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ロイヤルエンフィールドINT650は、ネオクラ界の価格破壊車だ。

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現時点での日本では、まだまだ浸透しているとは言い難いロイヤルエンフィールド。とはいえ、魅力的な2台の650cc並列2気筒車がラインアップに加わり、楽しめる体制が着々と整っていることを考えると、数年後には外車勢のベスト5に入っているのかもしれない?

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●佐藤恭央(YASUO Sato)
取材協力●ピーシーアイ http://www.pci-ltd.jp/
ロイヤルエンフィールド東京ショールーム http://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/

INT 650 Standard・・・776,000円

INT 650 Custom・・・795,000円

INT 650 Special・・・821,000円

日欧のメーカーに引けを取らない

 少し前に当サイトに掲載したコンチネンタルGT650に続いて、INT650を試乗するにあたって、今さらながらにして僕がビックリしたのは、コンチネンタルGT:79万5000~83万9000円、INT650:77万6000~82万1000円という価格である。
 ライバルと言うべきネオクラシックモデル、カワサキW800:101万2000円~、ドゥカティ・スクランブラー:106万円~、トライアンフ・ストリートツイン:107万円~、モトグッツィV7シリーズ:111万7600円~という事実を考えると、これはもう、とんでもなくお買い得!と言っていいんじゃないだろうか。

左上:トライアンフ・ストリートツイン/右上:カワサキW800/左下:ドゥカティ・スクランブラー/右下:モトグッツィ・V7スペシャル
 もっとも世の中にはまだ、ロイヤルエンフィールドに対して、“インド製なんだから安くて当然”、“品質がいまひとつ信用できない”などという印象を持っている人もいるらしい。でもそういう方は、YouTubeにアップされているRoyal Enfield Factoryの動画を見たうえで、全国のディーラーに出かけて実車をじっくり見て欲しい。現在の同社の生産設備、そして車両のクオリティは、日欧の大メーカーにまったく引けを取らないのだから。

2輪業界の元祖インターセプター

 さて、初っ端から熱い文章になってしまったが、今回試乗するINT650は、コンチネンタルGT650の兄弟車だ。この2台の相違点は、ハンドル、シート、ステップ、ガソリンタンクなどで、イギリスのハリスパフォーマンスが設計したダブルクレードルフレームや、前後18インチのスポークホイール、270度クランクの空冷並列2気筒エンジンなどは両者に共通。
 こういった兄弟車の製作は、前述した日欧のネオクラシックモデルでも行われているのだけれど、コンチネンタルGT650とINT650の乗り味は、外観から想像する以上に異なっていた。

INT650の兄弟車であるコンチネンタルGT650シリーズ(写真はスタンダード:795,000円)
 インド本国やヨーロッパでは、インターセプターとして販売されるこの車両が、日本とアメリカでINTになった理由は、1980年代中盤以降のVF/VFRシリーズにこのペットネームを使ったホンダが、商標登録しているからである。ただし、現在の同社の前身と言うべきイギリスのロイヤルエンフィールドが、1960年代に販売した700/750ccの空冷並列2気筒車に、インターセプターという車名を使っていたことを考えると、2輪業界の元祖インターセプターはロイヤルエンフィールドなのだ。

似て非なるキャラクターの兄弟車

オーソドックスではあるけれど、もしかしたらカフェレーサースタイルのコンチネンタルGT650のほうが親しみやすいかも……。それがINT650に対する僕の第一印象だった。

 もちろん普通に考えれば、セパレートハンドル+バックステップのコンチネンタルGTより、アップハンドル+前進したステップのINT650のほうが、フレンドリーなはずなのだが、シート高が10mmほど高くてハンドルがワイドなせいか、INT650は車格を大柄に感じる。と言っても身長が182cmの僕にとって、大柄さはマイナス要素ではないのだが、日本でこのバイクの普及を進めるためには、ディーラーによるローダウンリアショックやローシートの開発が必要なのかもしれない。

 では実際の乗り味はどうかと言うと、見たまんまの話になってしまうものの、上半身が程よく前傾するコンチネンタルGT650はスポーツライディング向き、アップライトな乗車姿勢のINT650はツーリング向き、という印象だった。
 もちろん、コンチネタルGT650でツーリング、INT650でスポーツライディングが楽しめないわけではない。とはいえ、峠道でコーナーを攻めた際の接地感と一体感はコンチネンタルGT650、田舎道をのんびり流したときの充実感はINT650に、それぞれ軍配が上がる。だから購入時には、自分の好みをよく考える必要があるのだが、いずれもセミアップタイプのハンドルを装着したら、各車各様のいいとこ取りが出来そうな気配はある。

エンジン特性に感じた各車の特徴

 ちょっと意外だったのはエンジン特性だ。最高出力:47bhp/7150rpm、最大トルク:52Nm/5250rpmという数値は両車に共通なのに、低中回転域のレスポンスはINT650、中高回転域の伸びはコンチネンタルGT650のほうが、良好に思える。
 もっともこの件については、同条件で比較試乗しないと把握できないし、INT650の高回転域の伸びが悪いとか、コンチネンタルGT650の低回転域がトロいわけではないので、そんなに気にする必要はないのかもしれないが、過去に試乗したネオクラシックモデルで、こういったエンジンの味付けの違いをあまり感じたことがない僕は、ロイヤルエンフィールドの真摯な姿勢に、しみじみ感心することになったのである。

昔ながらの感触を絶妙の塩梅で構築

 なおエンジンと言ったら、昔ながらの感触を絶妙の塩梅で構築していることも、僕が同社の並列2気筒に感心した要素だ。と言うのも、まずかつてのインターセプター700/750を含めて、1960年代以前に基本設計が行われたミドル以上の並列2気筒は、高回転域で過大な振動を発するのが通例だった。

 だから1970年代以降のミドル並列2気筒は、振動を緩和するバランサーを採用しているのだが、このバランサーはなかなかのクセモノで、振動をキレイに取り除くと、鼓動感やパンチが薄れてしまいがちなのである。事実、近年の並列2気筒はいまひとつ味気ない、と感じることが少なくないのだが……。

 INT650とコンチネンタルGT650の場合は、高回転域をきっちり抑え込む一方で、低中回転域では適度な振動を残し、そのおかげで2気筒ならではの抑揚が十分に感じられるのである。おそらく開発陣は、クランクウェイトとバランサーの設定に関して、相当以上の試行錯誤を重ねたのだろう。いずれにしてもこの特性なら、旧車好きが乗っても、物足りなさを覚えることはなさそうだ。

楽しめる体制が着々と整っている

2021年1月下旬に東京都杉並区にオープンした日本初となるロイヤルエンフィールドのショールーム。
 実際にロイヤルエンフィールドを購入するにあたって、多くの人が心配するのは、補修部品の供給状況だと思う。その点について、試乗時に輸入元のピーシーアイに聞いてみたところ、一般的な消耗部品は国内にしっかりストックする予定で(嬉しいことにほとんどのパーツの価格は、日本車と同等かそれ以下のようだ)、今後は日本独自のアフターマーケットパーツカタログの製作も検討していると言う。
 もちろん、今現在の日本のおけるロイヤルエンフィールドの販売台数は、日欧米の大メーカーにはまったく及ばないのだが、超が付くほど魅力的な2台の並列2気筒車がラインアップに加わり、楽しめる体制が着々と整っていることを考えると、数年後には外車勢のベスト5に入っているのかもしれない。

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