今買える空冷2スト、スズキTS185ERは何者だ? 乗ってみた。
- 2020/08/14
- 後藤武
70年代から80年代初頭にかけて、スズキのオフロードバイクを代表するマシンだったのがTS(国内名愛称ハスラー)シリーズ。空冷2ストエンジンを搭載し、どの排気量のモデルも鋭い走りが魅力的だった。
TSは、日本で生産が終了してからも海外向けにいくつかのモデルが継続して生産されていた。南米などでは車両価格が安く、瞬発力のある空冷2ストの需要があったからだ。
今回紹介するTS185ERは南米やアフリカ向けに生産されていたマシンである。
PHOTO●渡辺昌彦(WATANABE Masahiko)
スズキ・TS185ER
新車、中古車販売を展開するグーネットに、気になる1台をみつけた。「スズキ・TS185ER」、南米やアフリカ向けに生産されていたマシンで、全国のいくつかの店舗で新車販売されている輸入モデル。車両価格は店舗によって異なるが、40万円ちょいちょいぐらいだ。
TS185ERのデザインは80年代前半に発売されていたハスラーそのものだ。スズキお得意のパワーリードバルブを採用した空冷2ストエンジンやリアのツインショックも当時と同じ。70年代、80年代にリアルタイムでハスラーに乗っていたテスターとしては、とても懐かしい。
実車に触れて最初に感じたのは、車体が非常にスリムで軽いこと。TS125をベースにしている為、車重はわずかに102kg。2ストの場合、4ストに比べてエンジンの上の方が軽い為、取り回しでも実際の車重以上に軽く感じる。更に空冷だから冷却水やラジエターも必要ない。車体を受け取った瞬間「空冷2ストはこんなに軽かったのか」と驚いたくらいだった。
扱いやすい低中速型特性のエンジン
アイドリングの時の排気音は空冷2スト独特の不規則なもの。これが2スト好きにはたまらない。ポンポンという排気音と共に煙の塊が飛び出してくる様子を見ていると愛おしくなってくる。
当時のTS250は、瞬発力こそあったが、高回転は回らず、低回転では粘らずにエンストするような特性で、オフロードでは扱いにくい面もあったが、TS185はそういった気難しさがない。
回転を落としても、ギクシャクしたりしないし、スロットルを開ければ特にむずかることもなく加速してくれる。特に気持ちが良いのは中速域の加速。軽い車体を思いのままに走らせることができる。高回転まで引っ張った時のフィーリングも悪くない。昔の250のように頭打ちがなく、引っ張れば上までキレイに回っていく。70年代から基本的なメカニズムは変わっていないが、エンジン自体はずいぶん完成されているように感じるのは185という排気量ということに加え、細かい部分のアップデートがあったからだろう。
もちろん水冷2ストエンジンのような戦闘力は望むべくもない。しかし、ストリートや林道を走るくらいならこれで十分に楽しむことが出来る。
個人的には最新の2スト水冷モデルよりも魅力的に感じるほどだった。
トレッキング的な走りは得意中の得意
ハンドリングに関してはオンロードでの扱いやすさが光る。車体が軽いことに加え、サスストロークが短めなので加減速でのピッチングも少ないから、とても走りやすいのだ。
ハンドリングも軽快で素直。タイトなコーナーでは気持ち良くバンクしていく。ハスラーシリーズは70年代当時からオンロードで鋭い走りを見せることで知られていたが、その美点はTS185ERにも受け継がれていた。
オフロードも悪くない。モトクロスコースのような場所でスピードを出してしまうとサスがついてこなくなるが、元々このバイクはそういうことをする為に作られていない。荒野を自由に走るためのマシンだから日本の林道を走るくらいなら十分過ぎるくらいの走破性を持っている。
そして得意なのはトレッキング的な走り。条件が悪くなってくると車体の軽さと足つき性の良さが威力を発揮する。こういう使い方をした時は最新250の4ストオフロードも超えるほどの走りを見せてくれる。
とても魅力的なマシンだが、すでに生産は中止されているという話も聞く。とすると店頭で在庫されているものだけが残っているのみ。昭和の匂いを漂わせたこのマシンを新車で入手できるチャンスも最後になりそうだ。
全長 2160mm
全幅 860mm
全高 1125mm
ホイールベース 1375mm
最低地上高 255mm
シート高 835mm
排気量 183cc
ボア✕ストローク 64.0 mm x 57.0 mm
車両重量 102kg
タイヤサイズ F 2.75-21 45P
R 4.10-18 59P
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