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公道走行不可! それでもつい欲しくなる、KLX230Rはバイク遊びの伝道師かもしれない。

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モトクロスやエンデューロを楽しむ初級、中級ライダーをも満足させるハイポテンシャルを追求して先行開発されたのがカワサキ・KLX230Rだ。もちろん公道走行はできない。ピュアなランドスポーツモデルだ。いわゆる競技専用のモトクロスマシンと比較すると乗り味がとってもフレンドリー。オフロード走行へ誘う入門用、あるいは昔オフで遊んでいたライダーがかつてに思いを馳せてイイ汗かきたい、そんな人にもこのKLX230Rは本音でおすすめできます。

REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

カラーはライムグリーンのみ。

◼️カワサキ・KLX230R……517,000円  ◼️発売予定日:2019年10月1日

セミダブルクレードルのペリメターフレームは細部を除いて基本的にはKLX230と共通。
外観からはマフラーの違いくらいしか目につかない。実際エンジンも基本的には共通。しかしKLX230Rにはバランサー機構が無い。
快適性の追求や排気ガス規制対応等に主な相違点がある。写真はKLX230のエンジン。
微妙な違いだが、性能曲線は全域にわたってKLX230を上回る。特に中低速トルクが太っておりピークパワーの発生も8000rpmと高い。
KLX230のエンジン性能曲線。だいたい3000rpmあたりから強力なトルクが膨らんでくる。ピークパワーの発生回転数は7600rpmだ。

 「誰もがオフロードライディングを楽しめる」という基本コンセプトは既報のKLX230と共通ながら、より本格的に軽量&パワフルな仕様が追求されたオフロード専用モデルがこのKLX230Rである。
 オフロード専用=ナンバー登録できない、ということだが、ヘッドライトなどの灯火類を省いたシンプルな外観は、モトクロッサーのKXを彷彿とさせる、いかにもスポーツ道具に徹した格好良さが漂ってくる。

 フレームもエンジンも基本的にはKLX230と共通だが、保安部品等が取り外された関係で細部のブラケットが削ぎ落とされ、スッキリしている。またリヤのスイングアームはピボットとアクスル間で約15mm短いアルミニウム製に換装されて、ホイールベースは20mm短い1360mmになった。
 フロントフォークも上下ブラケットは専用設計。ストロークは前250 mm、リヤはホイールトラベルで251mmと長い。そしてオフロードで高いグリップ性能を発揮するダンロップ製スポーツD952(インドネシア産のブロックタイヤ)を履く。

 ブレーキ関係は共通だが、KLX230には標準装備されているデュアルパーパスABS は取り外されている。その他燃料タンクは標準の7.4Lタンクに対して6.5L容量の樹脂製軽量タンクに換装。シートクッションも体重移動のしやすさを優先した細身のデザインが採用されていた。

 搭載エンジンで異なっているのはKLX230に採用されているバランサー機構が除外された点。ツーリング等に使う訳ではないので、ある程度の振動発生は許容する考えだ。逆に言うと振動の発生を考慮すると、許容できるのが230 ccあたりまでだったと言うことらしい。
 バランサーが無い事でフリクションは軽減され、排気系の違いもあって、トルクが太りピークパワーの発生回転数も8000rpmになった。さらには二次減速比を変更。ドライブスプロケットとドリブンスプロケットを1丁ずつ低めに設定。115kg と言う軽車重と相まって、よりアグレッシブな走りが期待できるのである。

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KLX230比較で前後ともプラス約30cmものストロークアップが図られた前後サスペンション。派手なジャンプでも心強い。
 オフロードブーツに履き替えてシートに跨がると、両足爪先立ちでギリギリ地面を捉えることができる。車重が明らかに軽いので、平地なら支える不安は無いが、起伏がある、あるいは足場の悪い状態で足を出さざるを得ない状況下では、バイクを支えるのにはちょっと不安を覚えるレベルだ。
 慣れている人、上手な人なら当たり前のシート高かも知れないが、初めての人には少なからずビビッてしまうかもしれない。

 ところがいざコースインすると、なんだかとても走りやすい。気分はワクワク! どんどん楽しくなって来る。KLX230でも楽しかったが、やはりオフ専用車のポテンシャルは侮れない。

 当たり前だが先ずはタイヤのグリップ力が違う。さらに言うとそのグリップ力に負けない瞬発力を発揮するスロットルレスポンスの良い出力特性が好印象。あくまで筆者レベルの感想だがパンチ力は十分。よほどの高速コースでなければ、これ以上のパワーが必要とは思わない。しかもスロットルレスポンスが穏やか(決して非力ではない)に感じられ、とっても扱いやすいのだ。
 
 前後荷重も右手の操作やスムーズにできる体重移動でコントロールしやすいし、加減速の感触が唐突過ぎないから、少々疲れていても身体が遅れてしまう事がない。より高性能なモトクロッサーだと、瞬発力が凄過ぎて身体が追いついて行けなくなり、正しい姿勢が保てなくなるものだが、KLX 230Rだと常に自分のコントロール下に置いておける感じ。
 
 そのフレンドリーな乗り味がオフを走る楽しさを倍増してくれると感じられたのである。
 
 タイトなコーナーへの切り返しも軽く素直に扱える。ミスして前輪のグリップを失うシーンでも右手をひと開けすれば、遅滞無く頼れる駆動力が発揮され車体は難なく安定復帰する。荒れた路面でも優れたフットワークで衝撃を吸収してくれるサスペンションの出来もレベルが高く、大きな衝撃に対しても余力はまだまだ十分に残されていた。

 正直、こんな遊びが気軽に楽しめるのなら月1ぐらいのペースで出かけてしまうだろうと妄想が止まらない。冷静になれば、トランスポーターが必要など、敷居が高いのも承知の上だが、この遊びはバイクに乗る基本テクニックを培う上でもとても良いだけに、走れる機会さえ身近になれば、KLX230R が多くの人気を集める事は必至だろう。

 これまでオフで遊ぶなら、あるいはビギナーにはKX85-Ⅱのようなマシンがおすすめと考えていたが、本格的競技参加を目指す人は別として、多くのオフ好きライダーにはむしろKLX230R が最適と思えた。なぜなら乗り味がとてもフレンドリーだから。それこそが多くの人にとって、気負わず長く付き合えるKLX230Rの大きな魅力となっているだ。

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