YAMAHA・2019 SR400 新型ヤマハ・SR400試乗レポ|決して速いわけではないけれど、それが楽しい。心地良い。
- 2018/11/13
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MotorFan編集部
SRのサイドカバーにさりげなく明記されたSINCE 1978の文字。どこか微笑ましく、そしてちょっぴり誇らしげにも感じられる。もう40年も前からこのスタルで市販されているロングセラーモデルが平成28年排出ガス規制をクリアして11月22日より新発売される。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ヤマハ・SR400……572,400円〜
進化という名の下に目まぐるしい変貌を遂げていく多くの製品群の中にあって、SRはまさに異端児だ。細部やカラーリングは別として、基本的には、筆者がまだモト・ライダー誌の編集部員だった大昔に目にした当初のスタイルと何ら変わりがないのである。
ハイパワーマルチへの憧れが全盛だった時代に放たれたビッグシングルスポーツというカテゴリーは当時でも懐古的ではあったが、ライバル無き存在として注目度はかなり高かった。少しだけ補足しておくと搭載エンジンはエンディーロモデルのXT500で開発された物。当然SRは500も存在し併売されたが免許制度の関係で400が主力商品となる。これまでキャストホイールの装着やあえてドラムブレーキの採用等、そしてキャブレターからインジェクションへの変遷は経てきているが、見た目はまさに当初のまま。現在は400のみの販売となっている。
余談ついでにSRの商品開発は、モト・ライダー誌がかつて企画し、長島英彦さんの手でオリジナル製作されたロードボンバーの存在抜きには語れないだろう。あまりにも大きかった同誌読者の反響が、SR発売への引き金になったことは間違いないからだ。この話題はいずれまたモーターファンjpでも掲載する機会が訪れると思っている。
バイク然としたオーソドックススタイル
さてSR400は、どこを見てもオーソドックスな設計装備で成り立っている。スタイリングしかり、スチール製セミダブルクレードルフレームや前後スポークホイール、エンジンは空冷のSOHC。始動方法は今や絶滅状態にあるキック方式。「何それ」?と思う人も少なくないだろう。
頑固という言葉は相応しくない気がするが、昔から変わらぬ一徹な主張を込めた造りにはシンパシーを感じられるから不思議だ。走りの性能やスペック勝負、ましてや斬新な要素には一切無縁のところに、SRの個性とSRならではの魅力が潜んでいるのである。
走らせるのに、先ずはキック始動というセレモニーが必要。流石に電子制御の燃料噴射だけに、キック一発で目覚めてくれた。ライダーとして古い感覚を持ち合わせている筆者にとっては、心の中で「ヤッター」!とひりほくそ笑む瞬間がそこにある。ちなみに暖機後の再始動では少々手こずるシーンもあったが、それでもフルストローク3回程度のキックで始動でき、マスツーリングで一人置いてきぼりになる事もないだろう。
心地よい4000rpmの鼓動感
初代SR500のパンチ力を知る筆者にとって SR400は少々非力に感じられる点に不満を覚えた事があったが、新型の印象は実用域での出力特性が豊かに調教されていて、スロットルレスポンスにトルク不足は感じられない。かつ、とても扱いやすいものだった。
高回転域まで引っ張ると回転に比例して震動も多くなるので、だいたい4000rpm前後までを駆使していくと穏やかで快適な乗り味を享受できる。 軽やかに、しかしトルクに十分な太さが感じられる鼓動との語らいが妙に心地よい。一言でいうと落ち着いた乗り味なのだ。
最大トルクの発生回転数は3000rpm。それだけでもSRが希有な存在であることがわかるだろう。アクセルをワイドオープンする事なく、早め早めにシフトアップしても加速感は衰えを知らない。逆に言うと思い切り引っ張ってもそれほど速くはないのだが、トトトッとさり気ない加速感の中に逞しい底力がある。心に大きなゆとりを持てる感じなのだ。
重すぎない車重と素直なハンドリング。タンデムツーリングにも快適な乗り味が得られる適切なライディンポジション。気が向いた時に気の向くまま散歩気分で心地よい風を浴びに行く。そんなシーンにピッタリのバイクだ。お互いが良く分かり合えた相棒の様な感覚で永く付き合える点に改めて独特の魅力が感じられた。
足つきチェック(ライダー身長170cm)
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