が密接な関係にあることを、今回の試乗で僕は改めて思い知った次第である。

ラピッドバイクEVO/RACINGのオプションとなるYOUTUNE。さまざまなパラメーターを表示するこのパーツを使えば、PC不要で各種設定の変更が可能になる。

なお前述したように今回のテスト車は、ハイカムや大口径スロットルを投入したかのような感触を味わわせてくれた。そして一昔前のカスタム界の常識だと、高回転域の充実化を図ったパワーユニットは、低中回転域で何らかの問題が生じるのが普通だったものの……。今回のテスト車にそんな気配は微塵もなかった。それどころか、インジェクションマップを緻密に煮詰めた結果として、ノーマルは言うまでもなく、ラピドバイクEASY装着車以上に、低中回転域がトルクフルかつ扱いやすくなっていたのだ。こういった全域でメリットが得られるチューニングは、現代のインジェクション車ならではで、昔ながらのキャブレター車では絶対に不可能だと思う。

ラピッドバイクEVO/RACINGをレースモードに設定すると、ノーマルのクイックシフターが使えなくなる。ただしその問題は、オプションパーツで解決することが可能だ。

今だから言うわけじゃないけれど、実はこれまでの僕はZX-25Rの資質に大いに感心しつつも、自分の普段のツーリングを考えるなら、低中速トルクが充実している並列2気筒のニンジャ250のほうが楽しめそうと思っていた。でも現在は印象がガラリと変化。と言っても、車重の軽さや燃費ではニンジャ250に分があるのだが、ラピッドバイクEVOを装着したZX-25Rなら、ノーマルで感じたもどかしさを気にすることなく、ツーリングで遭遇するさまざま場面で、現代のクォーターマルチならではのスポーツライディングが楽しめるに違いない。

■一番の目的は愛車を好きになってもらうこと

さまざまなレースチーム/ショップでの経験を経て、2000年にJAMを創業した成毛浄行さんは、国内屈指のインジェクションスペシャリスト。ラピッドバイクEVO/RACINGを用いてセットアップを手がけた機種は、すでに数百台以上に及んでいる。

ここからはJAMの成毛さんに改めて聞く、ZX-25Rとサブコンチューンの話。初っ端から妙な質問になるけれど、ラピッドバイクEVOを用いてエンジン特性を激変させたチューナーの立場で考えると、ノーマルのZX-25Rには、大きな不満を感じたのではないだろうか。

「そんなことはないですよ(笑)。大前提の話をするなら、厳しい規制が存在する中で、日本仕様を作ってくれたカワサキに僕は感謝しています。スロットルバルブの開度やインジェクションマップの問題は、日本の規制を考えれば止むを得ないことですから、その点に異論を述べるつもりもありません。ただし実際にラピッドバイクEVO/RACINGを用いてセットアップを進めていく際は、開発時はこうだったんじゃないか?という意識はしましたね」

テスト車のエアフィルターは、JAMが輸入代理店を務めるMWR製に換装。SBKを戦うカワサキワークスを筆頭とする、数多くのレースチームが使用している同社の製品は、単なるろ過装置ではなく、静音と吸入圧力のコントロールを意識して開発。

言ってみればZX-25Rのセットアップは、本来の資質を取り戻すことを重視して行われたのだが、サブコンチューンにはもうひとつ、乗り手の用途や好みに応じた特性が作れるという美点が存在すると言う。

「右手の操作に対するスロットルバルブの反応は、現状では1:1になっていますが、例えば1:0.8にすれば穏やかな特性、1:1.2にすればアグレッシブなフィーリングが獲得できます。このあたりはライドバイワイヤ(電子制御式スロットル)ならではの美点でしょう。また、燃料の噴射量を決定するインジェクションマップは、理想値の範囲内である程度の増減ができるので、こちらも好みに応じたフィーリングが作れます。乗り手によってはスイッチを増設して、燃費重視とパワー重視、2種のマップを切り替え式で使うケースもありますよ」

テスト車のフロントブレーキディスクは、MotoGPやSBKで支持を集めているスペインのNG製。ZX-25R用に関して、同社では6色のフローティングピンを設定。

そう語る成毛さんではあるけれど、世の中にはサブコンチューンに、サーキットあるいはスポーツライディング専用というイメージを抱く人が少なからず存在する。

「それは完全な誤解で、ツーリングや市街地走行でも、サブコンチューンのメリットは十分に体感できます。もっともラピッドバイクEVO/RACINGを投入すると、結果的にパワーが上がることがほとんどで、ZX-25Rの場合はインドネシア仕様のパワーを上回ることを命題にしましたが、それ以上に大事なことは、乗り手が楽しいと思えるフィーリングの構築です。事実、今回取り上げてもらったZX-25Rは、どんな技量のライダーがどんな状況で乗っても、ノーマルより楽しい!と感じてもらえるでしょう。そう考えるとパワーや速さよりも、愛車をもっと好きになってもらうことが、当社がラピッドバイクで行うサブコンチューンの一番の目的ですね」

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