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フレームは、アルミではなくスチール。開発者に聞いた「Ninja ZX-25R」の性能を支える“しなり”の哲学。

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カワサキから久々の4気筒250ccスーパースポーツ「Ninja ZX-25R」がデビューする。開発者へのインタビューから、期待のニューマシンの走りが見えてきた。

REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●ケニー佐川/カワサキモータースジャパン

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同じ45psでも低中速が断然扱いやすい

「しなり」を生かしたハンドリング

幅広い領域で楽しめて限界が分かりやすい

250ニンジャとの棲み分けもできている

胸のすくような上昇感とサウンドを届けたい

Ninja ZX-25R SE。黒×白に鮮やかな赤フレームが映える。カラーリングによって印象も大きく変わるものだ。

同じ45psでも低中速が断然扱いやすい

 新型「ZX-25R」の最高出力は45ps/15,500rpm、ラム圧過給で46psというもの。もちろん現行モデルとしては断トツのクラス最強スペックである。データ的には1980年代のマルチクォーターブームの中で生まれた4気筒レーサーレプリカ、「ZXR250」を参考にした部分はあるものの中身は完全新設計。ちなみにZXR250の最高出力値も45psと同等レベルだが、ピークパワーだけでなく低中速域での力強いトルクや扱いやすさも同時に狙っている点が当時とはやや異なる。そして、250ccクラス初となる3段階調整可能なKTRC(カワサキトラクションコントロール)や、アップ&ダウン対応のクイックシフターなどの最新電子制御の投入も現代のマシンならではだ。

「しなり」を生かしたハンドリング

 車体設計担当の山東氏が目指したのは「高速域での安定感を確保しつつ、サーキットも楽しめる軽快なハンドリング。それでいて、街乗りでの扱いやすさや快適性も犠牲にしない」こと。つまり、スポーツに軸足を置いたオールラウンド性能だ。
 フレームに鉄、つまり鋼管トレリスタイプを採用したのも幅広い用途を想定しているため。メリットは「“しなり”によって路面やマシンの状態をライダーに伝えやすい」ことだ。かつてのレーサーレプリカはZXR250も含めアルミツインスパーフレームが主流だったが、アルミ材は高速安定性に優れる一方で高周波を伝えやすく、それがライダーにとって違和感につながるなどのネガもあるという。

しなりと剛性を両立したフレーム。メインフレームの縦2本のパイプを1本のビームに見立てれば、ZXR250をはじめ、かつて250スーパースポーツがこぞって採用したツインスパーフレームにも似た構造だ。

幅広い領域で楽しめて限界が分かりやすい

 また、開発ライダーの野崎氏によれば、高剛性アルミフレームは高負荷領域におけるフィードバックに優れるが、それはあくまでもサーキット走行での話。「ZX-25R」が目指したのは、一般ライダーが公道からサーキットまで幅広い領域で楽しめて、しかもマシンの挙動が分かりやすいこと。その意味で、鋼管トレリスフレームが適しているという判断から採用された。スイングアームも同じ発想でスチール製が採用されている。ちなみにアルミ材が優れていてスチールは劣っているという考え方は古い。その証拠に今や300psオーバーを発揮するH2Rにも鋼管トレリスフレームが採用されているのだ。
 もうひとつの狙いとして車体のスリム化もある。並列4気筒はどうしても横幅がワイドになりがちだが、設計の自由度が高い鋼管タイプとすることでこれを解決した。

250ニンジャとの棲み分けもできている

「Ninja250に比べて重心位置を高く、前後分布荷重もフロント寄りに。1次旋への移行を早く、素早く旋回しやすいディメンションにしました」と山東氏。その一方でスイングアームとホイールベースを長めとし最終的にはトレール量で調整して高速安定性も確保するなど最新技術とカワサキが培ってきたノウハウを投入。開発当初からの「既存の2気筒勢とは異なる次元の性能」という目標に近づけていった。ちなみにNinja250は新型25Rと比べると重心も低めでそのぶん安定性が高く、ライポジも含めてツーリングでもゆったりと走りやすい仕様だとか。Ninja250も十分にスポーティではあるが、開発者の話ではそれぞれにメリットがあり、棲み分けはできているそうだ。エンジンのフィーリングひとつとっても、2気筒と4気筒では大きく異なるので当然ではあるが。

【ZX-25R】 最高出力45ps(ラムエア過給時46ps)/15,500rpm、最大トルク2.1kgf-m/13,000rpm、車重184kg、ホイールベース1380mm、キャスター24.2°、トレール99mm、シート高785mm。 ハンドル位置はNinja250に比べて低く垂れ角も大きい。ホイールベースも長く、大柄なサイズであることが分かる。
4気筒らしく車体に対してエンジンが大きく搭載位置もNinja250より高い。その分、エキゾーストを車体下にコンパクトに収めている。トレリス構造のフレームはエンジンを両サイドから抱え込む形で見るからに頑強そうだ。
【Ninja250】 最高出力37ps/12,500rpm、最大トルク2.3kgf-m/10,000rpm、車重166kg、ホイールベース1370mm、キャスター24.3°、トレール90mm、シート高795mm。ZX-25Rに対し軽量コンパクト。パワーでは大きく譲るが、意外にも25Rより低い回転数でより大きな最大トルクを発揮している。
エンジンのコンパクトさは並列2気筒ならでは。搭載位置も25Rに比べると低い。同じトレリスでもエンジンを吊り下げる形で25Rとは構造がだいぶ異なる。ストリップにしてみるとまったく別のマシンということが分かる。

胸のすくような上昇感とサウンドを届けたい

 ターゲットはずばり「スポーツ志向のユーザー全般」。サーキットだけでなく日常での使い勝手も含めたスポーツという意味で。バイクビギナーやレース志向でない人、かつて4気筒250ccに乗っていたベテランも含め、幅広い層に胸のすくような上昇感とマルチサウンドを届けたいという。
「ZX-25R」はあらゆる意味でクラスを超えた、断トツの性能を目指したマシンであることは間違いない。「新しいところに点を打つ、カワサキらしいモデル」と山本氏。大いに期待したい!

ZX-25R開発者。向かって左は車体設計担当: 山東 雅弥氏(川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー 技術本部第二設計部第三課)、中央は開発リーダー: 山本 哲路氏(川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー 技術本部第一設計部第三課)、右は開発ライダー:野﨑 浩司氏(株式会社ケイテック ケイテック実験部製品評価課)

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